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滞仏日記「三四郎を迎えに行ったら、なんと、三四郎のお兄ちゃんがいたのだぁ!!!」 Posted on 2023/10/27 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ジュリアの家まで三四郎を迎えに行った。
今年一年の疲れがどっと出て、昨夜は電池切れ状態で爆睡、今日は12時起き、えへへ、どこにいるのか思い出せないほど、暫く、ぼ~っとしていた父ちゃんなのであった。
食べた方がいいかな、と思って、冷蔵庫を漁ると、冷凍庫にカレーを発見、揚げ豆腐カレーにして(笑)。遅めのランチ、となったのだったぁ~。
で、三四郎を迎えに行く前に、アレクサンドル三世橋からツジビル用に動画配信を15分ほどやり、やっている間も、セーヌ川の流れに目が留まって一瞬ぼ~っとしてしまった使い物にならない父ちゃん。でも、秋の風を浴びて、ちょっと落ち着いたかな。
ジュリアの家は郊外にあるので、車で1時間とちょっとかかった。
三四郎はぼくを見た瞬間、猛ダッシュで走って来て、飛びつき、尻尾を振りまくって、顔をペロペロと舐められたのだけれど、犬臭が凄かった。笑。
毎日、ヴァンセーヌの森で犬たちと走り回っていたし、夜は他の犬たちと雑魚寝なので、普段しない、犬の野性香があふれ出していたのであった。あはは。
すると、その後ろから、えええ、三四郎じゃん、と思うような犬が姿を現したのである。
「え???」
その子は、ジュリアの後ろから、こっちをじっと見ているが、尻尾を振っている足元の三四郎とは、むむむ、態度が違う。
しかし、似てる。あまりに似ているではないか。
どっちが三四郎か、一瞬では、見分けがつかない。
「リッキーです」
「リッキーなんだ、君が!」
噂に聞いていた、三四郎とそっくりな犬・・・。
「ええ、お母さんのふるさと、アメリカに一年行ってました。今日、一年ぶりに合宿に来たんですよ」
「わお、こんにちは、リッキー」
三四郎が、リッキーを紹介するように、彼の横にいき、並んで、こっちを見た。
ぎゃああああ、似てる!!!!

滞仏日記「三四郎を迎えに行ったら、なんと、三四郎のお兄ちゃんがいたのだぁ!!!」



リッキーは三四郎よりもずっと年上で、たぶん、7歳とか8歳くらいなのだろうか。よく見ると、ちょっと鼻が長いし、体つきも大きい。もしかすると、ミニチュアダックスフンドではなく、ダックスフントなのかもしれない。
それにしても似ている。
ジュリアがこの子を何も言わずぼくに手渡したら、すぐには、気が付かないレベルであった。
でも、5分くらい時間が経つと、やっぱりぜんぜん違うんだな、とわかってくる。
目とか、頭骨の大きさ膨らみとか、髪の毛の質とか、鼻の長さだけじゃなく、顎の感じとか。
親だからね、やっぱり、違いが分かってくるものなのだ。さんしーの方がかわいい、と心の底で思ってしまう、この親バカ加減、どう思います???
「そうか、リッキー、これからも三四郎をよろしくね」
三四郎がぼくの腕の中に飛び込んできた。
ジュリアがほほ笑んだ。

滞仏日記「三四郎を迎えに行ったら、なんと、三四郎のお兄ちゃんがいたのだぁ!!!」



助手席に三四郎を放り込んで、ジュリアに謝礼を支払い、家路についたのだけれど、さんちゃん、あれれ、なんか様子が変だぞ。
ずっと、ぶつぶつ、文句を言っている。
最近、ううう、というなんか、低音の唸り声で自分の不満を漏らすようになった。
吠えることはないが、この「ううう(ぐぐぐ)」と「ふーんふーん」の二つが彼の口癖なのである。
「ふーんふーん」は「おやつくださいよ」だったり「遊んでほしいなぁ」だったり「ぎゅってしてほしいなぁ」だったりするのだ。つまり、甘えの言葉。
でも、この「ううう(ぐぐぐ)」は、どっちかというと文句に近い。不満を現しているのであーる。
助手席に三四郎専用のわんこ椅子が備え付けられているのだけれど、そこに顎を突き出し、ずっと、ううう、と言い続けている。
家に戻って、風呂に入れている間も、ずっと「ぐぐぐ」と不平を言い続けた。
「ぼくをあんな犬たちの合宿に放り込んで、寂しい思いをさせるんだから、パパしゃんなんて嫌いだよ」
みたいな感じ。
「じゃあ、ご飯する?」
この「ご飯する?」となった瞬間だけ、大きく尻尾を振って、喜びを表した三四郎であった。あはは。げんきーん。
でも、ご飯が終わると、再びソファに寝そべって、ううう、と文句を言いだす。よほど、寂しかったのであろう。珍しい。
「楽しくなかったの? リッキーとたくさん遊んだんでしょ?」
「ぐぐぐ」
しょうがないな。父ちゃんは三四郎をぎゅっと抱き寄せ、膝の上に載せて頭を撫でてやるのだった。
そしたら、お腹を見せて、「ふーんふーん」と甘えだした。
あはは、人間みたいなやつであーる。
よしよし、寂しかったなぁ、もう、大丈夫だからね、よしよし、さんちゃん。
ということで、今日はソファで一緒に寝てあげることにした、優しい父ちゃんでした。
めでたし。

滞仏日記「三四郎を迎えに行ったら、なんと、三四郎のお兄ちゃんがいたのだぁ!!!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
わずか、数日でしたけれど、寂しかったのですね。明日は一日一緒にいてあげられるのでよかったです。新しい日常がはじまります。ワールドツアーも無事に終わったので、暫く、のんびりとする予定でいまーす。
さて、父ちゃんが村長をつとめるオンライン・コミュニティ・辻ビレッジ(ツジビル)では、毎週、ラジオの生放送(時々収録もあり)をやっています。それから世界中の街角から短い動画配信なども頻繁にやっています。アート、ミュージック、食、文学、映画などなど、父ちゃんの様々な活動に密着する辻村への入村ご希望も皆さんは、こちらより、どうぞ!
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そして、一時間に及ぶ、熱血パパさんの、貴重なライブ映像!!!!
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