JINSEI STORIES
滞仏日記「ウクライナ反転攻勢のカギを握るプリゴジン対ショイグ対決後のロシア地図」 Posted on 2023/06/24 辻 仁成 作家 パリ
この日記を出した後、ワグネルが南部ロストフ州で武装蜂起か、というニュースが出たようで、今、起きて、ちょっとびっくりしているが、これは正直、もう少し事実が見えてくるまで鵜呑みにはできない。ただ、明らかに、ロシアで何かが起きており、去年、2022年の10月に書いた小説のような背景が、引き金になり、プリゴジン氏がこうしないとならない状況に今あるということ、そして、これをやっているのは、或いはショイグ国防相なのではないか。ロストフでロシア軍とワグネルとのあいだで戦いが始まれば、ウクライナに駐留するロシア軍は完全に補給路を断たれることになる。さて、プーチン氏は何を国民や軍や愛国勢力に説明するだろう。目が離せない状態になった。
ということで、話が急展開しているけれど、パリを離れ昨日、旅先へ向かう途中の機内で書いた、この日記を読んでもらいたい。話が急展開しているけれど、ここに、こうなるための道筋があると思う。
ともかく、ロシアで前代未聞の混乱が起きている。ウクライナ軍にとっては、チャンス到来かもしれない。もしも、これがブリゴジンの作戦でなければ・・・。
ここからは、昨日の記事になりますが、こうなることを去年の10月から、ありえる事態として考えていました。ご興味ある皆さん、直前に書かれたこの日記、読んでください。
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某月某日、今、気がかりなことはこの戦争がいつ終わるのか、ということだ。
ここのところ、連日「ウクライナの反転攻勢がうまく進んでいない」というニュースが出回っているが、ゼれンスキー大統領も「ハリウッド映画のようには進んでいない」と現実を直視するようなことを言っている。だが、父ちゃんはそうは思わない。
気になるのはワグネルを率いるブリゴジン氏の発言とその動きである。
彼はますますロシアの国防省の批判を強めているではないか。
2024年春の大統領選に出馬するのじゃないか、という噂も出ている。
一方で「プーチン大統領は騙されている」という言いふらし、暗にロシア軍やその周辺を批判しているのだ。
考えてみよう、なぜ、プーチン政権下で、そんなことが許されるのか?
ぼくは2022年の10月に、以下のような日記小説を書いた。
これは排除されるかもしれないと疑心暗鬼に陥ったショイグ国防相がその側近?ゲラシモフ?と共にクーデターを思案するという架空の物語なのだが、もっともこれは去年の10月に書いたものなので、今と状況がずいぶん異なっている。
しかし、まんざら遠くもない話ではないか、と思ってもいる。
まずは、父ちゃんが持論を展開する前に、父ちゃんが去年の10月に未来を勝手に想像して書いた、小説日記を読んでもらいたい。
☟☟☟ ここをクリックすると、過去日記に飛びます。
https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-3125/
プーチン大統領に誰も逆らうことが出来ない独裁体制下にあるロシアで、「プーチンのシェフ」と呼ばれたプリゴジン氏が、時に、プーチン批判ともとれる政権批判のごとき(もっともまだ遠回しではあるが)、ある種の権力闘争を露骨に仕掛けている。
プリゴジンのバックにはロシアの愛国勢力がついているという噂があるが、彼は暇を見つけてはロシア全土で細やかに遊説(選挙活動?)を行っている。
普通に考えて、2024年の大統領選挙に出るならば、プーチン大統領の敵になるわけで、あるいは命を狙われる可能性も大きいはずなのに、彼がここまで強く出ることが出来る理由はなんだろう。
最近の独立系ニュースサイトによると、(ネットの検索回数比などで)プリゴジン氏の人気がプーチン大統領を大きく上回ったと報じられている。
プリゴジン氏はロシア国防省のやり方を徹底的に批判し、ロシアの国民や右側の勢力の強い支持を集めている。
彼は国防省やエリートやオルガルヒ(新興財閥)までをも、たぶん、叩いている。
時に、ウクライナの軍隊は優秀だ、とうそぶいたりもしている。
にわかに信用できない人間ではあるが、一方で、名指しされたショイグ国防相はこの男のことをどう思っているのだろう。
ぼくが書いた小説日記は、いずれこのようなことが起こるだろうと思って想像をした空想小説だけれど、その、出口はいくつか考えられる。
どちらかに触れる可能性がある。つまり、どちらかがどちらかをあらゆる可能性で排除する運動を起こすというシナリオである。
このシナリオはあながちあり得そうな勢いになってきた。
そうなると、ロシアは分裂する可能性もあり、また、その時、プーチン大統領がどちら側につくのか、もしくは片方を選んだ場合、内戦になる可能性も排除できないのではないか。
