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滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」 Posted on 2023/11/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日はカツ丼が食べたくなった父ちゃんなのであった。
豚肉は日韓の食材を扱っている15区のKマートさんに買いにいき、ちょっと脂身のあるロースカツをゲット~!
美味しいカツ丼を作って、人生にカツ丼! を実践したろうと計画した父ちゃんなのであった~。
元気のない時は、がんがん炒めてじゃんじゃん食べろ、とうちの母さんが言っていた。
その母さんの料理で育った父ちゃん、力が出ない時、試験などの前日には、必ず、カツ丼でガッツを注入していたのであーる。
玉ねぎ、青葱、とんかつ、卵、ごはん、アマダレ、ううう、最高じゃあ、~、ということで、今日は「来年を楽しく勝つ」ための準備の一日となったのであった。
来年に、勝つどーん!!!

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」



朝は伊勢丹アートギャラリーのNさんと、メールで、個展の絵の配置のやり取りをしたのだった。インスタレーションという言葉をご存じだろうか? 
絵画や芸術作品などを展示する空間全体を芸術の一環にする空間配置のことである。1070年代以降、この言葉が一般化した。空間全体を一つの作品にすることだ。
父ちゃんの個展「LES INVISIBLES(見えないものたち)」は、38点の作品全体で、「千夜一夜物語」のごとき絵巻を構成しているのだ。観客が、伊勢丹アートギャラリーに踏み入った瞬間から、絵巻がスタートする。そこには、小説こそないものの、全部に通じる物語性が存在する。言葉で説明できない、絵の小説がそこにあるのだ。
ぼくはこれらの作品を伊勢丹アートギャラリー(そんなに大きな個展会場ではないが)で、インスタレーションを施す予定なのである。38の物語をどう読むか、は、観客それぞれにゆだねられているが、それは小説の読解と似ている。
しかし、絵なので、小説を読んで感じる物語性とは感じ方が異なるはずで、今から楽しみだが、ぼくの配置図を読んだNさんから、覚悟を感じました、というなかなか、鋭いお返事を頂くことが出来た。
さて、どのような空間配置になるか、そこも楽しんで頂きたい。

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」



そのあと,完成間近の東京拠点計画、ギャラリーTに展示する父ちゃんの昔の資料を事務所スタッフさんらと、整理して、どうやって展示するか、について話し合いが行われた。いろいろと昔の絵や、生原稿や、写真などが出てきたので、それを事務所の机の上にずらりと並べてみたら、おおお、若い、と昔の父ちゃんの姿に、一同から、笑いと歓声が沸き起こったのであーる。

ロマン、という殴り書きした、20歳ちょっとくらいの時の詩のようなものがあって、ロマンを持たないとダメだ、とえらそうに、書かれていて、笑えた。青二才らしい文章で、とても作家になるとは思えない文体で、でも、なんか、熱血の根底がそこに転がっていたのである。あはは。

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」

※、若い頃の父ちゃん。20歳代から、ハットをかぶっていたんだねー。

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※、未発表小説など、高校生から大学生ごろの習作がゴロゴロ出て来て、笑えた、青臭くて。あはは。

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」

※、最初の監督作品の絵コンテとか。

つまり、ギャラリーTは、まさに、父ちゃんの博物館になるのであった。☜まだ、生きておるのですが・・・。
その後、15区のカフェで、オランピア劇場のプロデューサーをつとめたベルトランと会って、来年のフランスでのライブ展開について、話し合った。
この人は、嘘をつかないし、大きなことは言わないし、大ぶろしきを広げない、男なのである。彼はフランスとカメルーンの二つの国籍を持っている。
なかなか、海外で、誠実な人と出会うのは難しいが、オランピア劇場を最後までやり切ったこの人とはもう一度、仕事をやりたい、と思っていたので、実現するならば、嬉しいねー。
まだ、具体的な話し合いにはならなかったが、でも、お互い持っているカードを見せ合って、どういうことが出来るか、分析しあい、楽しく、話し合ったのであーる。
そしたら、ちょっとまだ、大きな声では言えないのだが、フランスの大都市ツアーをやれないだろうか、ということになった。おおお、凄い。
パリはオランピア劇場よりは小さいがいくつかの会場の名前が挙がった。パリ以外の都市もいくつか名前が挙がった。実現すれば、楽しそうである。
11月になった。つまり、そろそろ、今年を締めくくり、来年の話をする段階になったのかもしれない。
ギャラリーTが完成をしたら、父ちゃんの小さな博物館兼ビストロの誕生となる。(ちなみに、このビストロ、父ちゃんがシェフをするときは、「FRANCE KABURET(フランスかぶれ)」という名前になるのだ。あはは)
来年、2月28日から3月5日まで、伊勢丹アートギャラリーでの初個展が開催される。インスタレーションもほぼ完ぺき。
そして、早ければ、6月にフランスでの小ツアーが実現するという段取り!
こういう楽しい作戦会議があってこその、未来なのであーる。最後に、来年を勝利するために、願掛けで、カツ丼を作った、という次第であった。おほほ。
ご覧頂きたい、こんなに凄いカツ丼が出来たのである。
ついでに、かぼちゃのスープとかぼちゃの煮物も作って、勝利を決定的にした父ちゃんなのであった~。
もっとも、そんな簡単に物事が運ぶわけはないのだけれど、勝利できるわけではないのだが、来年の上半期の計画を立てることで、人生をさらに面白く、豊かに、長く太くしていこうという計画なのだった。

せっかく生きたのだから、楽しいことを考え、実践して、みんなを盛り上げていくのが一番いい。せっかく生きているのだから、生き尽くした方がいいに決まっている。
さて、鬼に笑われないように、このへんで、作戦会議の報告は終えたいと思う。
皆さん、ご一緒に!
熱血~。

滞仏日記「11月になった。来年を面白くするために、ここから勝負が始まっている」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
日本は日曜日がはじまっていますね。ゆっくりと休んで英気を養ってください。無理しない範囲で、頑張りましょう。作戦会議、大事です。わくわく、大事です。わくわくしながら、そこへ向かって前進していきましょう。せっかくこの世に生まれ落ちたのですから!
さて、そのベルトランもちらっと出演をします、NHKBSの「パリごはんSP」の再放送のお知らせです。見過ごしてしまった皆さん、ぜひ。見過ごさなかった皆さんも、もう一度、どうぞ!!!
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「ボンジュール!辻仁成のパリごはん2023SP」
【BSP/4K】11月11日(土)後10:30~11:59
※初回放送 2023年9月16日
※BSP・4K同時
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