JINSEI STORIES
退屈日記「フランス人はバゲットをリュックに突っ込んで歩くのじゃ」 Posted on 2023/04/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ランチは鶏肉を塩とお酒でつけておいたので、散歩の帰りに、バゲットと茄子を買って、鳥肉と茄子の味噌仕立てのクリームパスタを作って食べた。
バゲットはだいたい坂道を下ったところにある地元のパン屋で調達をする。
午前中はだいたい行列が出来ている。
フランスに来て、いつも、へーと思うのは仏人のバゲットの持ち方だ。
わきの下に挟んで歩く人が多い。ぎゅっと掴んで歩く人も結構いるが、渡仏して一番驚いたのは、買ったその場で齧りながら食べて帰る人がけっこういるということだ。
日本だったら、お母さんに「はしたない」と怒られそうなところだけれど、フランスはたまに女の人も齧って歩いている。
食べ歩きは上品とは言えないけれど、とくに若い人はけっこう買ったバゲットをパン屋から出た途端に齧る人がいる。
もちろん、家にもって帰って、家族で、あるいは夫婦で食べるのだけど、待てないで食べている。
これには理由がある。フランスのバゲットは焼きたてが一番美味しいのだ。
焼きたてのモチみたいな表面カリカリで中がモチモチ、ふわふわなのである。
たしかに、これは齧りたくなる。
家に帰る頃には、冷めてしまって、もちろん、それでも美味しいのだけれど、とにかく焼きたてはびっくりするほどにまいうー、なのである。
なので、帰り道、待ちきれずに先端を千切って食べる。ガブっと齧りついてるお父さんなんかもいる。
ぼくもどっちかというと、突端を噛んで食べる派かもしれない。アハ。
それから、リュックサックに突っ込んでバゲットを持ち運んでいる人もかなり多い。買い物袋や、リュック、カバンの中に入ったバゲットって、なんかかっけー、と思う。普通にこれが出来ちゃうところが、フランスだね。
※ 父ちゃんはバゲットを刀にして、振り回す。アドリアンもびっくり! 超笑顔だ。
一人だとバゲット一本はさすがに食べきれないので、どうするか?
まず、ドゥミ(半分)バゲット、シルブプレ、というと、半分にしたものを売ってくれる。独り者には便利かもしれない。
ぼくは半分にカットされたバゲットがあまり好きではないので、一本買って帰り、食べきれない部分は、食べきりサイズにカットして冷凍庫に放り込んでおく。
こちこちに凍ったバゲットはトースターの中にいれないで、フランスのトースターにくっついてくる焼き魚用の網みたいなものがあって、実はこれ、クロワッサンとかを温め直すものなのだけど、これの上にのっけて、トースターオンにすると、なんと、出来立てっぽくなるのであーる。
トースターの中につっこんじゃう人もいるけれど、そうすると焦げちゃうから、ぼくはクロワッサン用網を使うことが多い。
もしも、凍らせるのを忘れて翌日、硬くなったバゲットを発見した場合は、いい手がある。手に水をつけて、バゲット全体を軽く湿らせ、オーブンにぶっこむのだ。
カメラマンの諭に渡仏直後に習った方法であった。かなり復元されるので試してもらいたい。でも、やっぱ、冷凍が一番かな・・・。
食べたい時に、冷凍庫から取り出し、トースターで解凍して、ちょっとカリカリだけれど、焼きたてのお餅みたいで美味いのだ。
ちなみに、レストランで出てくるバゲット、裏返してみると、それがパン屋で作られたものか、工場で作られて冷凍されてレストランに運び込まれたものかが、分かる。
バゲットの底側に細かい丸い模様がいっぱい点いているものは、職人が作ったものじゃない、のだそうだ。フランス人に教わった。へー。
ちなみに、三四郎はバゲットがあまり好きじゃない。
彼はどっちかというとお米が好きで、米は残さないけれど、バゲットを与えると、食べないことがある。
フランスのバゲット、あんなに美味しいものを残す、なんて贅沢な犬であろう。
でも、残さないバゲットもある。美味しいパン屋のバゲットはちゃんと食べきるのだから、やんなっちゃうね。
夕方、残りのバゲットを温め直して、これにフムス(ひよこ豆のディップ)やタプナード(オリーブの潰したペースト)などを塗って、おやつ替わりに食べる。今は禁酒中だけど、ライブが終わったら、ワインと一緒に、くー、最高だ。
ところで、父ちゃんはバゲットを一本買ったら、サムライの刀のように、帯刀するような感じで、腰にあてて、歩いて帰る。バゲットは人生の杖であり、人生を生き抜く刀なのである。
ワインが飲めない今は、バゲットが今一つ、美味しくない。でも、ライブは一月後だから、禁酒もあと一か月で終わり・・・。いひひ。待ち遠しいのォ。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
写真の鳥茄子のクリームパスタの上の白いのは、ブラータチーズの中身です。ストラッタチェッラと言います。オリーブオイルとフラードセルで軽く味付けしてあって、これをバゲットに載せて、ガブっ!!!!! ひゃああ、やばい。
さて、そんなバゲット父ちゃんが講師をつとめる「敷居のめっちゃ低い小説教室」が5月7日に迫っています。小説を書いてみたいな、と思っている皆さん、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださいね。めるしー。
5月29日、フランスは連休中ですけど、祭日の月曜日、オランピアのライブです。ぜひ、お時間のある皆さん、お越しください。
フランス国内、もしくは周辺国にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。日本からは遠いですから、来ていただきたいですが、時間がせまってきましたから、ご無理はさせられません・・・。無理のない範囲でお願いします。あ、席は絶対売り切れませんので、当日券山ほどあり、ご心配なく・・・。
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。
☟
https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
☟
もしも、日本から行きたいけど、不安という皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。現在、日本から50名くらいの方が来るだろうという予測です。本当に、大変なところありがとう。必ず、いいステージにしますね。約束!!!
☟
ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
☟
https://linkco.re/2beHy0ru