現在、ロシア政権内でおこっているかもしれない、争いの行方が、ウクライナの反転攻勢に多少なりと影響を及ぼしていると想像してみるべきである。
ところで、2023年6月22日、ウクライナはクリミア半島とへルソン州を結ぶチョンガル橋をミサイル攻撃し、通行できない状況にした。
どの程度の破壊だったかはわからないが(四発のミサイルだったという)、この攻撃は、少なくともへルソン州に展開するロシア軍に心理的な揺さぶりをかけたはずだ。
退路を断たれたからだ。
さて、ウクライナの反転攻勢なのだけれど、明らかにまだ序の口なのである。
ゼレンスキー大統領やウクライナ軍は用意周到に準備をしてきた。
「ロシア軍が地雷を相当数しかけたので、進軍が思ったようにいかない」というニュース(真実なのだろうが)を流し、ある意味、ウクライナ領土内へのミサイル攻撃を誘っているのだけれど、これはウクライナの情報戦だと思った方がいいのではないか。
その証拠が、22日のチョンガル橋の攻撃である。
ここは兵站における重要ルートだが、クリミア半島とへルソン州などを分断させるためにはここを通行不能にすることが作戦上重要なのである。
この橋が使えなくなると、南側のロシア部隊に物資を送るために東側を経由しないとならなくなる。
しかし、ご存じのように、ウクライナ軍は東側にもストレスと与えている。
となると、ウクライナの南側へ物資が回らなくなる。
きっと、ウクライナ軍は、さらに大胆な作戦をこの後、仕掛けてくるような気がする。クリミア橋を再攻撃するような・・・。
ロシア軍は兵站を絶たれれば、すなわち最前線の武器が枯渇してしまう。
ウクライナは西側の武器を温存しているので、彼らの物資が止まるタイミングを静かに待てばいい。同じく、命令系統にも、枯渇が始まっている。
ウクライナ軍は、少しずつ前進をしながら、様子を見ている。どこにどのような武器庫があるのか、どこに兵站の弱点があるのか。そこを見極め、叩くために・・・。
ロシア国軍の武器と戦意を疲弊させる作戦に出ているということだ。
このために、今は、作戦がうまく行ってないという印象をあえて演出しているのではないか?
もともと、結果が出るまでに数週間から数か月はかかるとされてきたこの反転攻勢である。戦いはまさに、ここから、始まると思うべきではないか。
そのために、用意周到に駒を進めているのはロシア軍ではなく、ウクライナ軍なのである。
一方、ロシア軍のトップ、ショイグ氏らは、もう一方の敵と対峙しないとならない。
ウクライナよりもある意味、めんどうな相手である。
プリゴジン氏らが揺さぶりをかけている。
ショイグ国防相は、自分が刺される可能性も含め、相当、不安が募っているのではないか。
やられる前に、やらなければ、という状況なのである。
目の上のたん瘤はゼレンスキーではない。ブリゴジンだ。
ということで、ショイグ対プリゴジン、どちらが先に排除の動きをとるのか、今は目が離せない状態なのである。
去年、10月に書いた小説の通り、ショイグの憂鬱は今、マックスになりかかっている。
プリゴジンももはやウクライナに勝利するより、自分が権力を掴み、この戦争を終わらせ、それは一瞬西側との歩み寄りにより、新しい秩序を作る妄想に憑りつかれつつある。
危険な橋だけれど、彼にはいくつかの強い味方がいる。その中の一つは国民であり、もう一つは愛国勢力であろう。
ここで、周りに本当のことを助言できる側近がいないプーチン大統領が今、どのような判断を下そうとしているのか、おっと、さすがにそこは小説以上に謎なのだ。
この戦争の終わりのために不可欠な条件は、やはり、プーチン大統領が握っている。
この続きについては、また、次回に、・・・。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
追記です。
一晩経って・・・
新しいニュースで、プリゴジン氏の国家反逆罪的な意味あいでの捜査を受け、プリゴジン氏が南部で武装蜂起、というニュースが今朝、流れています。ロシアの報道官によると、プーチン大統領も状況を把握、これから記者会見、とありました。あまり、驚きませんが、このあと、何が起こるか、ウクライナ情勢を見極める上で驚くべき展開が怒っていることが考えられます。ただ、プリゴジンからのソースなので、見極めには、もうちょっと判断には時間がかかるでしょう。追い詰められたのは、プリゴジンなのか、ショイグなのか、ロシア国内で何かが起こりつつありますね。この数日内に、急転直下、何かが起こる可能性があります、かなりの確率で・・・。
さて、そんな妄想父ちゃんですが、7月16日に、エッセイ教室をやります。エッセイを書きたい、そこのあなた、ぜひ、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。
めるしー。