JINSEI STORIES
滞仏日記「ノルマンディで一番美味しいガレット屋さん発見!不思議なガレットだったぁ」 Posted on 2023/04/01 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、エリック・サティで有名な「オンフルール」という町のはずれ、というか隣村にあるガレット屋がノルマンディでは一番美味しいという噂を聞きつけて、オンフルール在住のギタリスト、ロジャー君とそこでカフェミーティングすることに。
ロジャー君とはいつか一緒にバンドやろうね、ということになっている日本の音楽大好きな青年なのである。
ぼくがガレット大好きだと言ったら、ノルマンディで一番美味しいガレット屋を紹介したい、と誘ってくれたので、行ってきたのであーる。
すると、すごい、マジで、ほんとうにフランス一、美味しいのじゃないか、というほどのガレットに出会ってしまったのだ。
ガレットには名前が付いていた。
La supercomplete(スーパー・コンプリート)、超完璧とでも訳すのであろうか。
相当に自信がうかがえるネーミングに最初からタジタジ父なちゃんであった。
「ムッシュ、これね、最高なんだよね。びっくりしますよ」
ロジャー君は英国人で、なぜか、フランスに渡り住んで、なぜか、オンフルールを拠点に活動している。サティのジムノペディアが大好きなギターリスト!!!
そのロジャーがぼくにすすめたのが、この超完璧ガレットなのであった。
まずは、実物をご覧頂きたい。
じゃじゃーーーーん。
おおお、なんか、ガレットの中心に牛乳のようなものが。
まるで白濁した池のようではないか、その真ん中に卵黄の島が・・・。
き、奇妙である。
メニューには、卵、エメンタールチーズ、ハム、クレーム・フレッシュ・サラダ、と書かれてある。
ということは、この白濁した池はクレーム・フレッシュということになる。
英語ではダブル・クリームとなっている。
日本だとサワークリームが近いのだけど、実は日本のサワークリームとクレームフレッシュって、ちょっと違うんだよね。
クレーム・フレッシュは、もうちょっとサワー感がないというか、生クリームでもないし、やや酸味のある新鮮なクリームなのである。
これを林檎のタルトとかにかけて、食べるのだ。ぼくは好き。
でも、クレーム・フレッシュって、実際は固形物なので、このソースが、特別に何かの液体でのばしてあるんだろうなあ、と思いながら、フォークとナイフで、カットして、口に放り込んでみたら、ぎょええええ、びっくり。
ガレットの生地というか、皮が、パリパリで、超薄いのである。
サンマロの美味しいガレット屋を先週発見しご紹介したばかりで恐縮だが、あの、パトリックの店のガレットに負けない、というか、もっと薄く、もっとパリパリで伸びがある、ガレット皮なのであった。
しかも、めっちゃパリパリなのだけど、サワークリームの影響もあって、中心部はややしっとりしているのであーる。
ハムが二枚も入っている。
卵を崩して、カットしたガレットをクリームにつけて口に入れてみた。う、うまああああああああ~。なんじゃこれは!!!!
「ふふふ、ムッシュ、うまいでしょ」
「ロジャー、これ、やばいね」
「でしょ、ノルマンディ一、美味しいガレットだと思います」
「確かに、これはやばい」
ということで、ぼくはあっという間に完食してしまったのであった。
「ムッシュ、デザートがまたやばいんですよ」
「ええええええ」
ちょっとおおげさに書いているでしょ、と皆さん、・・・いつもご愛読ありがとうございます。
63歳ですからね、はじめて入った店で、ぎょええええええ、とか、普通、言わないわな。笑。
しかし、これは心の声なのであーる。
マジで、美味しいのだから、それを読者の皆さんに伝えるには、多少のデフォルメが必要なのであった。
デザートは普通のクレープに生クリームとバニラアイスが載ったものを頼んだのだけど、一瞬で完食。
食の細い父ちゃんがむさぼり食べたこのクレープのデザートもおいしかった。メイプルシロップが絶妙だった。
ということで、サンマロのガレット屋も驚いたのだけど、オンフルールのガレット屋にも脱帽であった。
世界一のガレット屋が、各町や村にある、フ、フランスって、恐ろしい。
でも、ま、考えてみたら、大阪や広島にも、そこかしこに美味しいお好み焼き屋さんがあるわけで、あとは好みということになるのだから、美味しいのが当たり前やね。
はー、大満足。
ロジャーとは来年のノルマンディ音楽祭で一緒に共演をしようということになったので、お楽しみにね・・・。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ノルマンディは昨日からずっと嵐に見舞われていて、また、屋根が飛びそうで、びくびくしているところです。昨日の夜は停電になったので、ちょっと心配ですが、これから、「ミラクル」の後半の章を、朗読&録音します。オーディオ・ブックが楽しみですね。ちなみに、「ミラクル」は電子書籍でも読めるので、ぜひ、読んでみてくださいませ。あはは、宣伝でした。ばいちゃー。
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