JINSEI STORIES
退屈主夫日記「毎日の献立を考えるのが好き。今日をどうやって美味しくするのか」 Posted on 2023/11/09 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、とにかく、生きていると、食べないとならない。これは生物の使命だ。
そして、父ちゃんは、「毎日ごはん歓喜作戦」を連日実践している。
朝ごはんは食べないが、昼飯と夕飯のこの二回はとくに命がけで作っては頬張る。
どんなに辛い日であっても、忙しい時期でも、昼飯の時間と夕飯時だけはそこに没頭するようにしている。
健康になるし、美味しいと楽しいし、いいことしかない。
ごはんが人生の楽しみじゃない人、一日三度ハンバーガーでいいという人、がいるけれど、ぼくには無理。
とにかく、朝、起きると、さあ、今日は何を食べてやろうか、と燃え上がるのである。
前日から燃え上がって、仕込みをしている料理もある。
魚や肉の味噌漬けとか、麹漬けとか。
煮込み料理も前日に仕込んでおく方が美味いので、そういう日は、二日間にわたって、「楽しい」が連続する。もう、人生最高じゃないか。
息子が自立して、一人飯、になっても、それは続いている。
息子も、一人飯を、楽しんでいるようだ。つまり、辻家は、食べることに一生懸命な一家ということになる。(ついでに、三四郎も!!! この子もテーブルの下でおこぼれを狙う毎日なのであーる)
ということで、献立を考えるのは、趣味みたいなものだ。
それが、一日のハリになっている。
息子がいた時は、息子を喜ばせたいという気持ちで張り裂けそうだった。よく食べてくれたし、張り合いがもっとあった。
ま、でも、それが一人になってちょっと変かしたが、おかげで、自分のことを大事に出来るようになった。よし。
自分が好きな大人の味をもっと追求出来るようになったので、それはそれで楽しい。
昨夜は買い物に行く時間がなかったので、冷蔵庫を漁ると、大根、豚の三枚肉、マグロの切れ端、冷凍白ご飯、ニンジン、青葱、キャベツの芯の周辺、などが残っていた。
これが具材なのだ。絵でたとえるなら、手持ちの油絵ということになる。
それで描けるものを考え出す、これが、人生の醍醐味というものではないか。
これしかないのか、ということより、これでめっちゃ美味い物を作ってやるぜ、と燃え上がる男なのであった。
で、頭を3回転半ひねった。おおお、みぞれ鍋が出来るじゃん。
大根は喉にいい。歌手である父ちゃんには必需食品なのであった。
東京で買った新しい一人鍋を取り出し、(といっても大きい)ほぼほぼ野菜にするので、たぶん、ほぼほぼ食べきることが出来る。
みぞれ鍋、この季節に最高じゃないか。
キャベツと葱、ポワローネギなど、普通捨てる青いところもあったので、ダシの中にいれて、くたくたになるまで煮た。肉味があると食欲をそそるので豚肉も投入、ニンジンはスライサーにかけ、色味にも良いし、健康に良いし、言うことなし。
もう、作っている最中、ずっと笑顔なのであった。
最後に、摺った大根をデーンと真ん中に置いて、ぐつぐついい感じになったら、お椀に盛り付け、いただきまーす。
マグロは漬けといたもの、ご飯がちょっと冷凍にあったから、ゴマ塩をかけて、うどんもちょっとほしいなぁ、いれちゃえー、ということで大満腹の夕飯となった。
でも、ヘルシー。
残ったものはタッパーにいれて、これは翌日、辛味で味付けし、食べることにした。
ということで満腹な父ちゃん、三四郎用に横にとっておいたキャベツ、食後、いい子にしていたさんちゃんに、はーい、よく頑張ったね、と言って与えた。
きゃべじーん!
ぼくは毎日、こうやって、人生を楽しんでいる。寝る時は毎晩、「明日がめっちゃ、愉しみだなぁ」とつぶやきながら寝ているのである。
だって、人生、自分次第じゃん。
では、皆さん、ご一緒に~、
「熱血~」
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
楽しくするのも、辛くするのも、自分が決める一生ですものね。
ということで、食後、伊勢丹アートギャラリー個展用フライヤー第三弾を作ったので、ご覧ください。こうやって、少しずつ、父ちゃんの絵の世界をひろめていく、「人生拡大大作戦」です。
伊勢丹アートギャラリー個展まで全貌はお見せしない方がいいかな、と思って、ブログ用フライヤーで少しずつあかしていきますね。どれも、実は、作品の4分の一以下、もしくは一部を使用しています。全貌がわからない仕組みですが、期待感があがるようなデザインを心がけておるのでーす。あはは。
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「ボンジュール!辻仁成のパリごはん2023SP」
【BSP/4K】11月11日(土)後10:30~11:59
※初回放送 2023年9月16日
※BSP・4K同時
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