JINSEI STORIES
滞仏日記「年末スペシャル。父ちゃんがすすめるワインとシャンパーニュ、第一弾」 Posted on 2022/12/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、2022年も残すところあと、今日をいれて二日なのであーる。
先日、シェフのマエシンに「え? 辻さんは肝休日なしで毎日吞まれるんですか?」と聞かれ、「休むってどういうこと?」と返すくらい、お酒が強いのである。
365日、呑まない日はない。
呑まない時は病気なのである。今年は気管支炎でドクターストップがかかった2,3日だけ、確かに、吞めなかった。あはは。
ワインはお酒ではない、と思っている。健康のための水である。ウイスキーは人生の水であり、シャンパーニュは刹那の泡なのだ! おお、なんて、ロマンティックな響きであろう。ロマンティックが止まらない。
ということで、今日は、父ちゃんがどうやってワインを選んで買っているのか、また、おススメのワインはどういうものか、などを勝手に書かせて頂く。
ここだけの話だが、父ちゃんがお金持ちにならないのは、ワインに稼いだお金を数十年つぎ込んできた結果である。
たぶん、毎日、呑むので、マンションを買うくらいのお金はこの数十年で使ったと言っても過言ではなーい。あはは。←何自慢?
いいワインを出来るだけ安く買うことに命をかけている。
しかし、やはりいいワインは高い。
限られた地域の畑の一角のワインが高い。たとえば、その隣の畑になるとちょっと安くなる。そういう発想でいいワインを探すことを続けてきた。
涙ぐましい、このワインへの愛着と努力は馬鹿にしてはならない。
毎日のことだから、本当に美味しいワインを出来るだけ安く探すために、知識と経験と情報と努力と勉強を続けている。←このくらいのガッツで仏語を学べって? えへへ。
ただし、父ちゃんはキャバクラには行ったことがないし、高級クラブとかスナックに通うこともない上に、高級レストランにさえもめったに行かない。
基本が家呑み&家飯なので、そこは皆さん、誤解をしてはならない。父ちゃんの酒の相手は、スリットの入ったドレスを着ためっちゃ美しいお姉さんではなく、赤い首輪のさんちゃんなのであった。あはは。
だいたい、パリで普段飲んでるいいワインを東京のホテルのバーで呑もうと思ったら、或る時、7~8倍もしたのでひっくり返ったことがあった。
でも、海を越えて、日本のホテルの高級バーに並ぶわけだから、ある程度、高くなるのは仕方ないのかなぁ・・・。←元の値段を知っていると、なかなか、手が出ない。
ワイン専門店のことをフランスではカーヴと呼ぶ。
地下室の倉庫のこともカーヴで、同じだ。ワインを選んでくれる人のことをカャビストと呼ぶ。カーヴの人で、カャビストである。
パリのレストランでも、もちろん、店によって違うけれど、だいたい、仕入れ値の3~4倍で出されている、らしい。(友人の経営者に聞いたのだけど、店によって違います)
たとえば、お店で70€で出されているワインは、仕入れ値が17€から23€のあいだぐらい、ということに。この仕入れ値も、卸業者によってまちまちなのである。
で、大型スーパーとかは大量に仕入れるので、すごくいいワインが嘘みたいに安い時がある。そういう時を父ちゃんは狙っているが、ここにも落とし穴があって、保管状態とか、ま、いろいろ注意しながら買うようにしている。
ところで、父ちゃんの行きつけのワイン・カーヴはパリ市内に数軒あるが、大型スーパーと何が違うか、というと、ようはセレクトの力なのである。
値段は高いが、管理はしっかりしているし、限られたいいものを見つけることが出来る。
たとえば、こちらのシャンパーニュ「Diebolt-Vallois(ディエボル・ヴァロワ)」は、ジュルジュサンク・ホテルや三ッ星レストランなどでは出会えるのだけれど、生産本数が少なく、海外の高級レストランが前持って買い取ってしまうから、フランスのカーヴで見かける機会が少ない。
(調べたら、日本のサイトで見つけた。驚くことに、フランスより安い・・・どういう仕組みなんだろう。日本のワイン輸入業者さん、すごいね)
ぼくの行きつけのカーヴの一つに、トマとヴァンサンがやっている「Moment Divan(至福の時)」がある。
ここで、こういうワインやシャンパーニュと出会える。ぼくは圧倒的に白ワイン派なので、普段買うのは、白ばっかり。
