JINSEI STORIES
滞仏日記「一人と一匹旅をスタートさせたはいいけれど、行き当たりばったり過ぎた」 Posted on 2023/01/05 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、昨日夕方に出発する予定だったが、音楽プロデューサーのロブソンと奥さんのエリカ様が来ることになり、それならばちょっと食べて呑もうか(アプロ・ディナトワール)、となるでしょ? えへ・・・。
結局、料理をしたり、呑んだので、その夜の出発は取りやめに。旅に出るのが今日の朝一となったのであった。しかも、雨で寒い・・・。
今回は、エリカ様のリクエストで蕎麦祭りとなった。十割蕎麦、つけダレは手作り、野菜と海老のかき揚げ、いつもの鳥天、いつもの焼き枝豆、ええと、天然もののスズキがあったので中華味のカルパッチョにしてみた。
だいたい、いつもの父ちゃん飯の布陣である。
※ スズキのカルパッチョ・チャイニーズ風、最高でした。これと十割蕎麦・・・
早起きをしたのだけれど、食器などを洗って、掃除をして、やらなければならない事務作業をやって、戸締りをして、三四郎にピッピとポッポをさせて、いざ、出発となったのが、朝の10時であった。やれやれ。
どこへ行くのか、漠然としか考えてない旅である。
ストラスブール方面を一度は目指したが、道中、打ち付ける雨と暴風で、これはやばい、となった。
サービスエリアで、コーヒーを飲みながら、おそめのランチをとり、欧州各地の天気予報をチェック。
ずっと雨ってのも、やだね、とぼくは三四郎に愚痴った。おっけー。ならば路線変更だ。
ということで、パリを出て、小一時間経ってから、進路を東から西へと切り替えた、父ちゃん一行。とりあえず、南仏を目指すかな。
※これがフランスのサービスエリアで出されるランチである。選ぶのだけど、なかなか選択肢があるようでない・・・。食べきれなかった。
モンペリエ辺りまで行き、バルセロナに入るのはどうだろう、あ、そうだ!
そうだ!!!
たまたま、昨日、スペインの友人、ウリセスから、「バレンシアにおいでよ」と連絡があったばかりだったじゃないか。昔、バレンシアを舞台に小説を書く話があり、バレンシア政府から招待を受けていた。結局、実現はしなかった・・・。
父ちゃんが、はじめて、ボレロを聞いた街である。
その時、カーニバルがあって、ぼくはウリセスに連れられて、市庁舎の屋上から広場を見下ろしていたのだ。数万人の聴衆を前に、昼間の花火大会の後、オーケストラが「ボレロ」を演奏しはじめた。
じゃんじゃじゃじゃん、と小太鼓が力強くリズムを叩いた。
緊迫ともの凄い熱量だった。
そして、あのメロディ、あの感動は忘れられない。いつかこれをギターで演奏したいと思った父ちゃん、20年後、父ちゃんはクラシックギターでボレロを演奏することに。
つまり、バレンシアは「父ちゃんボレロ」のゼロ地点だったのである。(作曲者のラベルは、なんと、フランス人なのである!)
「あ、そうだ。バレンシアに行こう!!!」
ということで、不意に、行き先が決まった。この気まま旅、どうじゃ。
バレンシアじゃ!!!! オレンジの街、バレンシアがいい。この時、すでに午後の深い時間になっていた。
(父ちゃんのボレロ、昨日、インスタに、仕事場でつまびく動画をアップしましたが、ご覧いただけましたでしょうか? もっと前に、家で弾いたものがこちらのURLになります。ご興味あれば、クリックください。これのオーケストラバージョン、大迫力でした! いつか、オーケストラと共演したい)
☟
https://m.youtube.com/watch?v=VJl3jFR3eJw
※ この道、ちょっと寂しかった。太陽がほしい・・・、南へ。
ところが、結論から言うと、バレンシアはかなり遠かった。あはは。
トウールを出た辺りで、どんよりと暗い雲に見舞われ、さすがに計画性がなさ過ぎた自分の浅はかな行動に嫌気がさし、いったん、高速を降りて、日が落ちる前に宿探しとなった、父ちゃん、そして、三四郎であった。
とりあえず、よくわからないシティホテルでこの日記を書いているのだが、このような行き当たりばったりの旅、・・・賢明な皆さんはどう思われますか?
三四郎は見知らぬ街の宿の周辺を散歩させ、とりあえず、今日は昨日の残りの太巻きと鳥天があったので、それをついばみながら、スーパーの白ワインで。え?
レストラン探せってえかぁ~、・・・
あはは。
※ 葡萄畑を、発見。おじさんが、畑の真ん中で作業をしていました。いい風景ですよね。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
スペインに無事たどり着きましたら、MANUEL ADALIDのギターを探して、買おうかな、と思っています。今は、YAMAHAさんのNCX2000FMを二台持っているのだけれど(最高)、「スペイン製ギターもいいよ」とロブソンに昨日、すすめられたばかりで、せっかくフラメンコのメッカに行くのであれば、買わない手はありません。しかも、車だしね!!!
オランピアで、ヤマハとアダリドが並ぶ日がくるかもしれないですね~。
はい、そして、ささやかな、お知らせです。
次の地球カレッジは、1月29日、日曜日。
「エッセイの書き方教室、第1回」となります。
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。
それから、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
☟
フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、
☟
https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujilunchparty2/