JINSEI STORIES

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」 Posted on 2023/06/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、シングルファザーな父ちゃんが、どうやって、息子を健康的に育てたのか、その十年の歴史を振り返ってみる。
シングルでお子さんを育てている主婦(主夫)の皆さんへのささやかなアドバイスになれば、と思っておーる。
負けるなー、大丈夫だぁ~。
子供の幸せだけを考えろ~。

ともかく、そんな父ちゃんが一番悩んだのが、献立であった。
献立が日々の一番の苦労ということになーる。
それは、シングルであろうと、ダブルであろうと、古今東西の家庭の共通問題であろう。

で、献立を考える時に、父ちゃんがとくーに気を使ったポイントをまとめてみた。

辻家家訓献立十か条!
1,いろいろなものを食べさせたい。
2,色彩鮮やかな料理を与えたい。
3,大変でも、冷凍でも、作ってる姿がちゃんと届く料理を提供したい。
4,栄養のバランスは考えたい。
5,日本とかアジアの心を忘れさせたくない。
6,残さず食べられる量を提供したい。
7,思わず、話が弾むようなものを作りたい。
8,愛情をスパイスにしたい。
9,いつか息子が作りたいと思うようなものを作りたい。
10,ごちそうさま、が思わず口から飛び出す料理にしたい。

この10点には最大限の心を配ってきたつもりで、そうなると、パスタばかり、お肉ばかりにはできないので、やはりバリエーション豊かな献立を考えないとならなくなーる・・・。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」



父ちゃん的には、まず、大型スーパーに行き、安売りしている食材を中心に買い込む。
経済的に、大事であーる。
五時からセールは主夫の味方であったぁ。
その時に、値札を見回し、だいたいのバランスを決める。
もの凄く美味しそうな豚のヘレ肉が800グラムでなんと日本円換算で、400円程度だった。
おお、マジか、安い~。
いやはや、物価の高いおフランスで、これは凄いことである。
半分をとんかつにして、半分を生姜焼きとかにできるので、迷わず買った。
セール品をまとめ買いし、冷凍しておく。
日曜日に大量買いをし、週明け、一日置きに足りないものを近所の商店街でこつこつ買う、と退屈もしないし、日々に張り合いが出るのであーる。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」



辻家では、丼ものが良く消費された。
育ち盛りの子供に、丼飯、丼麺は、最強なのであーる。
パリのアジア系食材店に行くと、牛肉の薄切りが300g500円くらいで買えるので、そういうもので、例えば、肉吸いうどん、などを作るのだ。最強レパートリー!
栄養価もあり、油を使わないのでカロリーも気にせず食べられるので、辻家では年中、フル出動であったぁ。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」

※ 植野編集長から教わった、ゆず&唐辛子の、「二味」最高です。一味じゃなく、二つの味がはいった、二味!!!

冷凍鰻の安売りプロモーション(特売)がある日は、必ず、うな丼になった。
特売で、半額ならば、鰻もよし!
特売のあげ豆腐とか、特売のおくらとか、特売の卵とか、特売の茄子とか、を組み合わせて、ザ・日本食みたいなものを作ったこともあったー。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」

冷凍の鰻もオーブンでゆっくりと火を再度いれていくと、美味しくなる。フライパンに冷凍鰻を置いて、緑茶を回し掛けし、蓋をして蒸し焼きにすると、めっちゃふわっとした鰻のかば焼きが出来るのだ。ちょっとコツがあるが、失敗を恐れず、少しずつやってみてほしい。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」



特売のおくらと、特売のトマトと、特売の鶏肉で、特売大プロモーション中のタイカレーの素をつかって、なんちゃってイエローカレーを作ったこともあった。ザ・アジアみたいなご飯である。彩が美しかった・・・。

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」



父ちゃん的には、息子がパパの味を記憶に刻んでくれるならそれでいい、と思って毎日献立を考えていた。
ぜひ、献立で悩む時は、お子さんたちが、自分の味を覚えてくれるのだ、と思って考えてほしい。
それが、愛、なのであーる。
あいあいあい~。
いつか、一人立ちをして、遠い世界で別々に暮らしだした時に、ふと、夕飯の時に変なおやじと向き合って、美味しいご飯たべさせてもらっていたな、と思い出してもらえるはずなのだ。
あはは、うちは嫌でも思い出すようであーる。
それで十分だ。
息子の心の中に、おやじとの時間が焼き付いているのだ。
誰からも文句は言わせない!!!
違いますか、おっかさーん。
「美味しい?」
「うん」
この10年、こんな会話の毎日ではあったが、しかし、その息子くんも、今や、料理大好き青年になったのであーる。
父ちゃんが若い頃に、やっぱり、親は子供を愛する当たり前の存在だった。
父ちゃん的には、これでいいと思う。
変に、感謝されても気持ち悪いので、この関係が一番いいのかな、と思う。自然と、子供は親を見て育つのだ。
「ごちそうさまでした」
食べ終わると、必ず、そう言い残した息子。ごちそうさまでした、を忘れたことがない!
そうやって、息子は大人になったのであーる。

人生はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
息子から、毎週のように、自分で作った料理の写真が送られてきます。これを幸せと呼ぶんです。ぼくは「そうか、そうか、これを作ったのか」と携帯に向かっていつも叫んでいます。そういう親なんです。はい。あはは。
さて、そんな親バカな父ちゃん先生がお送りする。エッセイ教室が7月16日の日曜日、開催されます。今度は、パリのぼくの仕事部屋からおおくりしますね。ふるってご参加ください。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックね。めるし。

地球カレッジ

子育て達人日記「今だから言える、父ちゃん、どうやって息子に飯を食わせてきたか」



自分流×帝京大学