JINSEI STORIES
退屈日記「京都の路地裏を歩き、古都の時間を満喫した父ちゃんだった」 Posted on 2023/09/03 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、旅歩き、好き。
京都ライブの前日に京都入りした父ちゃん。大好きな古都を歩いてみた。
知り合いの編集者と会ってお茶でもしようかな、と思っていたのだけれど、連絡がとれなくなり、一人で京ブラとなった。
路地を当てもなく歩くと、いろいろなものと出会える。
今日は京都劇場を視察し、京都タワーの方へと向かった。
というのは、ぼくの祖父、あの「白仏」を作ったぼくのお爺ちゃん、今村豊さんの「のどぼとけ」が東本本願寺(おひがしさん)に納骨されてある。
京都入りが遅かったので、すでに、夕方だった。
でも、真っ赤な夕陽がきれいだった。
ライブが終わったら、大阪の友だちが車で迎えに来てくれて、深夜、大阪へ移動し、明日は大阪の商店街のビストロで、友だちの再婚祝いをやる、予定・・・あくまでも予定だけど。
それにしても、京都は2,3泊するのがいいね。(昔、教えていた京都造形大の元同僚とかに会いたいなぁ。創作課主任の竹内さんと、ゼミ生だった小林君は会いに来てくれるけれど)
史跡名所を回るよりも、知らないところを歩く方が圧倒的に好きな、父ちゃんなのだ。
立ち飲み屋があって、地元の若い人たちが屯って楽しそうにしているのを見ているだけで、こっちも相好が崩れる。
この人たちはどんな今日を過ごしたのだろう・・・。創作意欲に刺激。
生活感あふれる路地、気になる方に曲がると、どんどん人間の森が深くなる。
あ、東本願寺の掲示板にいいこと書いてあるじゃないか。
※ 東本願寺。
※ 外国人カップルが、お好み焼きで悩んでいた。あはは。
京都はお寺さんだらけだから、こういう心に響く言葉がそこかしこにある。
そうだ、そうだ、と納得しながら、京都は歩くのが、いいね。
フランス語、スペイン語、英語、中国語、いろんな言語が聞こえてくる。
路地がきれいに整理され、歴史と現代がすごく上手に混ざり合っているところが素晴らしい。過去が古臭くないんだ、京都は、ある種のモダンが潜んでいる。
ぼくは静かに食事が出来る場所を探しはじめる。万願寺唐辛子が食べたい。
匂いとか、佇まいとか、店の名前とか、そういうのでふらっと入ることになる。
芸妓さんなのかな、着物姿のお姉さんたちとすれ違った。綺麗だ。
何かお土産でも買おうかな、と思って、探したのだけれど、仏具とか蝋燭の店ばっかりだった。さすが、京都、である。
それでも何かを探して歩き続ける。
明日、京都劇場ライブだからこその空気感を嗅ぐことの大切さ、なのである。
その土地の空気をたくさん嗅いで、舞台にあがって、自分の歌を歌う時、そこに今日歩いている網膜の記憶がなんらか影響を与えてくるものなのである。
たとえば、シティライツという曲があるが、「帰っておいでよ、満たされぬ人々、ここは君の街、君が帰る街、シティライツ」、こういう曲を歌う時、ぼくの網膜には京都の夜景が灯るのである。
帰る街は、世界中にあるからね、生活している人たちの、居酒屋などで幸せそうにしている人たちの日常を想像しながら、自分の街を思い出し、歌うんだ。
吟遊詩人だから、いいライブをやるための人との出会いは大事なんだよね。
人との出会い、一言の言葉との出会い、高僧がおっしゃった通りだと思います。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
心が落ち着きました。もう、今日になりますが、京都劇場でのライブ、日本公演最終日になるので、最大限、楽しんで思い出に残るライブにしたい。万全な体調ですので、お楽しみください。今日は18時開演ですね。リハーサル前後に、ボイス・オブ・ツジビル、生配信予定しています。えへへ。
そして、もうすぐですね。9月16日に、NHKBS「パリごはんSP」SPは90分番組になり、後半30分がパリ・オランピア劇場でのライブになります。すごい。愉しみたくさん。生で観ることが出来る皆さんがちと羨ましい。その頃、ぼくはロンドンか、ノルマンディにいるはず・・・。16日の一週間前から過去作が毎日、再放送されるという「父ちゃん祭り」もありますから、父ちゃん漬け、楽しんでください。