JINSEI STORIES
滞日日記「魔女の宅急便の原作者さんと対談をした。カラフルな魔女だった」 Posted on 2023/08/15 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、魔女の宅急便、むかし、十斗と一緒に観たことがあった。
キキが可愛いのであーる。
ご存じのとおり、魔女の宅急便という宮崎駿監督の映画には原作があって、原作本は福音館書店から出ている、作者は、角野栄子さま。
なんと、ぼくの母さん、恭子さんと同じ歳なのであーる。米寿・・・。
原作者である角野栄子さんは、御年88歳のカラフルな魔女さんなのであった。
で、なんで父ちゃんと栄子さんが対談をしたのか、というと・・・。
な、な、なんと、栄子さんが父ちゃんの「パリごはん」のファンだったからだというのだから、びっくりでは、あーりませんかぁ。
「え? ぼくと対談? でも、ぼくは角野さんのことよく知らないですよ」
「いえ、先方が良く知ってらっしゃるので、お話をするだけでいいということです」
タイタンの担当者さんがそう言った。会ってみたい、と思った。
なんでも、角野栄子さんのドキュメンタリー映画だったか、テレビだったか撮影中で、角野さんからのリクエストで、「会いたい人」として父ちゃんが選ばれたのであーる。
あはは、凄いねー。
ということで、今日は角野栄子さんとご対面なのだった。
階段を下りていくと、広い図書館? カメラが何台も待ち構えている。
緑色のワンピースを着た女性がこちらに背を向け、本を見上げていた。
ディレクターさんらしき人が、彼女を指さした。そこに行け、という合図だ。
「角野さん」
振り返るマダム。
「あ、辻さん」
と、いうことで初対面だったが、そこから、2時間びっちり、いきなりの対談がはじまったのであーる。
普通、初対面のよく知らない人と2時間も話すことは出来ないものだが、これが、話しても話しても話が尽きないくらい、話が弾んだのだった。
ぼくが生まれた年に、彼女はブラジルに個人的移民をされ2年間、そこで暮らしたのだとか、・・・そのあと、欧州をめぐり、アメリカに渡り、日本に戻って童話作家になった。
魔女の宅急便の話や、音楽の話、絵の話(ぼくの絵も見てもらっちゃった)、それからそれから、共通の知り合いがいたのだ。
ぼくの遠い親戚のおじさん、童話作家の東君平さんの話におよんだ。
「彼とは一度だけあったことがあるわ」
「へー」
「でも、意気投合して、初対面なのに、5時間も話し込んだの」
「5時間?」
「ええ、ええ、話すことが尽きなかった」
そこから不意に親近感がわいた父ちゃんだった。
どうやら、君平さんが亡くなる前年に二人は出会ったようだ。
「あっという間に他界されて、びっくりしました」
「そうなんです。ここに君平さんがいたら、もっと盛り上がったことでしょう」
最後は、お互いに魔法をかけあうことになり、父ちゃんは角野栄子さんに、永遠に今日を元気よく生き続けられる長生きの魔法をおかけしたのだった。
栄子さんもぼくに何か魔法をかけてくれたのだけれど、それが何か、今はまだわからない、・・・いつかわかることでしょう。あはは。
「とにかく、辻さん、わたしはみんなと同じというのが嫌でした」
「栄子さん、ぼくも全く同じで、ご覧ください。まったくみんなと違う自由を楽しんでいます」
「そうです、それが自由」
ぼくらは笑いあった。
なんと、うちの母さんと同じ歳なのだけれど、見えないというか、自由を満喫されて生きる、実に、頭のいい方だった。
「栄子さんの魔法ってなんですか?」
「あ、それね、それは、想像力よ」
ということで、ぼくは88歳のカラフルな魔女と友だちになったのであった。
「ノルマンディに、辻さんのご飯を食べにいくわね」
「箒にまたがってキキみたいに、一瞬で、飛んで来てくださいね」
あはは。
※ この対談、放送される時が来たら、また、お知らせいたします。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
やっぱり、日本にも魔女がいたんですねー。カラフルな本当の魔女でした。楽しかったです。そういう人が一人でも多くこの世界に存在しつづけてほしい、と願う父ちゃんなのでした。はい、そして、そして、もうすぐ、福岡国際会議場でのライブですよー。8月24日ですからね、皆さん、駆けつけてくださいまし。
映画「中洲のこども」も第七週に突入して、ロングラン記録更新中です。
そして、10月23日は、ロンドン、ケンブリッジ劇場でライブを開催いたします。
お楽しみに~。魔法かけておきますね、えい!!!
辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ 2023
8/24(木)福岡国際会議場メインホール・チケット発売中です。
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https://w.pia.jp/t/tsujihitonari-k/