で、日本でも有名なブルゴーニュワインの、ムルソーやモンラッシェやコルトンシャルルマーニュなどは、間違いなく美味しいのだけれど、当然、それなりに高額なので、同じブルゴーニュでも隣の畑だったり、丘の反対側だったり、そこまで有名ではないけど、似たような味のワインを必死で探すのであーる。えへへ。
だって、いいものは天井無しに高いんだもん。そこでぼくは、トマとヴァンサンに相談をし、自分の好みを伝え、ワインを選んでもらうのであーる。
※、この左側のが、梅酒ではないけれど、プルーンの酒で漬けたレーズンチョコなんだけど、ウイスキーとかにあうんだよね。
ここのカーヴをぼくが好きな理由は、彼らの趣味と自分のがあっているから。たとえば友人のエルベのカーヴは有名で人気店だが、実は、ぼくが苦手な風味や酸味をエルベが好きだから、根底のところで、いい出会いに繋がらない。でも、酸味が好きな白を好む人はエルベの店が最高なのである。出会い系サイトのことは知らないけれど、トマとヴァンサンのカーヴはぼく好みの子がたくさん在籍しているのであーる。(在籍? ちゃうね。登録? あってますか?)
たとえば、ラドワとか、サントーヴァンとか、サンロマンなどのワインだと、ムルソーの30%、40%、いや、半額以下で買える。(比較しちゃいけないんだけどね)
しかも、彼らが選んだものはかなり状態がいいし、美味しい。これは、ワイン好きからすると、有難いガイドということになる。
とくに彼らの店はシャンパーニュのセンスが抜群で、ぼくは「酸味のあるものが苦手、で樽香があるものが好き、出来るだけ砂糖を使用していないものがいいが、多少、葡萄の甘みは感じないと嫌」みたいなうるさい客なのである。
彼らが選んだ「BrunoPaillard(ブリュノ・パイヤール)」なんかは、美味しかった。(こちらも日本で買えます。種類がかなりあるので、エクストラ・ブリュットをおススメしますね。グランクリュは高いけど、なお、おススメ。おほほ)
トマの店はワイン屋なんだけど、ワインと合わせるための大トロの瓶詰めとか梅酒漬けのレーズンチョコとかも置いてあって、その全体的なセレクションが素晴らしいのである。
15区の庶民的な通りにひっそりと開店中。
人柄もよく、ワイン選びが楽しくなり、センスもいいので、ご近所の在仏・日本人の皆さん、行ってみて。
ワインはね、年末年始のこの時期、幸せを感じる飲み物なので、ぜひ、いいカーヴを探し、気の合うワインと出会って、楽しんでくださいね。ちゃおちゃお!
※左からラドワ、ブリュノ・パイヤール、サントーヴァンかな・・。
※ で、こちらは、大トロマグロの瓶詰めで作ったペペロンチーノ、最高でした。これと白ワインだよねー。くー、たまらんわい。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
こんな風に書いたけれど、ネットで調べたら、日本には本当にいいフランス・ワインが入っています。でも、どこに美味しいワインがあるのか、わかるともっと楽しくなりますよね。ぼくも日本だとここに買いに行くな、という店がありますが、紹介してくれるカャビストがいるかいないか、は大きいですね。自分の好みを理解してくれる人を探す、新年にしましょう!
さて、次の地球カレッジは、来年の1月29日、日曜日になりました。参加を希望される皆さん、以下をご参照ください。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。
父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、実は、フランス・ワインとの相性も抜群なんです。このアルバム聞きながら、舐める白ワインはもう、超・ソウルフルですからね。ブルゴーニュワインに負けない、父ちゃんの音楽、跳ね返りますよー。
毎日、美味しいワインに囲まれている、トマとヴァンサンが羨ましい父ちゃんですけど、彼らにも、ジャパニーズソウルマンも、がんがん聞いてもらいたいものです。
☟
https://linkco.re/2beHy0ru
それから、来年、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
☟
https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、
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https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/