JINSEI STORIES
滞仏日記「泥棒被害からの防犯対策強化へ。そして三四郎はそんなパリが落ち着く!」 Posted on 2023/07/05 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、泥棒被害にあったので、朝からこの建物の管理組合(サンディック)に、セキュリティ強化などのお願いしたり、今後の対策に追われた。
駐車場の門が完全に閉じない。出入りする危険人物が多すぎる(不審人物がいたので、どちらの方ですか、と訊いたら、いや、いい建物だからちょっと覗いてみた、とか言う!)。ポルトの暗証番号を頻繁に変えない、などの問題点を全部記してメールしておいた。
夏のツアーがあり、ぼくは7月末から9月頭まで日本、その後、10月はイギリスだし、長谷っちはもういないし、この夏休み中は他のスタッフさんもいないので、事務所が空になり、(管理人もバカンス)、危険すぎるのでセコムみたいな防犯会社と契約することにしたのだ。
「もしもし、防犯カメラの設置ってすぐできますか?」
「何かありました?」
「駐車場に泥棒が入って、ちょっと怖くなったんですよ。日本に戻らないとならないから、長期間、不在にするので」
「ああ、じゃあ、すぐに手配します。今週中には」
仕組みはだいたいセコムと一緒である。
月に30ユーロもかかってしまうが、これは、致し方ない。
管理人さんが言っていたが、この地区は泥棒が多いのだそうだ。
昨日の警官は「この辺の駐車場荒らしは年に3回程度」と言っていたのだが、とんでもない、管理人さんはしょっちゅう車上荒らしがある、と言い切った。
現実とのずれが甚だしい。警察がわかってないのだから、自衛するしかない。
ドッグトレーナーのジュリアに電話をし、三四郎を7月末から8月前半まで、3週間ほど預かってもらうことにした。
8月の頭に、椅子の修復士でライターのマントふみこさんがバカンスからパリに戻って来るので、そこから彼女にバトンタッチ。
ぼくが戻るまで次の一月間は彼女の家で預かってもらう。
ジュリアのところは学校なので、三四郎は他の犬たちと共同生活を送りながら、トレーニングに日々、ほんろうされる。毎日、ヴァンセーヌの森を走らされるのである。
マントさんのところは一人だからのんびりできる。
三四郎は、臆病で、弱虫で、超甘えん坊なので、ジュリアは好きなのだけれど軍隊的な合宿ばかりだと、ストレスでやせ細ってしまうのだ。
最初の3週間はいいとしても、ドッグ合宿が続き過ぎると、過保護に育ったさんちゃんには、ちょっときつい。
マントさんは数々の犬を育ててきた犬の大ベテラン、しかも、三四郎を我が子のように大事にしてくださる。
ジュリアさんとマントさんの両方に預けると、バランスもよく、一月半はなんとかなる。
※ さんちゃん、すっかり安心して、ここからもう動かない決意はんぱないでしょ? あはは、可愛いですね。赤ちゃんみたい。
今回のイタリア旅行で、三四郎がものすごく臆病だということが改めてわかった。
とにかく、猫が怖くて怖くてしょうがないのである。
犬に対して、ううう、と唸ることはないし、吠えたりしないが、猫が近づいて来るとぼくの足元に逃げ込んできて、ううう、と震えながら唸っている。
しかも、シラクサの猫は虎のように逞しく、臆することなく、三四郎の目の前までやってくるものだから、さんちゃん、びっくらこいて、わんわん、吠えだす始末。
何せ、シラクサの路地のそこかしこで、猫が餌付け?されているのだ。
十数匹の猫が、ずらっと並んだ餌箱に顔を突っ込んで食べ漁っている光景は、凄まじかった。
三四郎がそこを怖がって歩きたがらないので、困った困った。
しかも、そこかしこで餌付けされているのだから、もう、進まない。
パリの猫たちはみんな家の中で飼われているので、三四郎は猫を知らない。
ともかく、今、三四郎は猫のいないパリに戻って来ることが出来、どうやら、幸せそうなので、暫くはここでゆっくり生活をさせてから、ジュリアに預けることにしよう、と思っている。
それでも、三四郎はぼくにとっては大事な存在だ。彼がいるとちっとも寂しくない。
人間でも動物でも世話するのは楽しい。
ぼくがギターを弾きだすと、やって来て、ぼくにくっついて寝る。ぼくの歌を朝から晩まで聞いている生き物は他にいない。
しかし、かわいいねー。
※、シラクサ、オルティージャ島、どこの路地でもこれだから・・・。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
オランピア劇場ライブの最初のYoutube画像が出来上がりました。シティライツという曲です。こちらをご覧ください。
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※ シラクサの路地はアートな・・・