JINSEI STORIES

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」 Posted on 2023/11/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、食いしん坊な父ちゃんなのであった。
どんなに忙しくても、体調が悪くても、時間がなくても、つい、フラッと立ち寄ってしまうのだ、うまそうな店に。しかも、ハシゴ酒、えへへ。
それにしても、円安のせいで、肌感覚的に食べ物が異常に安く感じる。
今日現在、1ユーロ=164円弱、という円安水準。2001年の渡仏時は、1ユーロ=100円だったので、これは海外で暮らす日本人はなかなか厳しい状況なのだ。
パリで、カフェに入り、ランチを注文すると、飲み物も加えると、一人、20ユーロはくだらない。円計算で、3000円を超えてしまうのだ。普通のカフェで!
日本に来ると、探せばワンコイン(500円)とかで美味しいランチが食べられる店があるので、これはもう、比較にならない。
スイスなどに行くと、物価がフランスよりも高いので、もはや、太刀打ちできない。
ぼくがスイスやアイスランドに行けないのは、円が安すぎるからなのである。
知り合いが先週、イタリアで両替をしたら、1ユーロ=190円もとられた、という。キビシィ~。政府の皆さん、なんとかしてください。

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」



しかし、逆に、海外から円安の日本を目指す人々が増えている。
六本木周辺はもはや、インバウンド効果絶大。フランス語も普通に飛び交っている。
西麻布の「権八」に行った。ここはブッシュ元大統領と小泉元首相が対談をやった場所でも、キルビルの撮影地としても、有名で、外国人だらけ!
入り口には海外の有名人の写真がずらり、ここはどこ? の状態になる。
逆に日本人がちょっとだけ入りづらいというか、これがパリにあったら大ヒット間違いないなぁ、と思ってしまった。
ぼくら(ツジビルチーム)のテーブルにやってきた給仕さんは、バングラデシュ人の青年で、日本に来てわずか一年半! なのに、日本語ペラペラなのであった。
やたら、従業員の人たちが元気で、テンションが高く、日曜日の夜なのに、金曜日の夜の渋谷スクランブル交差点か、という賑わいであった。
料理を作っている人も外国人なら、お客さんも外国人観光客ばかりなのだが、味がしっかりとした日本の味で、美味しく、値段も場所の割には安かった。
こりゃあ、外国人観光客にはたまらない観光スポットなのであーる。

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」



今日はJwaveでの打ち合わせの後に、ヒルズの近くにある「ゴリゴリバーガー」に立ち寄った。
前から、フランス人の友人が、最高、と絶賛していたハンバーガー屋さんだったが、まず、席に座ると、QRコードを携帯で読み取り、メニューを見ないとならない。
さらに、注文もそこからで、ぼくはかなり手こずった。うちの母さんには無理・・・。
しかし、ビールもハンバーガーもとっても美味しかったのだ。
パンズが驚くべき程に柔らかく、ジューシーなお肉もしっかり入っており、ベーコンはスモーキーで、蕩ける味わい。
しかも、いつまでも冷めない熱さなのだ。
空腹だったので、あっという間に完食。料金は1700円くらいで、安くはなかったが、フランスだと、10ユーロなので、やはり外国人で溢れていた。

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」

しかし、日本に到着した日の夜に知り合いのファブリス・ルノーさんに連れてってもらった、串カツ屋「知仙」の雰囲気が素晴らしかった。
ここは、ミッドタウンの反対側方面にあって、周辺にはガールズバーとかもあるが、1975年から営業している老舗の串揚げ屋さんなのである。
日本人の常連客で賑わっていた。日本語が堪能なファブリスは日本愛に溢れたムッシュなのである。
一緒に、とあるプロジェクトをやることになったので、皆さん、ご記憶くださいね。彼との出会いは、パリの、すでに閉店した、おなじみメイライのお店で遭遇したのが始まりだった。
その後、ジャン・フランソワのカフェで再会、その後、別のカフェでまたまた会ってしまい、そのまま、寿司屋へ、という関係。気が付いたら、友だちになっていた。
彼は在日歴20年選手、在仏歴20年のぼくとちょうど入れ替わりでお互い生活地を交換した感じ、の奇妙な仲なのである。お互いの気持ちがわかるわかる!
そのファブリスがどうしても連れて行きたい、と言ったのが「知仙」ということだった。店は、昭和な雰囲気を醸し出す、木目調の造りで、落ち着く。古き良き時代の串揚げ屋さんなのだ。味も、雰囲気も、六本木とは思えない安心感があった。
ぼくは、その日、ちょっと体調が悪かったので、たくさんは食べられなかったが、牛肉とチーズの串揚げが美味しかった。
日本酒と串揚げ、なかなかあうのだ。
父ちゃんはフランスを日本に届けることが多く、ファブリスは日本をフランスに伝える仕事が多いのである。今後のぼくらの活躍にご期待あれ!!!
さて、美味しくて面白いことをたくさんやりましょうね。

退屈日記「東京でうまいものを食べ歩く。後編」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ええと、今回はギャラリーT周辺で、美味しいものを探しましたが、伊勢丹アートギャラリーで個展をやっている期間は、新宿方面で美味しいものを探して、どんどん、紹介していきたいと思います。

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