JINSEI STORIES

滞日日記「ドアの前に謎の女性が一時間近く立って、うっそーん、震えた父ちゃん」 Posted on 2023/08/05   

某月某日、東京タワーがよく見えるこのホテルは、時々、滞在する父ちゃんの定宿の一つなのだけれど、閑静な住宅地にあって、どこに行くにも便がいいし、スタッフさんも優しいので、居心地がいい。
今日は、プロモーターの中原しゃんが、福岡国際会議場メインホールで来場された方々全員に配る記念チケットのデザインが出来たというので、そのチェックをやった。
おお、これか!
「ラブレターフロムカナダ」を彷彿とさせるデザインだったが、可愛いので、いいね。
中原さんがコンセプトを考えたというので、なるほど、と納得なのであった。笑。
ファンの皆さんにはいい記念になることだろう。ちゃんとした紙に印刷されるとのことで、中原しゃんは、実にファン思いなのであーる。

滞日日記「ドアの前に謎の女性が一時間近く立って、うっそーん、震えた父ちゃん」



で、一時間ほど、打ち合わせをやってから、部屋に戻った父ちゃん。
滞在階にエレベーターがとまり、るんるんと鼻歌を歌いながら、自分の部屋へと廊下を曲がったところで、思わず、げげげ!
ドアの前に女性が立っているじゃあーりませんか。
引き返そうかと思ったが、その人がこちらを、じっと見たので、引き返せなくなった。
ここで余計な行動をしちゃいけない、と思いつつも、目が合ったのは一瞬で、というのは、父ちゃん怖くて、目を逸らしたのだ。
大きなマスクをして、顔がよく見えない。
でも、髪の毛が長く、スレンダーで、背の高い人だった。
父ちゃんは、見て見ぬふりをして、とりあえず、進むしかなかったので、がたがた震える手でドアをあけ、・・・そ、その人との距離? ええと、40センチ?
ええええ、マジか~。
誰やねん。
なんで、ここに立ってるとや?
もう、はじめての経験なので、急いでドアをあけ急いで中に入り、急いでドアをしめた父ちゃんであった。ぶるぶるぶる。
それから、インターホンがあったことを思い出し、モニターのスイッチを押すと、画面がうっすらと明るくなった。
ドアにあまりに近く、しかもカメラの死角にいるのかもしれない。み、見えない。
見えない。
見えない!?
えええ、幽霊だったのか???

滞日日記「ドアの前に謎の女性が一時間近く立って、うっそーん、震えた父ちゃん」



その瞬間、記念チケットのことなど、すっとんでしまった父ちゃんなのであった。
暫く、息を潜めて、様子をうかがったが、まだそこにいらっしゃるような気配がする。
父ちゃんの部屋のドアの横にその女性がいたが、彼女の向こう側(奥側)にも部屋があるので、もしかしたら、違う人をそこで待っているだけなのかもしれない。
でも、一度、フロントにこのことを伝えることにした。
「ええ!?、そうなんですか?」
「はい、そうなんです。ちょっと、心配なので」
ホテルのスタッフさんが、ぼくの滞在階まで様子を見に行く、というのである。
「いや、それは、用心された方がいい」
「でも、お客様に何かあってはいけませんので、当方で対応します」
その方から、10分後、電話がかかって来た。
「辻様」
「はい、どうでしたか?」
「いらっしゃいます。声をかけてみたのですが、そのはっきりとしたお返事がなく・・・」
「ええええええええ」
怖すぎる。
その方の隣の部屋の関係者かもしれないので、追い返すことがすぐにはできず、ホテル側も対応に苦慮しているというのだ。
とりあえず、情報を収集することになった。
「監視カメラに録画された映像をチェックしておりますので、暫くお部屋にいてください」
「あ、いや、しかし、このあと、編集者さんと下のカフェで打ち合わせが」
30分後、別の編集者さんと打ち合わせがあるのだった。
「30分もいないと思いますが、チェックをし、連絡しますから、辻様はそこから動かないようにしてください」
ところが、その人は30分後もドアの前にいたのであーる。
ホラー。



編集者さんにはホテルのスタッフさんが事情を説明し、レストランの個室で待機してもらうことに・・・・。
40分後、動きがあった。
「辻様、今、その方が下に」
「え、あ、そうですか」
「でも、ロビーの椅子に座っておられます」
「・・・」
「支配人がなにげなく、声をかけたようですが、はっきりしません」
「・・・」
はっきりしてほしい。
「どうしよう」
「裏の導線がありますので、そこからカフェにご誘導させて頂きます。今、別のスタッフとお迎えに参りますので、ドアをトントントンとノックしたら、出てください」
ということで、スパイ大作戦のような感じになり、女性スタッフ二名に引率され、ホテルの建物内をぐるぐると移動して、カフェの裏入り口からホテルの中へと入った父ちゃんなのであった。
ふー。
ということでそこで一時間ほど打ち合わせをし、編集者さんが退場した後、再び、先のホテルの方がやって来て、
「帰られました」
と告げた。
「帰った?」
「はい。録画された監視カメラの映像でチェックしましたところ、一時間ほど館内にいっらっしゃったようです」
ぼくのドアの前に、明らかにいたのだ。
このホテルは出なければならない、と思った。
というか、東京拠点計画はここですでに最大の危機に瀕した、ということであーる。
キッチン&ミュージアムをやるのはいいが、住所が公になるので、ぼくはそこで寝泊まりはできないだろう。
毎晩、誰かがドアの前にいるようじゃ、怖くて、逆に東京に戻って来られなくなる。
何も還暦を過ぎたこの気の毒な年寄りをここまで怖い目にあわせないでもいいですよね。
もっとも、その人は父ちゃんとはぜんぜん関係ない用事でそこに潜んでいたのかもしれないのだ。
その辺の真実は誰にも分らない。(その人以外・・・)
ホテルの人に責任はないし、逆にご迷惑をかけてしまったので、明日、宿を変更する手続きをとることになった。

滞日日記「ドアの前に謎の女性が一時間近く立って、うっそーん、震えた父ちゃん」



つづく。いや、つづかないで!

ということで今日も読んでくれてありがとうございます。
こういうことを書くべきか悩んだのだけれど、もやもやして過ごすわけにもいかないので、こちらの間違いで、別の方をそこで待っていたのであれば、いいのですけれど、そうじゃなければ、最大限のセキュリティで、まいりたいと思います。
はい、父ちゃんのオンライン小説教室が8月13日に開催されます。最後の小説教室になりますので、総括編、ぜひ、ご覧ください。
そして、映画「中洲のこども」は8月10日まで、中洲大洋映画劇場にてロングラン中。
8月24日には、福岡国際会議場メインホールでライブです。

自分流×帝京大学