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滞仏日記「なんと、三四郎主演のアニメ映画の世界配信決定!な、わけないじゃない」 Posted on 2023/10/30 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、いきなり、壮大な嘘からスタートした今日の日記ではあるが、こちらをご覧頂きたい。
前のアパルトマンの近所に住んでいたあのニコラ君のお姉ちゃん、マノンちゃんが、
「ムッシュ、こういうのAIで作ってみました。似てません?」
というので、携帯を覗いて思わず、ガン見!!!!
「わああああ、なんじゃこりゃあ~」
と腰を抜かしそうになった父ちゃんなのであった。
三四郎主演のディズニー映画?
それは実に面白い発想ではあーりませんかぁ。
AIがどんなものか知らないが、こんなのが、誰にでも作ることができる時代なら、もう、人間なんかいらない? ってことになるのかなぁ?
「どうやって、作ったの?」
「え、AIに命じただけです。作ってって」
「そんなんで出来ちゃうの?」
「うん。慣れが必要だけれど、わたしたちの世代の子はもうみんなやってますよ」
「じゃあ、キャラクターとかばんばん出来ちゃうじゃん。映画のキャラクター作る人いらなくなっちゃう」
「そうですね」
と、電話口で、笑い声が弾けた。
呆然となった、父ちゃん。
でも、このキャラクターは凄い!!!

滞仏日記「なんと、三四郎主演のアニメ映画の世界配信決定!な、わけないじゃない」

滞仏日記「なんと、三四郎主演のアニメ映画の世界配信決定!な、わけないじゃない」



AIは人類を救うのだろうか? 
それともアニメーターから仕事を奪うのだろうか? 
小説も書いちゃって、映画も作れるのだろうか? 
じゃあ、表現者など、ぜんいん、お払い箱なんだろうか?
人間に何が残されているんだろうか?
「ムッシュ、そんなに頭を抱えることじゃないです。人類が新しい世界に踏み出したってことですから、いいこともあります。たとえば、三四郎のアニメを自分たちで作ることも出来るわけだから!!!」
「おおお、マジか」
「いや、わたし一人では無理だけれど、AIを操れる人が集まって、アイデアだしあったら、たぶん」
なるほどー。凄い世界になってきたぞー。
マノンちゃんと父ちゃんは、フランス生まれのさんしー君が、東京に行って、大騒動を起こす物語を一緒に考えて、楽しんだ。
題して、『さんしー・いん・東京!!!!』
「三四郎が、ムッシュとはぐれて、ひとりぼっちで東京観光する冒険のものがたり」
「うんうん、んで、東京のプードルのかわいこちゃんと恋に落ちる」
「わ、それ最高!!!」
「隅田川の屋形船にのって、東京湾に出ていって。ネモが飛び出してきちゃったりして!」
「わ、輝く東京を背景に・・・」
ぼくらの話はつきなかった。

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それにしても、AIの凄さを思い知らされた父ちゃんなのであった。
「どうやって、ぼくの顔を描かせたの?」
「AIに、アジア人で、若作りで、ギター持ってて、帽子かぶってて、髪の毛が真ん中から分かれていて、とか、説明しただけです」
「それで、これ?」
「そう。でも、何度も、髪の毛を真ん中から分けてって言ってるのに、6:4になっちゃうの」
あはは。ろくよん父ちゃんだ。
さてさて、この世界、どうなることやら。

滞仏日記「なんと、三四郎主演のアニメ映画の世界配信決定!な、わけないじゃない」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
でも、この日記をディズニーとかアニメ関係の方が読んでいて、それはぜひ、やろうということにならないかなぁ・・・、あはは。妄想は夜開くなのであーる。
はい、そんな父ちゃんですが、来年、2月28日から、新宿・伊勢丹デパートのアートギャラリーで初個展を開催いたします。ふらっと遊びにいらしてください。

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