JINSEI STORIES
ノルマンディ日記「勝ったも同然です、と豪語する男、熱血マコちゃんが行く」 Posted on 2023/02/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、父ちゃんの音楽活動において、非常に重要な男が一人いる。
ごぞんじ、マコちゃん、である。
長年、ぼくのバンドのローディ&アシスタントをやってくれている。
パリ・ライブには欠かせない男なのだ。
主にギター担当なのだが、楽譜スタンドが倒れて困っている時も、ギターの弦が切れて大変な時も、「マコ、弦を替えて!」とアイコンタクトをするも、ぼくに向けて親指を立て、なんにもせず、幸せそうに身体を揺さぶっている、・・・そういうローディなのであーる。
マコちゃんについてはここでも何度か書かせて頂いたけれど、彼はロックンロール1000%で常に生きている。
何を生業にして生きているのかよくわからないが、一見するとちょっと危うい、近づきがたいオーラ&雰囲気を醸しているところが、マコちゃんなのである。
そもそも歩き方や所作とか動きが変なのだ。
ぴょこぴょことやってくるが、身体がやや斜めになっているので、や、ヤーさんが来たか、と思うほどの凄みがある。
気が付くとぼくの後ろに立っていて、にやっと不屈の笑みを浮かべてみせたりする。
彼は、音楽プロで働いていたこともあるし、夜はミシュラン星付きレストランで給仕をやったり、古着を集めて日本に送ったりして生計を立てているが、根はパンクであり、ロックなのだ。
マコちゃんはどこで何をしていてもオール・マコなのであーる。
オランピア劇場でのライブが決定したときも、2000席をどうやって埋めればいいか悩んでいたうちのスタッフの前で、一人だけ、腕組みして
「勝ったも同然です」
と不敵な笑みを浮かべていた。
何を根拠に勝ったのか、教えてくれと、とぼくが言うと、いや、勝ったも同然ですから、と繰り返す。恐るべし大胆さではないか。
※ MCJP大ホールでライブをやった時の、ローディ姿・・・。
船を借りてセーヌ川の上でライブをやった時も、誰かが楽器のセッティングをしているマコちゃんに、
「マコちゃん、ここにトイレありますか? 」
と訊いたら、ありますよ、と言って一同を引き連れて船底へと向かうのはいいが、そこにトイレはなかった。
ないじゃん、マコちゃん、と誰かが責めても、ありますよ、の一点張り。
結局、ないのだけど、めげない。ありますよ、と言い続ける。みんなが呆れて、階上に戻って行ったので、マコちゃん、もういいよ、戻ろう、と諭すのだけれど、ありますよ、と言い続ける。マコちゃんに「撤退」という言葉は存在しないのであーる。
そんなマコちゃんの最新情報が、今日、ノルマンディに舞い込んできた。
※ パリ市内バスツアーライブの時も、ぼくの背後でセッティングをしているマコちゃん。
実は、マコちゃんに、フライヤー配布を手伝って貰っている。
5000枚のフライヤー、作ったのはいいが、ベルトランは忙し過ぎる。マコちゃんに頼んだら、もちろんです、と引き付けてくれた。
すでに、彼一人で、オペラ地区の日系レストランなどに2500枚ほどの配布を完了しているのそうだ。
彼は黙々と頑張るタイプ。本当に頭が下がる。
で、今日、フラワーアレンジメントの先生アヤコさんから、メッセージが届いた。
アヤちゃんは仲良しのパティシエール、マリコさんのお店(ES)の花まわりを担当している。
仕事がひと段落し、アヤちゃんがマリコさんとお茶を飲んでいたら、不意にドアが開き、ギャングだと最初は思ったというような真っ黒な出で立ちで、ヌッと男が顔を出したのだそうだ。
乱れた髪型で、目つき鋭く、皮じゃんを羽織り、明らかに強盗にしか見えなかったというのである。
とっさ、アヤちゃんはケーキを食べていたフォークを掴んで身構えたくらい、マコちゃんの登場の仕方に脅かされたのであった。
「あの~、辻さんのライブのフライヤーを置いて貰えますか?」
いきなり、結論からはじまったので、アヤちゃんは身構えた態勢を崩せずにいたのだそうだ。その時、どんなに怖かったか、をトクトクと語るアヤちゃん。
フライヤーを勝手にテーブルに置くと、再び、身体を斜めにしてギャングのような出で立ちのマコちゃんは店を無言で出て言ったのだそうだ。
マコちゃんらしい、情報であった。
そうやって、マコは、パリで一人都市伝説を作り続けているのであーる。
※ ぼくが自撮りしていると、必ず、背後で嬉しそうにしているマコちゃん。
※ マコちゃんはオヤジ飲み会になると、ギター伴奏担当になる。
でも、なぜか、人気がある。
「あ、辻さん、頑張って」
と時々、日本の方に声をかけられるが、
「わたし、マコちゃんの友達です」
という方が多い。
「パリごはん」制作会社のLさんも、なんか憎めない方ですよね、不思議なオーラがあって、と絶賛する。
それがどういうオーラなのか、ぼくだけが分かってない。
在パリのおやじたちが一同に会して、酒盛りをする時、マコちゃんは自らギターを抱えて伴奏をやる。
おもに、清志郎さんの歌とか、シーナアンドロケッツとか、めんたいロック系とか、あの時代の音楽が大好きなようだ。
「こんな夜に、発射できないなんて~」
とギターを弾きながら歌っていたこともあるが、決して、歌もギターも上手ではない。でも、ギターは膝くらいまで下げて、ロッカー気取って演奏をする。ロッカーは、生き方とスタイルが大事なのだ。
年齢はぼくよりちょっと下だけれど、髪の毛はクリッとカールさせてストーンローゼス風に決めている。
「意識しているの? ストーンローゼス」
と訊いたら、
「大好きですが、意識はしてないです。アタッチメントなどは同じものを全部集めています」
という見解が戻って来た。???
これは、意識している、ということだと思うのだが、マコちゃん的には、そうじゃないということで皆さん、よろしいでしょうか?
5月29日、エディット・ピアフやストーンズも演奏をしたオランピア劇場でのライブ、もちろん、見所の一つは、舞台袖で踊りまくるマコちゃんなのであーる。
その日は、フランス人のローディさんも雇う予定なので、マコちゃんは、舞台袖で自由に踊りまくっていてほしい。
いや、これこそが、ロックなのである。
マコちゃん、ありがとう。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
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そんな熱血父ちゃんのパリでのライブは、5月29日、エディット・ピアフも立ったオランピア劇場で開催されます!!!
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