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退屈日記「ジュリアの家族とさんちゃんもバカンスに行くことになりました」 Posted on 2023/07/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくが仕事で日本に行っている間、三四郎はドッグトレーナーのジュリアちゃんの家で預かってもらうことになっているのだけど、昨夜、
「三四郎も連れて旅に行きたいのだけど、ちょっと予定よりちょっと早く、明後日、連れて来てもらえるでしょうか?」
というメッセージが飛び込んで来たのだった。
ジュリアは四人家族(お父さん、お母さん、弟)で、ブルドッグの愛犬がいる。
で、たまたま、この時期、預かる犬が三四郎だけで、ジュリアの家族にとって三四郎はアイドルのような存在らしく、ならば、ムッシュのOKが出たら、みんなで旅に出ようということになったのだとか・・・。
彼らが三四郎と旅をしたいというのだし、ぼくも出発の準備があるから、一日早く三四郎をジュリアの家に届けることになった。
旅はフランス国内の車の旅らしい。犬が自由に遊べる海があるのだとか・・・。それは三四郎にとっては最高の夏休みになるじゃないか。
ノルマンディに行けなかったので、ずっと家パリ犬だったから、とってもいい話である。
ということは、今日が、最後の日になる。
さんちゃーん・・・。

退屈日記「ジュリアの家族とさんちゃんもバカンスに行くことになりました」



パパしゃんにぴたっと張り付き、片時も離れようとしない三四郎、可愛い奴だ。
今日は、何をしても怒らない日にしよう、と決めた。
ドッグフードはやめて、全部手作りのご飯にしてあげようと思った。
今日は、仕事をしないで、ぎゅっと抱きしめていてあげるのだ。
パリを一緒に歩こう。
そして、公園でかけっこをしよう。モンマルトルの丘まで行くか!
三四郎が好きなボール遊びをへとへとになるまでやるのだ。
これは、ボールを投げて走ってとってきたらご褒美におやつをあげるというもので、おやつも嬉しいのだけれど、ボールをとってもどってくるのが、犬にとってはたまらない遊びのようだ。
とくに三四郎はこれでも狩猟犬の子孫なので、狙った獲物は逃さない、あはは。
ということで、遠くにモンマルトルの丘が見える。
三四郎と遠くまで散歩に行き、彼が大好きなカフェでお茶をすることにしよう。
今日は静かな愛に溢れた濃厚な一日になるだろう。
愛情は傾けてこそなのだ。愛情は与えれば与えるほどよい。
人間も一緒です。

退屈日記「ジュリアの家族とさんちゃんもバカンスに行くことになりました」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
やっと、新作の小説に着手する気力が出てきました。頭の中はいま、物語が渦を巻き始めています。書くぞ、と思ってずっと弓を引き続けてきたのだけど、それがとっても大事。ここのところずっと音楽や映画に時間をささげてきたので、ここから暫くは文字の海に潜ることになるのかな。とくに東京にいるあいだは、バンドの練習以外は部屋でパソコンと向かい合うことになりますね。よし、新たな創作の海へ、出発~。
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