JINSEI STORIES
リサイクル日記「超寒い時には切ってぶち込んで煮るだけの簡単ポトフが最高」 Posted on 2023/01/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、とにかく寒い。
明け方、フランスはマイナス音頭が続いている。
今日はマイナス三度であった。
こういう寒い時には、身体も心も芯からあたたまる料理が食べたくなる。
でも、面倒くさい煮物料理ではなく、切って、ぶっこんで火を付けたら自然にできるようなものがいい。
そんなのある?
フランスには、そういうずぼらを喜ばせる最強の鍋料理が存在する。
その通り、ポトフである。
ポトフを始めて食べた時、これは和食ではないのか、と思ったほどにシンプルで、奥の深い煮込み料理であった。
フランスを代表するポトフだけれど、これに、日本の味を加えると、疑うことがないくらい和の味に変化する。
そのくらい、素直な料理なのである。
なので、日本でも大人気、ポ・ト・フ!
とにかく、寒くて、疲れて何もしたくない時とか、鬼に金棒の鉄板料理なのだ。
一人者でも大丈夫、小さな鍋に作りおきしておけば、翌日もさらに美味しく食べることが出来る。
どうです?
寒い真冬だからこそ、ポトフを作ってみるというのは?
よし、作りましょう!!!!
今夜はポトフだ。
いろいろなポトフが存在するのだけど、手の込んだことをしたくない人には、ソーセージとキャベツとニンジンのシンプルポトフをおススメしたい。
シャウエッセンとか、最高である。
キャベツは別にちりめんキャベツじゃなくても結構。
でも、ニンジンは必要だね。
ひゃあ、あたたまるー。
野菜の旨味が疲弊しきった心に優しい。
温かいので身体は温まる。
そうだ、やる気を取り戻すためにポトフを作ればいいのだ。
今回は、冷蔵庫にあったちりめんキャベツ、にんじん、蕪、ポワローネギ、たまねぎなどで作ることにした。
肉は、何もなかったが、ソーセージがあった。十分!
ポトフは本当に手間がかからない。
野菜をカットして、鍋にぶっこみ、水を注いで、ブイヨンを一つ投げいれ、ちょっと塩胡椒したら、火をつけるだけ。
注意点としては、まず、にんじんや蕪などの根菜は下にすること、である。
上にキャベツなどの軽い、壊れやすい野菜を引き詰めること。
荷崩れしないよう、それ以降はもう触っちゃいけない。
ほっておくのがコツだ。
ほっといでいいだなんて、今時、珍しく食べる人思いの料理ではないか。
さすが、ポトフだ!!!!!
タイムとかローリエがあればちょっと入れるとなお良い。
野菜だけでも十分だが、今回は、ソーセージがあったので、放り込んでおいた。
一時間もぐつぐつやれば勝手に出来上がっている。
誰でも作れるうえに、とっても美味しいのがポトフの素晴らしいところである。
鍋の蓋をあけて、出来上がったポトフと対面するだけで、気分があがる。おお、美味そうじゃないか!
お皿に綺麗に盛り付け、食べる。
あまりの純朴なおいしさに、やる気が復活してくる。
人間、やっぱり食べることは大事だ。
出来立てのポトフはスープからすすってもらいたい。
五臓六腑に旨味が染みわたる。
これだ。美味しいと身体が素直に喜ぶ。
細胞が動きはじめるのがわかる。
粒マスタードで食べるとこれがまた美味い。
ちょっと変化を出したい人は、柚子胡椒などを添えて食べると、もっと美味しくなる。
キッチンの丸椅子に座り、ポトフを頬張った。
神様からのギフトだと思った。
よし、元気が出た。
実はポトフ、このまま一日放置しておくと、翌日、野菜に味が染みて、さらに美味しくなるのである。
素晴らしい。
何もする気が起きない時に、作る一品としては最高に重宝する料理でもある。
天才ポトフに父ちゃんは助けられた。お試しあれ!
※ 煮込み肉があれば、こういうのも出来る。辻家のポトフ率は高い。特に、この時期・・・。えへへ。