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滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」 Posted on 2023/12/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、クリスマスが近づいてくると、なぜか、無性に食べたくなるケーキがある。
その名は「ババ・オ・ラム」!!!
通称は「ババ」、ババと言えば、カフェの人には説明がいらない。
「ババ、頂戴」と言って、うちの母さんが出てくることはない。
息子はぼくの母さんのことを「ババ」と呼んでいるので、ぼくがカフェで、ババ・オ・ラムを注文すると、元気かな、と呟いたりする。意味がわからんね。笑。
ともかく、ブリオッシュ風のスポンジケーキをラム酒で漬けたものに、生クリームがドカっと横づけされて出てくるゴージャス&超大人のケーキなのだ。
その上、必ず(だいたい)、カフェで注文をすると、その横に、ラム酒の瓶が一本くっついて来る。それを、さらにケーキにかけて、食べるのだ。
「いいの、好きなだけかけちゃうよ」
と冗談を言うと、だいたいギャルソンたちは、いいよ、お好きなだけ、と笑っている。
もちろん、ラム酒の瓶の口にはちょこっとだけしか出ないような栓がついているので、なかなか、がぶ飲みは出来ない。
でも、中には、お皿がラム酒で溢れるくらいふりかけて食べてるのか、呑んでるのかわからない豪傑もいる。わしで、あーる。あはは。
父ちゃん、ラム好きで、その上、生クリームが死ぬほど好きなので、もう、これ、たまらないのである。

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」



ちょっと一般的なババ・オ・ラムがどういうものかを、皆さんにごらん頂きたい。
一番上の写真が、カフェで出てくるものの中でもっともポピュラーなスタイル。
形もこういうひょうたんのような形態をしているものが多く、それをナイフで、真ん中から二つに割り、ギャルソンがそこに、ラム酒をさらに、注ぐのだ。
ただでさえ、ラム酒漬けなのに、追いラムがどばどばっと遠慮なく注がれるので、アルコールの苦手な人にはちょっときつい。
そういう場合は、ギャルソンに、ラム酒は結構でございます、と言えばよい。
ぼくなんかは、もっともっと、と大騒ぎをして、たくさんいれてもらうことにしている。
ふー、酔っぱらうね。
でも、この寒い季節に、ラムは温まるのだ。
ただ、普通のカフェに行くと、生クリームがね、スプレー式のものとか機械で作られたものだったりする。
新鮮な生クリームのババを出している店は限られている。
なので、ぼくは、瓶詰にされたババを買って、自分でたてた生クリームをたっぷりとかけて、頂くようにしている。下の写真が瓶詰にして売っているババ本体である。
パーティの時などは、超便利。

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」

※一般的なカフェのババ・オ・ラム!!!

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」

※こうやって、二つにカットされた真ん中にラムを注ぎます。これは珍しいラムレーズンアイスが添えられたババ・オ・ラム。

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」

※こういう形のもあります・生クリームがマシーンで作られたもの、というのがわかりますよね?

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」

※こちらが、瓶詰家族用、ババ!!!



ということで、今日、パリ市内の某ケーキショップでゲットしたのが、こちらのババ・オ・ラムということになる。
見て頂きたい、この気品ある態度!!!
堂々としたババ・オ・ラムではないか。
で、何が素晴らしいかというと、ここのは生クリームが濃厚で、つまり濃度が濃く、食べ応えがあるのであーる。
ほっぺたが落ちそうなほどに美味しい生クリーム。
ぼくは自前のラムをここに足して、大満足。
フー、いい気分。
ということで、パリにお越しの際には、caféで「ババ、頂戴」と言ってみて頂きたい。
もれなく、うちの母さんが、いらっしゃーい、と言いながら出てくる、ことはありませんので、ご安心を。あはは。
楽しい12月ですね、美味しいケーキを食べてくださいね。

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
甘いものには目がない父ちゃんです。一週間に一度か二度は、ケーキ屋さんに行き、物色しております。フランスはパン屋さんもケーキを作って売っています。フランス人はパスタとか米ものはあまり食べませんが、そのかわり、食後は必ずデザートを食します。デザートを食べることが夕食の大事な終わり方なのですね。ちょっと甘いもの、・・・寒い季節にはありがたいものです。
めるしー。

滞仏日記「父ちゃんの大好物、大人のケーキ、ババ・オ・ラム!!!」



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