JINSEI STORIES

滞仏日記「自分が変わらない限り、世界は変わらないのだ」 Posted on 2022/12/31 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今の自分のままでいいのかなぁ。最近、よく考えることだ。
自分の生き方を少しだけ変えてみるのはどうだろうと衝動的に思った。
人生を振り返らないようにして生きてきたけれど、ちょっと振り返ってみてもいいのかもしれないなぁ、と珍しく思い始めてきた。
川の流れのような世界の中にいるから、どんどん流されていく。
大河の流れは川岸から見る限り雄大だけれど、流れの中心にいると目まぐるしい。 
携帯はそんなに大事なんだろうか。つねに携帯を探している自分に苦笑する。
あれ、携帯がない?
携帯がぼくを救ってくれたことがあったか。何をしても批判ばかり。
面白おかしく生きる人たちに囲まれているのは自分のせいなのだ。
世界が変わらないと嘆いているだけでは、世界は変わらない。
方法はきっとある。自分が変われば出会う人が変わる、自分が変われば世界は変わる、のだから。
そうだ、自分を変えてみればいいじゃん。
今まで選ばなかった道を歩くように、ちょっとだけ、何かを変えてみよう。
違和感を感じるならば、後ろに下がって、少し離れて、自分を見つめ直してみる手もある。
少し旅に出るように、今いる場所から離れてみるのはめっちゃいい手だと思う。
違うな、と思ったら、戻ればいいし、戻ったら戻ったで見え方は変わっているはずだ。
自分に飽きたらつまらなくなるから、その前に、自分を変えてみる。
自分が変われば、当然、これまでとは違った世界が出現する、いいか悪いかは別に。
とにかく、やってみないとわからない。おしてダメなら、引いてみればいいだけのこと。
でも、繰り返しだけでは自分がダメになる。
同じ場所にい続けると、同じ矢が同じ方角から飛んでくる。
みんなに愛されるのは無理だよ。一人にさえ愛されないというのに・・・。
自分を変えるって、どういうことだろう。

滞仏日記「自分が変わらない限り、世界は変わらないのだ」



議論ばっかりしている人がいて、言葉で勝った気になっているのは実に滑稽だ。
読みもしない書棚に詰まった本のようなもの。必要な本は何冊あるの?
死んだ友人のことを思い出した。あいつもう、携帯必要ないんだな。
生きてることを考え直す時じゃないか、と戦争の映像を見ながら思った。
間違いなく、来年は人類にとって今までにないくらい厳しい時代になる。
世界という大きなボール、今や穴ぼこだらけになっちゃったじゃないか。
もう、元のボールには戻せない。すくなくともぼくが生きているあいだに。
穴ぼこを見ないようにして生きている。何年持つか、という我慢大会みたいな。
他人がそんなに気になるのは、こんな時代に、考え直すべきかも。
死んだら、どうなるか、考えてみよう。
貯金はどうする?
引き出しの中の大切なものはどうなる?
好きな人たちはどこへ消える?
よかった。気が付くことが出来たんなら、試してみたらいいんだよ。
そんなに繋がってばかりいても、成長出来ないし、同じことばかり喋って、悟ることも出来ない。

滞仏日記「自分が変わらない限り、世界は変わらないのだ」



偉そうにする人から、離れよう。
独裁者みたいな連中ばっかり、どうなってんの?
例えば80億の人類のうち、10億人くらいは気が合わないとして、70億は残っているわけで、そのうちの5億くらいはどうでもいい人かもしれない、45億くらいは出会えない人だろう。残りの20億の中に、めっちゃ気が合う人がいる可能性がある。宇宙に生物がいる確率よりは、かなり、大きい。その20億人全員に会うことは不可能だけれど、近くの銀河に、一人や二人はいるはず。でも、自分の銀河から飛び出さないと出会えない可能性がある。
すくなくとも、ルーティーンの中には存在しない。
来年を最悪にさせないために、どうするのか?
まずは、それが問題である。
12月31日は考える日になった・・・。

滞仏日記「自分が変わらない限り、世界は変わらないのだ」



滞仏日記「自分が変わらない限り、世界は変わらないのだ」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
とくにイベントのない大晦日なのです。おせちを作る予定もないし、誰とも連絡取り合う予定もないので、珍しく、過去を振り返ってみました。来年は、ちょっと生き方を変えてみたいなぁ、と思っています。ま、インナートリップに出かけてみたいですね。広大な内的宇宙に。皆さん、よい年をお迎えください。あまり無理されないよう、・・・いつも、ありがとう。
さて、次の地球カレッジは、来年の1月29日、日曜日になりました。参加を希望される皆さん、以下をご参照ください。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」家族に囲まれ幸せなあなたにも、独りぼっちのあなたにも、赤い首輪のさんちゃんにも、ジャパニーズソウルマン、がんがん響くこと請け合いです。


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それから、来年、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

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