JINSEI STORIES
滞仏日記「泥棒に入られ衝撃を受けた父ちゃん。今日、最新防犯カメラを導入!!」 Posted on 2023/07/07 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、この夏は三四郎をジュリア(ドッグトレーナー)に預け、ぼくは日本にライブをしに戻ることになっている。
しかし、先日、駐車場に泥棒が侵入し、明らかに、うちの車が狙われた。
全部真っ黒で、ちょっと目立つ新車だからかであろう。
車庫に出入りしているうちに、目を付けられたのに違いない。
管理人さん曰く、「この周辺は泥棒が多いんですよ」(警察はこの辺にはあんまり泥棒はいないと言っていたが、実際は、かなり泥棒がいるらしい。やれやれ)
そこで、みんなで対策を考え、信頼できる防犯会社に警報機の設置を依頼したのである。
うちの建物は駐車場に入るのにも、二つの門を突破しないと入れないし、建物内からも駐車場に入るのにはいくつかのポルト(ドア)を突破しないとならない。
しかも、車は最新型の電子キーを使っているのだけれど、最近の泥棒は、この電子キーを突破するのはおちゃのこさいさいなのだ、とか・・・。
ということで、泥棒がうちの車庫をあらし、我が車は15ユーロ盗まれただけだったが、大家さんが保管していたものなどがごっそりとられた。
事務所内に衝撃が走ったのだった。
長谷っちが体調問題で退所され、頼もしかっただけに、残ったぼくらに不安が残った。とくにこの夏休みは全スタッフ帰省しており、パリにいないのである。
楽器とか、撮影機材とか、蔵書とか、映画のフィルムなどもあり、セキュリティを強化しないとならない。
父ちゃんも末から日本公演のために旅立たないとならず、事務所に防犯装置を付ける必要があった。
ということで今日、日本でいうセコムのような会社から、専門家がやって来て、防犯装置の取り付け工事を行ったのである。
番犬、三四郎は、見知らぬ工事人(なんとマダムであった)のあとをついて回り、不審な行動をしないかチェックしていた。頼もしい。
マダムは、家の各所にカメラを設置していった。
脚立に上り、天井の隅に、ドリルで穴をあけ、設置した。
「マダム、電源コードとかないんですけど? いったい、どういう仕組みなの? 」
「ムッシュ、中に電池が入っていて、3年ほど持ちます。切れる頃に私たちが取り替えますからご心配なく」
おお、頼もしい。
なんか、安心感がある。
「どうやって侵入者を発見するんですか?」
「侵入者が入ったら、警報がなります。同時に画像の収録が始まり、通報されます」
「ホー、完璧ですね」
「一番、重要な仕事場には全体を監視するシステムが入っています」
「ホー、完璧ですね」
「もしも、玄関の外で泥棒におどされ、番号を言え、と脅されたら、第二コードを教えてください。泥棒が中に入ると警備会社が異常を察知し、隠密でやってきて、ムッシュを救出する仕組みです」
「ホー、完璧ですね」
「しかも、泥棒がWi-Fiとか電源を先に切断しても、こちらの床に設置した大きな装置は電源を確保し、Wi-Fiとは別の仕組みで、防犯機能を継続させます」
「ホー、完璧だ。あ、うちのさんちゃんが・・・忘れていた、さんちゃん・・・。コードを入れて、防犯カメラが作動して、ぼくが外に出て、この子が中に残ったら、警報が鳴るんじゃないですか???」
「大丈夫です。体重20キロ以内の動物には反応しません」
「ホー、完璧ですね。三四郎は七キロです」
「ええ、完璧ですね。笑。これで安心をして、この夏、日本にお出かけ頂けます」
途中で警報音を聞かせてくれたのだけれど、三四郎が驚いて、わんわん、と吠えだした。
「さんしー、大丈夫だから、これは君の仲間みたいなものだよ」
「くーん」
さんちゃんには、わからない。
ということで、物騒なパリだから、防犯カメラが設置されたのである。
防犯カメラは携帯アプリで全スタッフ共有可能で、携帯で監視も出来る。
これで日本公演に専念できるぞ!!!
熱血~。
※ 心配して、様子を見守る、さんちゃん。心強い男であーる。
※ 電源喪失補助継続装置。
※ こちらの防犯カメラは日本の量販店で買った偽物おもちゃ。でも、赤いライトが点滅しているので、泥棒には、ちょっと怖いのだ!
あはは、人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ロンドン、ケンブリッジ劇場でのライブは10月23日です。英国在住の皆さん、まもなく、週明けには劇場でチケットの販売がはじまる予定です!
そして、7月16日の地球カレッジは、エッセイのお勉強会になります。いろんな顔を持つ父ちゃん講師が文章教室を開催いたしますので、音楽も好きだけれど、文学も好きな皆さん、覗きに来てね、詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリック!!! めるしー。