JINSEI STORIES
滞仏日記「誕生日のプレゼントを何にするか、悩む。でも、気持ちが大事だね」 Posted on 2023/05/09 辻 仁成 作家 パリ
凄い虹が出ました。ぼくの家からオランピア劇場の方角に。今日は、まず、この虹をご覧ください！！！
某月某日、お金でぼくの友人は高価な腕時計を買ったのだけど、彼は忙しくて時間がないといつも言っている。
で、お金で高級腕時計は買うことが出来たが、時間は買えなかった。
ぼくの友人は立派な家を持っていて、その凄い寝室を見せられた。
全自動のもの凄いベッドをその人は買ったのだけれど、もの凄い不眠症で、もの凄く眠れないから、いつもリビングのソファで朝を待っている。
とある人がもの凄い保険に入っていた。月々、驚くほどの保険料を払っていたのだけど、残念なことにあっけなく亡くなった。
知り合いの大金持ちの人は世界中にたくさんの家を持っているのだけれど、家庭はなく、ずっと一人なのだ。彼の口癖はお金で愛なんか買えるだった・・・。
しかし、お金で実は解決できないことがいっぱいある。でも、多くの人がお金持ちにあこがれて、人気ユーチューバーの人は豪華な車や家を自慢する。
起業し成功すること、株とか、ビットコインとか、儲ける話が人々の心を虜にする。
でも、宝くじが当たることはない。
カメラマンの小田光の誕生日だった。
ライブの練習のあと、スタジオの近くのカフェで光ちゃんと会った。ライブスタッフのマコちゃんも一緒だった。
オランピアで記録映像を撮影してもらう予定なのだ。その打ち合わせをやった。
長い付き合いなので、ぼくは何かをあげたいと思った。ずっと残るもので、ずっと喜んでもらえるもので、出来れば感謝を伝えたかった。
今まで、ぼくのライブの記録を続けてくれているし、時々、地球カレッジも彼がカメラをやっている。でも、急だったので、いいプレゼントが思いつかなかった。何をあげたら喜んでもらえるかなぁ、いつもわがままで、ガミガミなおやじを許して貰えるかなぁ、考えたが、難しいね。
誕生日のプレゼントは実に難しい・・・。
で、寝る前に、絵を描いてみた。
それはぼくの中にいる小田光であった。ぼくのようなわがままなおやじを文句も言わず、ずっと支えてくれている。
マコちゃんも、長谷っちも、少人数だけれど、こんなバカな父ちゃんロックンローラーをずっと応援してくれている。有り難い、有難い、なんまんだぶつ・・・。
「敵も多いが、味方も多いですね」
と長谷っちが、出がけに言った。あはは。ご名答。
いつもこんな生き方しかできないバカな父ちゃんのことを、こういう連中が支えてくれているのだ。
申し訳ない、と思うから、仕事をもっと回したいのだけれど、ぼくは億万長者でもないし、経営者じゃないので、いつもボランティアみたいなお願いばかりしかできない。
なので、似顔絵を描く時に、感謝をこめて描くことにした。ここ、笑うところではないけれど、クスっとなるね。
どんな顔をしていたかな、と思って、まず、額から描いた。前頭葉がつまった男なので、そこが光っている。
髭が立派で、佐伯祐三の郵便配達夫のような髭だ。こんな髭だったっけかな・・・。
眉毛とか、だんだん、思い出してきた。こういう目をしていたな、と思った。出来た。
これは言い訳なのだろうか？ 誕生日なのだからシャンパンくらい買ってやればいいじゃん、ともう一人のぼくが言うのだけれど、きっと、小田光は、この絵を一生大事にしてくれるだろうな、と思った。
「辻さんは、何がきっかけで小説を書いて、ロックをやって、映画撮ったりするんですか？」
これは前回、韓国レストランで、小田光がぼくに放った質問なのであった。
ぼくはその時、ちゃんと答えられなかった。ちなみに、小田光は彼が小学生の時に、父親に連れられて、日比谷野音でのぼくの初ソロ野外コンサートを見ている。
でも、実は理由がある。ぼくにしか、きっとわからない理由なのだろうけれど、ぼくは、お金では買えないものを、作品を、生み出したいのだ。
それはきっと、形があるとかないとか、そういうものじゃない。
お金では買うことが出来ないけれど、ぼくらを豊にさせてくれるものを作り続けたい。
※ あげた時に、写真撮り忘れたので、光ちゃんに、撮ってもらった。どうやら、ご自宅の窓辺らしい。額付きなのだ。
※ おなじみ、マコちゃんにサインを求められた。京子食品・マレ支店様へ、と書いた。ここの揚げ豆腐がめっちゃ大好物。実は、昨日も食べたばっかりだった。
※ 鳥ごぼうご飯と豚汁と揚げ豆腐だ。どんなにお金持ちでも、この美味さには太刀打ちできまい。ぼくはうまいものをよく心得ている男だ。あはは。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
このマコ、光と今度、６月１８日に、「右岸から左岸へ」というオンライン散歩を計画しています。オランピアに来ることが出来なかった皆さん、ぜひ、生辻と一緒に右岸から左岸へ渡りましょう。え？ またこの二人をこき使うのかって、あはは、人使い荒いですなぁ・・・。
さて、５月２９日のオランピアライブまであと、３週間となりました。もし、不意にお時間が出来たら、こんなアホなおやじを応援にきてやってください。
今のところ、怪我もなく、万全です。最高のライブになる！
オランピアライブも迫ってきました。熱血父ちゃんを応援ください！！！
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。
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https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
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もしも、日本から行きたいけど、不安という皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。現在、日本から50名くらいの方が来るだろうという予測です。本当に、大変なところありがとう。必ず、いいステージにしますね。約束！！！
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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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