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退屈日記「年末なのに、今年、最高、一等賞のケーキと出会っちまった父ちゃん」 Posted on 2023/12/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、あまぞーん、という声がした。
出ると、ムッシュが小包を持って立っていた。
父ちゃんの名前が書かれてる・・・。???
あけると、イタリアで発売になった新刊「TOKYO DECIBEL」が5冊入っていた。
おおお、ついに、イタリアで刊行されたのかァ!
ということで、さっそく、撮影をした。ふふふ。最近、作家活動停滞気味やから、久々の新刊、うれしいじゃないの~、でも、次がなんにもないじゃないの~・・・。
ひとまず、イタリアの友だちに宣伝をしないとならない。
ええと、イタリア人の友だちって、誰だっけ、あ、アドリアン!!
ま、いつか、渡せばいいね。
ということで、刷り上がった新刊を眺めながら、うきうき料理にいそしんだ。
今日は、しん君がおいていったサーロインが冷蔵庫にあったので、焼き肉にした。笑。
新刊の写真を眺めながら、焼き肉を食べる父ちゃん。
新刊&焼き肉、このつながらない二つの異世界・・・。

退屈日記「年末なのに、今年、最高、一等賞のケーキと出会っちまった父ちゃん」

退屈日記「年末なのに、今年、最高、一等賞のケーキと出会っちまった父ちゃん」

※ 右はブロッコリーなんですよ。



食べてる途中で、悪友・野本の三女がリッツでパティシエールをやっている、とかで、野本の奥さんからひそかに頂いたケーキがあったことを思い出したのだった。
これが、箱をあけて、びっくり、なんじゃ、これ、勲章か!
これがケーキ?
ゴールドじゃないか。
とまれ、焼き肉も新刊もすっ飛んでしまった、父ちゃんであった。
お皿にうつし、リッツに就職した三女さんのことを思い出しながら、立派に成長したの~、と涙ぐむ父ちゃんだった。
うちの息子と年が近いし、悪友の娘だから、遠い親戚のおじさんのような気分なのである。その子の成長を目の当たりにするような素晴らしいケーキであった。
野本の奥さんが言った。
「この縦に入ったチョコは一枚一枚、パティシエさんがケーキに刺して、折ってこの形に成形しているんです」
「ひゃあああ、マジですか?」
「辻さん、ぜひ、食べてみてください」
ということで、野本家の回し者ではないが、フォークを入れた瞬間、驚いた。
チョコ板が薄く、サクっと割れた、なんとも、はかない割れ方をするデリケートなつくりの菓子なのである。
こんなケーキ知らんわ、驚いた。
それをザクっとカットして、目をつむって口に放り込んだら、おおお、おおお、おおおお、なんじゃ、こりゃあ、超絶にうまいじゃないか!!!
二層になっていて、上が白いクリーム層、下がチョコかプラリネかという構造になっており、このチョコ板がつまり、まるいケーキを360度囲む形で、一枚一枚、手ではめこまれている、という寸法なのであった。
手が込んでいる、とはまさに、このこと!!!!
さすが、リッツじゃ。
わしはリッツの回し者じゃないが、うまいものは、うまいと認めたい。
しかも、であーる。

退屈日記「年末なのに、今年、最高、一等賞のケーキと出会っちまった父ちゃん」



この白い部分、生クリームとは言い切れない、なんかわからない、クリームなのだ。
何度か食べてやっとわかってきた。間違えていたら恥をかくが・・・。
卵白のようなクリームなのだ。ただものではなかった。
軽く、あっさりとしている。もしも、卵白系クリームじゃないなら、なんなんだ、この軽さとまろやかさは・・・。
縦に360度入れ込んだ超絶薄い板チョコと白い卵白のようなクリームの織り成すハーモニー、あああ、これは東京デシベルどころじゃない、パリ・デシベルじゃああああ。
ということで、125周年を記念してつくられたリッツ最高のケーキのご紹介でした。
新刊、かすむわ~。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということで、今年食べたケーキの中で、ナンバーワンの出来栄え。先日、ご紹介したモンブランやババ・オ・ラムが遠のくほどに、おいしかったです。お見事!

退屈日記「年末なのに、今年、最高、一等賞のケーキと出会っちまった父ちゃん」

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