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滞仏日記、2「免疫力の弱いパパが、コロナに立ち向かうために」 Posted on 2020/03/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、昨日は夕食後、息子を呼び止め諸注意をした。
「いいか、パパからのアドバイスだ。絶対に風邪はひけないからな。コロナとかの以前に、風邪もインフルエンザもかかれないよ。ぼくらはこの国じゃ、アジア系外国人、日本人だからね。咳をしたら、みんながびびるだろう。シャンゼリゼとか人の多い場所には遊びに行くな。いざこざに巻き込まれるかもしれない。変な人間はどこにでもいるから、コロナ出て行け、とか言われるかもしれない。言われても気にするな。相手にするな、こういう時の人間心理は普通じゃない。だから、学校と自宅とをしばらくは往復して、しょっちゅう手を洗うこと」
「うん、わかってる」
「嫌な思いをしたら、必ず、パパに報告するんだ。その瞬間に解決してやる。自分で抱えるな。君たち若者は自分たちの世界を大切に日々を楽しく生きていればいい。あとは政府や学校やパパが頑張る。だけど、風邪にだけはかからないこと。それは君が気を付ければある程度防ぐことが出来ることだ。体調管理だけは怠るなよ」

滞仏日記、2「免疫力の弱いパパが、コロナに立ち向かうために」



息子にしたアドバイスはそのまま自分に跳ね返ることでもある。フランスで生きるということに違和感がなかったのに、コロナが拡大してきて、その先を想像すると、この感染症がぼくら父子の生活にどのような影響を及ぼすのか想像できなくなってきた。
昨日、この日記でもおなじみのリサからメールが届いた。パリ市内の学校でも児童に感染者が出た、とのことだった。コロナに感染をした子が出たクラスは封鎖され、二週間の自宅待機になっているようである。パリ市内の学校が休校になっているという情報は今のところないけど、いろいろと検討されている可能性が現実味を帯びてきた。

しかし、その後の情報で、感染をした子供たちの容体は悪くはないようだ。元気な子供はウイルスに感染しても重症化する確立は低いという研究結果もでている。こっちのニュースサイトでそういう記事を読んだ。もしかすると、子供が持つ「免疫力」が強いからかもしれない。死亡者のほとんどがご老人であること、若くなればなるほど軽症でもある。

一方、ぼくはもう若くない。心配しなければならないのは息子じゃなく、ぼく自身のことかもしれない。人間の免疫力は、たとえばピークが15歳から20歳だとすれば、50歳代ではその半分にまで低下してしまう、とかつて主治医に言われたことがあった。例えば、子供が学校でもらってきた風邪や胃腸炎に、その親がかかると子供の何倍も苦しむという話をよく聞く。というのか、うちの場合、息子が咳をしはじめると二週間後、必ずぼくが大風邪になる。二次感染は重症化しやすいという意見もあるが、これは単に、親には子供ほどの免疫力がないからだろう。子供が持つ免疫力で退治できたウイルスを親が退治しきれないということになる。



じゃあ、還暦のぼくは息子を守るためにどうしたらいいのだ、と悩んだ。やはり、年齢とともに減少する免疫力を生活習慣を改善して上げるしかない! これに尽きる。無意味な努力かもしれないけれど、何もせずに手をこまねいて終息を待つだけというのも嫌だし、最近ではその終息には相当の時間と月日がかかるだろうと言われている。インフルエンザのように毎年流行が起こるようなウイルスになる可能性もある。今日は感染者が何人増えた、という数字を気にしていると気分が萎える。免疫力をあげること、そのために今できることを探して、積み重ねていくしかない、と思った。このサイトでも編集部でいろいろと調査をして、免疫力をあげられる方法がないかを探していきたい。いずれにしても健康を目指すことは世界中どこにいようと、大事なことなのである。

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