JINSEI STORIES
滞仏日記「育犬ノイローゼ気味の父ちゃん。犬に支配された日々をどう思います?」 Posted on 2023/07/18 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、育児ノイローゼ気味の父ちゃん、一日中、三四郎に振り回される毎日に疲れがたまってきた。可愛いけれど、疲れる日々なのだ。
そんな父ちゃんのさんちゃんとの一日をご紹介したい。
朝は30分の散歩、公園でピッピとポッポ(おしっことうんち)をさせる。
家に戻ったら、お風呂場で脚と尻尾を軽く洗う。
軽く朝ごはんを与える。
それから仕事をするのだけれど、ぼくが仕事場にこもるとドアから覗き込んで(彼は入室禁止)、遊んでよー、とふんふん唸る。
これを無視し続けるのが辛いので、パソコンをもってソファへ移動、すると、横に張り付いて、離れない。可愛いけれど、仕事にならない。
ぼくがトイレに立つ時も、食事の時も、お風呂の時も、とにかくくっついて来る。
ストーカー体質なのである。
昼食を作っている間はぼくの足元で蹲っている。邪魔でしょうがない。危ないし、一度、包丁を落としそうになったことがあった。
食べている時も足元から熱視線、おこぼれをあずかろうと、じっと見上げている。これが嫌でね。ゆっくり落ち着いてごはんを食べられなくなった。
そこで、最近はキッチンから追い出し、短い時間で胃に飯をかきこんでいる・・・。
お昼のあとは、ボールで遊んでほしい、とボールをくわえて、ぼくを追いかけまわす。
仕方ないから、ボールを投げてもってきたら、おやつをあげるというゲームをやる。
楽しそうに尻尾を振りながら、遊んでいる。可愛いのだけれど、結構、疲れる。
夕方、16時くらいに散歩に連れ出す。
夕方はなかなかピッピをしてくれない。これがかなり苦労をする。寒い冬だと辛い。
「サンシー、お願いだから、ピッピしてよ」
三四郎は頑固だから、なかなか歩いてくれないし、他の犬のおしっこの匂いを嗅ぐのが圧倒的に好きで、クンクン、やる。汚いからそれをやめさせるのが一苦労。
「ほかの子たち、見て見ろよ。堂々と歩いて、君みたいに下ばかり見て、匂いを嗅ぎまくってる子なんかいないでしょ? パパ、悲しいよ」
アナグマの進化系らしい(噂)ミニチュアダックスなのだから仕方がない。しかし、他のミニチュアダックスはみんな颯爽と歩いている。さんしー、お前な・・・。
家に戻って、風呂場で脚だけ洗う。腰が痛い・・・
おやつを与えて、遊んであげる。
三四郎がおやつを食べているあいだ、ぼくはそっと抜け出し、アトリエに避難する。
一人の時間をやっと満喫、創作に向かうことができる。
戻ると、いつも玄関前に座ってじっとぼくを待っている。2時間でも、3時間でもじっと待っているので、可哀想だから、なかなかアトリエに行くことが出来ない。
夜の7時にメインのご飯だ。手作りの鳥と野菜の煮込みをドッグフード二種類に混ぜて出す。この食いつきが凄い。
彼が食べたら、ぼくの食事なのだけれど、下から見上げている。やれやれ。
9時過ぎに、夜のお散歩に連れ出す。
犬仲間たちと立ち話をしたり、カフェに入ったりして、小一時間過ごす。
帰ったら、風呂場で脚を洗う。時々、砂場とかで背中を下にして(多分背中がかゆいのだろうね)ゴロゴロ背中を地面にこすりつけるので、泥だらけになったら、全身シャワーにする。犬臭はほぼない子だけれど、匂いを感じたら全身洗う。
油分の問題があるので、あまり、しょっちゅうは洗わないのだけれど・・・。
そして、夜の時間を二人で過ごし、おやすみをして、三四郎は自分のベッドで寝る。
ぼくはやっと、寝室で寛ぐことが出来る。ああ、天国じゃあ、やっとだ。
これをずっと繰り返しているので、呑みにもいけない。おっと、禁酒中だけれど。
犬にささげた父ちゃんの余生なり、えへへ。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
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