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滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」 Posted on 2023/12/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、実は、母さんの認知症が進んだり、戻ったりしている。
先月のことだが、弟の恒ちゃんから「母さんの認知症の症状が悪化している感じで、先生に、介護のデイサービスを頼んだほうがいい、と言われた」との連絡があり、兄弟で話し合いをしたのだった。
その友人の大倉先生からも同日、「恒久さんが大変になるので、デイサービスを頼んだ方がいいですよ」とSMSが入った。
ということで、そのような介護サービスに依頼することになった。
その間にも、母さんは目の手術を受けるために入院したし、恒ちゃんはDSとJSの編集作業もありで、大忙しなのであった。(実は、恒ちゃんがぼくの日本の事務所の社長さんで、彼は編集、会計、企画、交渉窓口などをやっているのであーる。恒ちゃんあっての、パリの父ちゃんなのだ。本当に恒ちゃんがいないとやっていけない兄なのであーる。小さいけれど、兄弟会社です、えへへ)
で、今日、恒ちゃんから
「ケアマネージャーさんと契約しました」
という報告があったのだった。
「よかったね。それは朗報だ」
「いや、それがね、兄貴、困ったこともあってね」
「なになに」

滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」



恒ちゃん、表情が暗い。(ラインでのやり取りなので、イメージです)
「ケアマネージャーさんに何件か、デイサービスやってるところ、紹介してもらったんだよね」
「ふむふむ」
「でも、ここにきて、母さん、不意に戻ってきたんだ」
「戻った?」
「認知症が進んでいたんだけど、あれって、戻ったり進んだりするみたい」
「なるほど~」
「でね、母さんにデイサービスがどんなものか知ってもらうために、一度、お試しで行ってみる? と訊いてるんだけど、その話をふると、不意に認知症っぽい感じを醸し出すんだよね~」
「なるほどー、認めたくないんだね、自分が認知症であることを」
「うん。気が強い母さんだからね、気持ちはわかるんだ。気骨で生きてきた人だから、認めたくないんだな、認知症を」

滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」

※ 今日は蕎麦サラダを作って食べました。ルッコラと蕎麦とラディッシュときゅうりと、いろいろ。



ということで、ここから話が進んでないというか、どうしたらいいか、というところにある、ということだった。
それと、実際、今は、意識もしっかりしているし、足腰も不意に大丈夫になって、背筋を伸ばして歩いている、というではないか・・・。
まさに、気骨で認知症をふっとばしているようなところがあるのだった。
ぼくら兄弟も二人とも還暦を過ぎて、そういうところで介護の問題というのは起こるものなのである。
これはどこも一緒なのだろうから、知り合いの意見なども聞いて最善の方法をぼくら兄弟は模索しているところ。
「とにかく、全部、はじめての経験だから、ケアマネージャーさんに相談してみるよ」
「それがいいね。またいろいろわかった時点で報告してね」
ということで、兄弟通信は終わった。
ぼくの母さんは、こんな風変わりなわんぱくなぼくを育てたのだから、ガッツと気骨だけは人一倍強い人で、確かに、いつも、歯を食いしばっていた。
負けん気の強い人で、だから、自分が認知症だなんて、認めたくないのである。
「ひとなり、苦しい時はじゃんじゃん炒めてがんがん食べなさい。おいしいものを食べたら、人間、元気になるったい」
これが母さんのポリシーだったからだ。
恒ちゃんもぼくもそんな母さんを見て育ったので、認知症を認めない気持ちはよくわかるのだ。
ということで、まだまだ生きてもらわないとならない母さん。
進行していく認知症との生活の中でも、楽に生きられる環境を整えてあげることがぼくら兄弟の仕事なのだな、と話し合ったところなのでした。
子育てが終わったら、今度は、親の問題が・・・。
人間というものは、順番なんだな、ということである。
本を取り寄せたり、ネットで検索して、ちょっとずつ介護のことも学んでいる今日この頃なのでした。

滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
東京拠点計画といいながら、レストランができてしまって、ぜんぜん、ぼくの生活拠点が決まらない昨今ですが、母さんのこともあるので、ぼくが日本に戻ったら滞在できるワンルームマンションを購入するという手もあるかな、と思い始めているところです。人生、次から次にいろいろとありますが、母さんには幸せな余生を送ってもらいたいと願う毎日なのです。秘書の菅間理恵子が急逝して、いろいろなことが起きました。三回忌を迎えたのです。七種諭も三回忌でした。故人との懐かしい日々を思い出しながら、現実をさばいていかないとならない、今のぼくらなのです。皆さんも家族やご友人のことで大変な日々でしょうが、お互い頑張りましょうね。ぼくはどんな時も、歌って、笑顔でいたいと思っています。
そんな父ちゃんの歌を聞いてみてください。セレクトしておきました。笑。☜押し売りか。

福岡国際会議場でのライブ
☟☟

https://m.youtube.com/watch?v=YIi9N-6kt5g


パリ、オランピア劇場ライブ
☟☟
https://m.youtube.com/watch?v=U8_hLfnsUik

横浜、ビルボードライブ
☟☟
https://m.youtube.com/watch?v=V6Cb_gjtLYU

滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」



滞仏日記「介護問題が辻家で本格化してきた。人間が抱えないとならない道なのだ」

自分流×帝京大学