JINSEI STORIES
滞仏日記「世界大戦の前夜にいるような気持ちで毎日ニュースを見ている」 Posted on 2023/10/14 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日、フランスでまた教師がその学校出身の元生徒によって殺害された。
ロシア南部チェチェン共和国出身20歳の青年で、「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら、教師を刺し殺したのだ。
ちょうど三年前に、同じような事件があったフランス。衝撃が走っている。(北京のイスラエル大使館職員も今日、刃物で何者かに襲われている)
今回のイスラエルとパレスチナの戦争がきっかけでこの20歳の青年が反抗に及んだ可能性がある、とメディアは報じる。
SNSなどで過激な映像が飛び交い、このような出来事がさらにあちこちに飛び火する可能性も高い。
英国もドイツもフランスも、欧州各国は警戒を深めている。
しかし、警戒を深めれば深めるほど、職務質問などが増える。
ぼくの友人のアラブ人は、「100メートル歩くたびに、職質を受ける。これがたまらない憎しみを増やすんだよ、わかるか!?」と怒りをぼくにぶつけてきたことがあった。
警戒感が増せば、分断を増やすことになり、ますます、似たような事件が相次ぐことに繋がりかねないオリンピックを前にしたフランスなのである。
イスラエルがパレスチナに侵攻をすると、中東が再び激しい戦火に巻き込まれることになる。
ロシアのプーチン氏は「イスラエルが侵攻すると民間人の犠牲を招くので容認できない」と今日、発言をした。
耳を疑ったのはぼくだけではないだろう。
もはや、なんでもありの、状態になりつつある。
第三次世界大戦がはじまりつつあるような嫌なムードだ。
中東で戦争が拡大すれば、オイルショックが起き、原油高になり、世界経済が減速する。一方、石油を持っているロシアのような国は、潤うかもしれない。
5000発のロケットを打ち込まれたイスラエルがこのまま何もしないわけにはいかないが、ガザに侵攻すると必ず、その地域で大きな戦争を呼び覚ますことになる。
2000年前、現在のイスラエル周辺には、ユダヤ人の国があり、アラブ人と共存していた。
しかし、その国は、ローマ帝国に滅ぼされ、ユダヤ人は国から追われることになった。
そして、第一次世界大戦の頃に、歴史が大きくこの地のバランスを変えた。
二枚舌のような約束が、ユダヤ人とアラブ人双方にもたらされ、イスラエルが建国され、アラブ諸国は、約束が違う、と反発し、以降、70年ほど紛争が続くことに。
ぼくが子供の頃に、第一次中東戦争などが勃発、その憎しみの争いは、ある意味、今日の時代までずっと続いている。
きっと、今回の戦争で、この争いは、さらに数百年は見通しが立たない状態になっていくのであろう。
中東だけの問題ではなく、ここには、長い年月を経て、複雑に絡み合った歴史の様々な思惑がかなり厳しい影響を及ぼしている。
ウクライナとロシアの戦争とはちょっと質の異なる次元の問題を抱えている。
なので、明日にでも始まろうとしているイスラエルのガザ地区への侵攻が数日でおさまることはないし、むしろ、ヒズボラやイランを巻き込む可能性が高く、それを目指している勢力がいっぱいあって、中東全体が戦場になる可能性が高い。
そうなると、欧米の介入では解決は不可能だ。
もはや、それだけの力が欧米にあるだろうか。
何がその先に待ち構えているのか。この戦争のプランを考えた者の未来地獄絵が恐ろし過ぎて、ぼくはこれ以上の想像を放棄したい。
遠くの出来事だった、ウクライナとロシアの戦争とは桁が違う問題が日本にも、襲い掛かることになるだろう。
この数日、ゼレンスキー氏関連のニュースが、イスラエルとパレスチナの戦争の陰に隠され、なりを潜めている。
欧米は、中東で戦争を起こすわけにはいかないのだけれど、ブレーキが利かない。
実は、イスラエルにはモサド(イスラエル諜報特務庁)という、世界でもっとも優秀とされる諜報機関がある。
しかし、ここが、今回の5000発のロケット攻撃を一切察知出来なかった。
そもそも、ぼくはあのパレスチナから5000発ものロケットがイスラエルを奇襲攻撃するとは、想像も出来なかったので、ニュースを読んだ時に、このロケットはどこから来たんだ!、と思わず叫んだほどだった。
相当に、用意周到な計画があり、相当に力のある勢力が背後にいないとできないことであり、しかも、連中は、おおぜいの人質をとり、人間の盾をつくった。
イスラエルには、ウクライナがもの凄く欲した世界最高峰の防空システム「アイアンドーム」があるが、さすがに、5000発ものロケットが飛んで来たんじゃ、太刀打ちできるわけもない。
数で上回る攻撃を計算したのは誰?
当然、その計画者は、イスラエルのガザ地区への軍事侵攻なんか、頭から計算ずくのはず・・・。
イスラエルに対し、周囲が冷静になれ、と言っても、もはや、これは、戦争なのだ。
計画者の思惑通り、第一段階のステップに突入している。
侵攻後、レバノンやイランや様々な方向からイスラエルへの攻撃がはじまり、世界中にいるユダヤ人たちが、欧米を巻き込んで、この戦争へと傾斜することになるのだろう。
ガソリンは高騰し、経済が悪化し、欧米の援助を受けられないウクライナはロシアの侵攻を再び受けることになって負けるかもしれない。
アメリカが空母を派遣したのは、そうさせないための、軍事的圧力なのだが、これも、逆に計算済み・・・。
アメリカは彼らの計画にまんまとひっかかり、戦火に巻き込まれる・・・。
すると、日本はどうなるのか、フランスはオリンピックの開催が出来るのか?
IOC委員会が昨日、ウクライナへの侵攻を理由に、ロシアのオリンピック委員会資格を停止したばかり。
ならば、もう、やるところまでやろうじゃないか、と世界の一部は思うかもしれない。
それが、一部ではなく、大部分になりつつあるのが、この世界の現状だったりする。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
あまり、恐ろしいことばかり考えたくないのですが、今、中東から届くニュースは、この平和ボケした日常と連動をし、より悪い方へと傾斜しているような気がしてならないのです。ううう・・・。
さて、こんな世界情勢ですが、父ちゃんのロンドンライブ、迫ってきました。
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