某月某日、三四郎はビビり犬なのであーる。
イタリアという国はフランスに比べると、野良猫がやたら多いのだ。
犬ももちろん多いが、飼い猫かどうか、区別のつかない猫が多いのである。
その猫を恐れる三四郎・・・。
パリで、猫とすれ違うことがあんまりないので（パリは野良猫がいない。普通は室内で飼っている）、もう、虎に会ったような勢いでビビりまくるのだ。
不意に、うううう、と唸りだし、吠えたりするので、見ると、小さな小さな子猫が木陰にいて、可愛い顔でこっちを見ているだけだった。
「さんちゃん、それ、猫だよ」
と言っても、うううう、とうなっている。
仕方がないので、抱えて、子猫の前を通り過ぎた。子猫は動じない。
で、暫く歩いていると、また、わんわん、吠えだした。
滅多に吠えない子なので、何事か、と振り返ると野良猫ちゃんだった。
こっちは子猫じゃないが野良としての年季が入っているので貫禄があるのだ。
その野良猫様が、三四郎を睨みつけたら、さんちゃん、ビビッて、父ちゃんの後ろに逃げ込んで来た。
足の間から顔を出して、野良猫を見ている。
「猫だよ、大丈夫。行くぞ」
とリードを引っ張手も、うごかなーい。
おい、ええかげんにせーよ。さんちゃーん！

「三四郎、いい加減にしなよ。猫だよ。普通、猫の方が犬を怖がるのに、どうなってんの、君、それでも犬のハシクレか？」
「わんわんわん（だってー、パパしゃん、怖いんだもーん）」
仕方がないので、抱きかかえて、路地を横切ることになったが、何せ、イタリアは路地だらけで、そこら中に野良猫がいるのであーる。
可愛い猫ちゃんなのに、さんちゃん、未知との遭遇レベルでビビりまくっている。
やれやれ。
「サンシー、いい加減にしろよ。先に進まないじゃないか！」
「わん」
三四郎は鳩には飛びかかろうとするのだけれど、ちょっと大きなカラスとかカモメには滅多に近づかない。
猫はそれよりも格段に怖いのであーる。
犬も大型犬は怖い。
大型犬が現れると、踵を返す。みごとに、くるっと方向転換をするのだ。
「さんしー、そっちじゃない」
一目散に逃げだす三四郎であった。

つまり、怖がりで、弱虫なのであーる。
それでも、ドッグトレーナーのところには常に数匹の犬がいて、共同生活をするものだから、怖くても犬は、まあ、同じ犬だし、分かり合える瞬間があるようだが、猫、だけはなかなか、恐ろしいようで、何が怖いのかわからないけれど、生まれたての子猫にさえも、ビビッて、尻尾を巻いて逃げ出す始末なのである。
イタリア旅行、三四郎にはちょっときつそうだ。
父ちゃんは楽しんでいるのだけれど、問題は、前に進めない、ということである。
とくに、小道に入ると、とたんに、ううう～、がはじまる。
抱きかかえるのだけれど、震えている！
「猫ちゃんだよ。怖がらなくてもいいんだけどなぁ」
「わん（パパしゃん、帰ろうよ～）」
ということで、彼は猫を見つけると、宿に戻ろうとするのであった。

旅はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
しかし、イタリア人は動物好きですねー。フランス人も犬好き多いけれど、イタリア人は全身でしかも全力で犬愛を表現してきます。愛想の悪いギャルソンも、三四郎を見た途端、デレーっという顔になり、しゃがんで、手の甲を舐めさせるのです。（こっちの人は手の甲を犬に舐めさせて敵じゃないことをアピールしています。犬も安心するみたい）
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めるしーぼく。