JINSEI STORIES
滞仏日記「やったぁ、実家のある福岡での追加公演が決まった。親孝行ライブじゃ!」 Posted on 2023/06/20 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、さきほど、ライブ担当の中原しゃんから連絡があり、福岡の会場が見つかりました、と言うのであーる。おお!
今、販売方法について現地イベンターさんらと細かい協議を重ねているとのこと。明日には発表できる見通しになった、というので、九州方面の皆さん、お楽しみに。
まずは、追加公演決定! ふー、良かった。
フランスにライブを観に来ることが出来なかった母さんに電話で知らせてやろう、と思った。恒ちゃんにライン電話したら、
「あー、今、外で、ちょっと吞んでる」
ということで、へー、そんなこともあるんじゃね。ま、そりゃあ、生きてるんだもんな。いいぞいいぞ、じゃあ、自宅に電話してみるよ、と切って、掛けなおしたのだった。
「あー、ひとなり、ですけど」
「そうでしょ、声でわかった」
あはは、長生きしそうな元気な声をしている。
「寝てた?」
「いいや、寝ようかなってしとっただけたい。こんな時間に、どがんしたつか」
「あのね、福岡でコンサート決まった。日本公演の追加公演」
「あら、そうね。じゃあ、観に行くことできるったいね。うれしかね」
「出来るよ」
「それはそれは、長生きしてよかったねー」
「よかったよかった」
「あんた、映画ももうすぐ公開になるとやろ? ダブルでうれしかねー」
「よかったよかった」
「福岡盛り上げないけんたい。親戚ばたくさん連れていかんとならんね」
「九州中の親戚、たくさん、連れて来てください」
「どこでやると?」
「母さんの知らんとこったい。海に近い会場で、ちょっと広かけど、でも、後ろの人までちゃんと見えるイイ会場ったい」
「一番前で観たか」
「いやいやいや、緊張するから、一番後ろでこっそり見てくれんね。母さんが一番前にいたら、歌えんやろ」
「あはは、そうやね。じゃあ、ペンライト買わな」
「いやいやいや、ジャズィな大人の音楽やけん、いらんとよ」
「みんな引き連れていくけんね。お兄ちゃん、ありがと」
「母さん、米寿まで、長生きしてよかったったいね」
「うんうん。ありがと。ほんとにありがと」
先日のオランピア劇場でのライブ、バイオリンのマリオのお父さんとお母さんがやって来た。
マリオとは血が繋がっていないが、この二人がこんなにやんちゃなマリオを育てたのか、と思うと嬉しくなり、ぼくは二人を抱きしめたのだった。
サルバトーレとジョバンナであった。
二人はシチリア生まれ、今はフランスの中西部で暮らしている。
マリオはアルジェリアで生まれ、イタリアを経由してパリの音楽大学を出て、NYの音楽大学で学んだ。
この天才を育て上げたのが、ずっと笑顔のサルバトーレとジョバンナだった。
ジョバンナはぼくの母さんに似ていたし、サルバトーレはぼくの父さんに似ていた。
そこにはぼくの息子、十斗もいた。みんな笑顔だった。
こうやって世界は愛で繋がり、包まれていくのであーる。
サルバトーレが、いつも息子を応援してくれてありがとう、と言った。何気ない一言だったが、そこには、父親の気持ちが溢れていた。
ぼくも父親だからわかる。ぼくも親だからわかるのだ。
いいお父さんとお母さんだった。
マリオは愛をいっぱい注がれて、こんなに立派に育ったのだった。
(ルックスがちょっと細い葉加瀬太郎さんにしか見えないのはぼくだけか・・・)
ともかく、親孝行ライブということになりそうだ。
それにしても、6月30日から中洲大洋映画劇場で「中洲のこども」がロードショーされ、その後の日本追加公演というこの流れも、申し分ない。
もしも、ライブの翌日、大洋映画劇場が特別ロードショーをやってくれるなら、舞台挨拶に立ち寄れるんだけどなー。
これ、映画製作委員会の皆さんと相談してみようかな。
えへへ。
もっと熱血の夏になるね。
人生はつづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
この日記、4000本目の記念日記になりました。すごいですね、4000本もこんな日記、毎日休まず、書き続けているんですから、皆勤賞、ください!!!! あはは。
ところで7月16日に、エッセイ教室を開催することになりました。(なってましたけど、新たな気持ちで)いつものパリの父ちゃんの仕事部屋からの授業になります。エッセイの課題もありますので、ご興味ある皆さん、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。よろしくお願いいたします。課題、今回はちょっと早めで貰えると助かります。三四郎と旅に出ようかな、としているので、え、あはは・・・。