JINSEI STORIES
滞仏日記「ランチタイムミーティング、ちゃちゃっと料理した父ちゃんシェフ!」 Posted on 2023/01/24 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日は仕事関係の人たちにランチを作ってふるまった父ちゃんであった。
午前中から午後にかけて、オランピア劇場ライブに向けてのミーティングが当事務所(兼自宅)において行われたのであーる。
ミュージック・ビデオを作るチーム(ピエール含め)とか、フランス人スタッフさんなどが集まった。なぜか、ちょうど、ランチ・タイムだったので、(フランスの場合、とくに音楽関係の場合、食事を出さないとならない。練習とかにも食事が含まれている)、サンドウッチというのも味気ないので、じゃあ、父ちゃんがなんか作りますわ、ということになり、ようは「賄い」料理みたいなものを拵えて出した。
来ることは薄々わかっていたので、三四郎の朝の散歩帰りに、肉屋に立ち寄り、こういう時に必ず買う「仔牛のロティ・イタリア風」を一キロ買って、あと、ジャガイモをローストして、これらをつまみながら、ちょこっとパスタを食べる感じ、にした。えへへ。
これがね~、ちょっとにすればいいのにさ、何せ、自慢したがりの父ちゃんだもんで、手の込んだものを作るんだよね。
ま、ちょっとってわけにもいかないし、ちゃんと食べて貰いたいから、キッチンの棚も直ったことだし、つい、オーブンやらガス台がフル稼働になってしまったのであったぁ~。
やれやれ。
※ 手前、タヒニソース!!!
※ 買うとき、こういう状態です。
ボリショイ・バレエ団の元プリマさんが躍るミュージック・ビデオを、あの悪友のピエールが監督することになり、彼がパリ市内各所でロケハンしてきた映像をみんなでチェック、・・・それが期待してなかったせいでか、思ったよりもぜんぜん良かったのだ。☜この上から目線、どうなん? あはは、いや、でも、マジ、素晴らしかった。
とくに、パレ・ロワイヤルの回廊を鳩が飛んでいく映像がスローモーションで、それかよ、いいじゃん、と思わず、口元が緩んだのである。
「いいね、ピエール」
「よかった、辻に気に入ってもらえてうれしいよ」
「映像も驚くほど綺麗だし、期待してなかったこと、謝るわ」
「それかよ」
パレ・ロワイヤルやヴォージュ広場の回廊で元プリマが「空」という曲をバックに踊るのだ。ピエールは写真家だけあって、モノクロームの映像が詩的で実に素晴らしかったので嬉しくなり、料理にもつい力が籠ってしまった。
で、ぼくが作ったパスタは、イタリアン手打ち麺を使った、ようは中華風?混ぜ麺である。
簡単に言えば、ひき肉をニンニクとか玉ねぎとかミョクマムでアジア風に炒めたものに、練りごまのタヒニで拵えたソースを上から、ぶっかけたもの・・・。
葱とか薬味を入れて、アジア風のテイストにしたから、仏人たちが口に入れた瞬間、みんな目を大きく見開いて・・・、
「うめー」
と盛り上がっていた。
ピエールのスタッフのシモンは、まだ若いから、感動が全身からほとばしる。フランス人は美味しいと、右手を開いて、丸く開いた口先辺りで、細かく左右にふるのである。うららー、でりっしゅー。
ピエール、シモン、オリビエが、同じ格好で、手をじゃらじゃらさせた。笑。
うひひ。どうじゃ、まいったか~。
「ツジー、やっぱ、この辺でアジア食堂やったら大ヒットするのに」
「アジア食堂? ぼくの音楽は大ヒットせんとか? 」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど、怖い顔すんなよ」
「あはは」
最近、ピエールをイジメて楽しんでいる父ちゃんなのである。ピエールの口癖は、「ツジのプレッシャー、きついわ~」なのである。顔合わせると「失敗は許さへんで」と大阪弁で攻撃しているからであーる。☜ピエールに大阪出身のスタッフが訳して教えていた。ダウンタウンのことまで説明していた、・・・。
※ これがね、力作、イタリアン・アジア麺、であーる。
※ イタリアン・仔牛のロティ
イタリアン仔牛のロティとポテトも美味しかった。この辺に越してきて、何軒かの肉屋を物色し、あちこちのお惣菜をいろいろ食べ比べ、出会った仔牛のロティであった。
仔牛の中にはハーブ・ソースとモッツアレラが巻かれてある。家庭料理なのだけど、新鮮な発見は在仏20年経っても変わらない。美味しいものはカルチエごとに違っているし、時代ごとにも発見がある。
今ある食材で、ちゃちゃっと作った、ある意味、ミスマッチな食べ物がテーブルにずらっと並んだわけだが、美味しい料理のおかげで、会議が弾んで、盛り上がった。ともかく、熱血には、うまい物が欠かせないというお話でありました。
よっしゃ~。
はい、今日も読んでくれてありがとうございます。
三四郎は、ここのところ、生後3か月の可愛いメスのミニチュアダックスフンドお嬢様(マジョルカちゃん)と仲良くされておりまして、毎朝、公園でラブリーなナイス・デュエット・ランを繰り返しております。父ちゃんは厚着をして、ポケットに手を突っ込んで、その様子をじっと見ておりますが、この無邪気な子犬たち、まさに絵に描いた幸福がそこにあって、癒されますね。動物を大切に、生きることを切に、頑張っていきましょうね。
さて、日曜日に迫ってきましたよ。父ちゃん講師が熱血でおおくりする文章教室!エッセイを書くのが好きなあなた、ブログなどやっているあなたにもちょうどいいクラスです。どしどし、ご参加ください。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックね。
※ 犬も恋をするのでしょうか?
それから、父ちゃんのライブも、早いもので、あと4か月後に迫ってきました。もう、二度と、こんな機会はないでしょう。パリの音楽の殿堂、オランピア劇場での一生に一度のライブ。準備は着々と進んでおります。在仏の皆さまは、フナックでチケットが買えます。日本からぜひ応援に駆け付けたいとご計画中の皆さまにはJALパック・パリさんがお手伝いしてくださいます。こちらのURLからチェックくださいませ。
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そして、NHKの「パリごはん」来月、新作(秋冬編)が登場します。
2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】です。4か月半に及ぶ、父ちゃんのアフター子育ての自撮り記録です。引っ越しあり、三四郎との旅もあり、てんこもりですぞ。もはや、自撮りで、生きていけるわい。
「辻仁成のパリごはん 2022年秋冬」(59分)
そして、再放送もあります。
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送
熱血~。