JINSEI STORIES
滞仏日記「激震走る。父ちゃんのアルバム販売数16枚でチャート6位って、やばくない?」 Posted on 2022/12/19 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、残念な話をしないとならないが、これはアーティスト側にとってであり、音楽を聴いている側は、むしろ、幸せな時代の到来なのかもしれない。
ぼくの10年ぶりくらいのフルアルバム、「ジャパニーズソウルマン」だけど、発売当初、iTunesのロックチャート6位、7位くらいをうろちょろし、総合でも26位ほどだったので、やったー、と思っていた。
iTunes以外の販売数はわからないのだけど、iTunesのチャートしか、出てないので・・・。むむむ。
で、スタッフさんがアナリティクスで調べたら、アルバムをiTunesダウンロードで購入されたのが16枚、だったのだ。
16枚で、6位って??? 凄い時代じゃ。
何が起こったのか、10年ほど、音楽シーンでアルバムをだしていなかった父ちゃんは浦島太郎なのであった。
数年前、息子が言った。
「パパ、ぼくらの世代はもうCDの再生機持ってないよ。サブスクで訊くしかないんだよ」
「サブスクってなん?」
「サブスクってのは、サブスクリクションサービスの略。Apple MusicやSpotifyといった定額の音楽聞き放題サービスのことだよ」
「ああ、あれね(知らないくせに、知ったかぶりした父ちゃんだった)」
へーすごい時代になったものだなぁ、と思った父ちゃんだったが、まさか、これが自分をうちのめすことになるとは、思ってもいなかった。
正確に発表されているわけではないのだけれど、Spotifyとかの場合、ぼくのアルバムの曲を聞いてもらうと、一曲につき、0,003から0,005ドル入るらしい。1万回の再生で、100円程度がぼくに入って来る、のだとか。今、7000再生回くらいなので、70円ゲット!?
息子は10万再生回で、1400円ゲット。
知らなかった。まだ、発売間もないので、今月いくら入るか、わからないけれど、製作費や宣伝費に300万円くらい投じているので、これを回収することはきっと十数年かかるね。
そのくらい投じないと、スタジオ借りれないし、ミュージシャンらにギャラを払えない。やっぱ、生のパーカッション、生のバイオリン、生のベース、聞きたいですものね・・・。全部機械でもイイものはできるけど、ぼくの目指す音楽じゃないんですよ・・・。
で、「辻の今度のアルバム最高だね」と豪語する友だちに訊いてみた。
みんな「サブスクで訊いとる」と戻って来た。あはは。
少し前に歌手の川本真琴さんが、「サブスクを考えた人は地獄に落ちて」という記事を発信して物議を醸していた、という記事を読んだ。
こういいたくなるアーティストは多いだろう。そして、リスナーの方は、音楽はお金を出して聞く時代じゃない、と普通に思っているので、「ライブのグッズとかで稼げばいいじゃん」というコメントもあった。
音楽では稼げない、ということだね。
多くのぼくの世代のミュージシャンが活動を続けられず、やめている。
大御所のファンを多く持っている人はサブスクには手を出していない人もいるけど、そういう方々はほんの一部。
とにかく、浦島太郎のぼくには、何が音楽業界でおこっているのかわからなかった。でも、今、身に染みている。
16枚しか購入されないのであれば、自分でCDとかLPを作って、会場で売った方がよかったかな、とも思った。でも、それじゃあ、新しい人には届かないよね・・・。
※一応、パリでは500枚CDを作り、オランピア劇場で販売をする予定です。一般流通はしません。日本のレコード会社さん、なんか、冊子とかつけて、メモリアル版、出しませんか? 宣伝協力しますので・・・。えへへ。
今回の「ジャパニーズソウルマン」はぼくが渡仏して出会ったフランスの仲間たちと今やっている自分の音楽をカタチにしたくて、パリでレコーディングし、残した大切なアルバムなのである。
その先には、ご存じのようにオランピア劇場でのコンサートが控えている。
オランピアにフランスの音楽ファンを招くには、お金にならなくても、音楽を聴いてもらわないとならない。
そうとう、ファンになって貰わないと、高いチケットを買って貰えないだろう。
まだ、2割程度の席しか売れてない。なにせ、オランピア劇場、2000席を超えるでかい会場なのである。
1月から宣伝が本格的に開始となる。
そのためには、音源が必要で、サブスクで広めるしかない。
CDなんか、今時の、フランス人は買わない。
今週末にフランス人の宣伝チームとミーティングをする。
サブスクを最大限生かして、多くの音楽ファンに届けるのが彼らの作戦になる。
そうなると、アルバムは、宣伝材料みたいな位置となり、コンサートに人を集めるための宣材になってしまう。
それでも、サブスクがないと、ぼくの音楽はフランスや欧州で広めることは難しいだろう。
一方で、1万回聞いてもらい100円では生きてはいけない。(※この数字はプラットホームによって違うらしい。もっと低いところもあるらしい。ネットで調べたら、こういう数字であった。前後いろいろとあるのでしょう)
でも、その人たちがぼくのコンサートに集まってくれるなら、アルバムは彼らにとってぼくの音楽やパフォーマンスを届ける媒介になる・・・。ううう。
もう、レコード会社、CD会社って、やっていけるのだろうか、と思ってしまった。
ぼくの知り合いたちはレコード会社をやめて、業界を去るか、イベンターなどに転職されている。
そもそも、CDの再生機がもうないし、パソコンにも付随してない時代なのである。
それにしても、いくらなんでも、16枚の販売数で、6位になったのが凄かった。
今はもう、一枚も売れてないので、37位まで下がった。
これが音楽業界の現状なのだが、時代がこうなった以上、ぼくも変わらないとならないということであろう。
ちなみに、16枚の売り上げのうち、ぼくが2枚(二つの携帯にDLしたので)買っているのだから、実際は14枚なのであーる。あはは、ひでー。
母さんが一枚、恒ちゃんが一枚だったら、どうなる????
何のためのアルバムなの?
音楽を続けるぼくらを助けてもらいたい。音楽が消えてなくなることはないけれど、良質のものをレコーディングするのが、もはや、難しくなる。
スタジオではレコーディングが出来なくなり、パソコンの中でアルバムは生まれていく時代になるのである。息子がそういうスタイルで音楽を作っている・・・。
アルバム「ジャパニーズソウルマン」がぼくのラストアルバムになるかもしれない。300万円って、車が一台買えるものね。そのお金を次に用意できるのは、そうだな、宝くじが当たった時かな・・・。あはは。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
厳しい時代ですね。小説も売れない時代ですけど、まだ、音楽よりはマシかな、と思います。ぼくはサブスクも含め、この時代の表現の方法を今、学ばないとなりません。デザインストーリーズブックはAmazonでやっていますが、続けているうちに、見えてきたこともあります。きっと突き抜ける方法は何かあるんだろうな、とロートルの父ちゃんは考えています。田舎の海に行き、隠居するのがいいのでしょうか? いいえ、それは違います。うううう、熱血~。
さて、22日、そんな熱血父ちゃんは、パリ市内をオンラインツアーやりますよ。ぼくが暮らす街の周辺を皆さんと散策します。ご興味ある皆さん、ぜひ、ご参加くださいませ。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリック!!!
iTunesストアで皆さんが、あと、16枚購入くだされば、再び、6位に返り咲く????あはは。実際、泣けるはなしだ。
でも、どんな形でもぼくの音楽を聴いて楽しんで貰えるのは嬉しい。ミュージシャン冥利につきる・・・。
父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
☟
https://linkco.re/2beHy0ru
それから、パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
☟
https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/
フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、
☟
https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/