JINSEI STORIES
ノルマンディ毎日のごはん日記「その日、出会った運命の食材を調理できることの至福」 Posted on 2023/02/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、食べることには周期みたいなものがあって、白ご飯、味噌汁、焼き魚みたいなどっぷり和食か、カフェで出てくるような簡単気軽なフレンチ、イタリアン、タパス料理みたいなちょっと気取ったものの、どっちかに振れることが多い父ちゃんなのである。
多分、朝起きて、どんな音楽をかけるか、どんな天気か、どんな気分か、で決まる。
昨日、今日のノルマンディは快晴だったので、気分が跳ね上がったこともあり、自然とカラフルな欧風料理へと傾斜した。
美味しいワインとかバゲットをゲットしたし、もう、そうなると、ガーリックの利いた料理とか、クリームたっぷり濃厚な味わいとか求めてしまうのは、人間だものね、しょうがない。
さて、昨日は甘いトマトをフライパンでじっくり炒めて作ったトマト・スパゲッティ、今日は濃厚オランデーズソースを拵えて作ってからの、エッグベネディクトとあいなった。
ぼくは鼻歌を歌いながら、料理をするのが好きだ。
小説を書く時は音楽を消して集中するが、料理をする時は気分をよくするために好きな音楽をかける。
今だと、自分のアルバム「ジャパニーズソウルマン」なのだ。
自分の音楽がんがんかけて、大声で歌いながら、プティトマトを炒めてソースにする、このいくばくかの時間がたまらない。
鼻歌どころか、大きな声で歌いながら、時には踊りながら、あるいはジャンプなんかもして、途中で、自分がオランピア劇場にいるような気持ちになって、手を振り回しながら料理に没頭するのであーる。
たった一度の人生なんだから、いったい、誰に憚る必要があるだろう。
ない、ない。
自分一人分の飯なのだから、材料費もほとんどかからない。
パスタも60g程度で十分だし、ニンニクひとかけらとプティトマト一パックで終わり、安い白ワインを舐めながら、香ばしいバゲットを齧って、もう、最高なのである。
誰の人生だよ、とかぶつぶつ言いながら、綺麗に食べきって、食器を洗って、三四郎とソファでゴロゴロしている。いや、最高である。
寂しくないです、本当です。☜天の声・・・。あはは。
前にも言ったことだが、ぼくは自分に必要な分の食料を、隣村のマルシェまで買いに行き、その時、一番新鮮な卵やチーズや野菜なんか物色して、レシピを考えるのが好き。その日、出会った運命の食材を調理できることの至福といったら、ない。
昨日はスペインのプティトマトがめっちゃ安く並んでいたので買った。じっと見ていたら、お店の人が一つ、味見させてくれたのだ。
これが、甘い!!!
頭の中に、濃厚トマトスパゲッティが浮かんだ、という次第であーる。
ついでに、卵屋さんで新鮮な卵を買ったので、濃厚オランデーズソースのエッグベネディクトも作ることに・・・。
サーモンの燻製はちょっと前に食べて残ったものがあったので、ちょうどよかった。冷蔵庫の残りものを頭に入れてから買い物に行くのが父ちゃん流だ。
お尻をふりふりしながら、オタマをマイクがわりにし、豪快に歌いながら料理をするのであーる。孤独じゃなーい、最高だぁ。
夜は、作るのが面倒くさいので、三四郎を散歩に連れて行った帰り道、犬カフェとか、犬ビストロとか、犬レストランに立ち寄って、知り合いのギャルソンなんかとどうでもいいような会話を楽しみ、ワインを2,3杯ひっかけて家路につく。
近海でとれたての魚料理を食べて贅沢をすることもあるし、地元のチーズや郷土料理に舌鼓をうつことも・・・。
夜はちょっと贅沢をして、昼間はキッチンで人生と向きあうのがいい。
いい年の取り方というのがあるのかわからないけれど、ストレスなく、自分を追い込まず、笑顔を絶やさず、生き物への愛を大切にしながら、今日も生かされていることに感謝してだな、眠りにつく、父ちゃんの毎日なのであった。
明日は何を食べてやろうかな、と考えながら眠りに落ちていく幸せを嚙みしめて・・・。
美味しいものを腹八分、いや、腹六分くらいにして、終える毎日が健康的なのであーる。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
そんな父ちゃんのパリでのライブは、5月29日、エディット・ピアフも立ったオランピア劇場で開催されます!!!
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ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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