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滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」 Posted on 2022/12/18 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、おなじみ街の哲学者アドリアン氏とその奥方のカリンヌ弁護士が忘年会を開催したので、顔を出した。
彼らの友人らが25人ほど招かれていた。
ピエール以外はまったく知らないフランス人らばかり。服装からするとちょっとリッチな人たちかな・・・。
基本、ぼくは早寝なので、20時スタートのこういう夜会には参加しないし、知らない人ばかりの会にのこのこ顔出す図々しさがないので、最初はお断りしたのだけれど、カリンヌから、
「ひとなり、オランピアの宣伝しに来なさいよ。満杯にしないと」
と言われた。痛いところをつかれてしまった。
宣伝、大事だから、出かけることに・・・。あはは、出かけたんかい~。
店の半分がワイン屋で、半分がカウンターバーというスタイルの人気店だけれど、販売しているワインをグラスでも呑めるのでワイン好きにはたまらない・・・。
このタイプが最近、増えている。
しかも、店売りしているワインの値段の10%増しで、店内で飲めるから、便利なのだ。
カウンターの上には、生ハムやチーズ、ブルスケッタにサーモンなどがずらりと並べられている。いいねー、おされー。
カリンヌ主宰なので、お客は無料で飲み放題、食べ放題なのだ。ぼくはカウンターの端っこに陣取り、ピエールやアドリアンら顔見知りと最初は、雑談を・・・。
その間、グラスの中に、次々、シャンパーニュが注がれ、ふわー、なんて贅沢な会だろう。来てよかった~、となった。あはは。たまにはいいね。

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

※おなじみアドリアン。専門はデカルト。



滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

カリンヌはこういうパーティを年に、数回開催している。
ぼくは普段の彼女を知らないけれど、やり手の人権弁護士さん、らしい。
どうやら、集まっているお客さんらは、弁護士、政治家、街の名士、経営者、など、いわゆるフランス経済を支える富裕層の人たちという印象。
ぼくのバンドはこの真逆の人たち、海外からやって来た移民・異邦人が中心なので、肌の色もまちまちだ。でも、ぼくには大事な仲間たち、彼らとカフェで呑むのは気楽で楽しい。
ま、いろいろなフランスがあるなぁ、と毎回、勉強になっている。
けれども、どこに顔を出しても、物おじをしない父ちゃんなのだ。仏語はダメだけれど、誰とでも仲良くなる才能と図々しは抜きんでている。
でも、なんでか、こういう会になると、ロン毛日本人、目立つんだよねー。
気が付くと、輪の中心に陣取り、偉そうに持論を展開しているのだから、やれやれ、であーる。(想像ください。おもろいオヤジです)
「はじめまして、あなた、今度、オランピアで歌うんだって、すごいですね、お見知りおきを」
「私は音楽が好きでね、あなた、どんな音楽をやっているの? 失礼でなければ、聞かせてください」
などと、次々、質問をぶつけられた。
どうやら、友人のカリンヌは、前もって出席者全員にぼくのことを話していたようだ。カリンヌは彼女の友人らに、ライブの告知をしていた。
持つべきものは友だちである。
ぼくはそういう人に「ガラスの天井」のMVを見せ、自分の音楽スタイルを力説する。好奇心旺盛なフランス人は目を輝かせて聞いてくれる。質問も飛び交う・・・。
「必ず、一席、買わせてもらうわ」
とドレスアップしたマダムに言われた。めるしーぼく。
とはいえ、ぼくはまぁ、話の枕みたいな存在で、オランピアの話から、みんな自分が好きなアーティストや音楽や文化の話にどんどん脱線、そのうち、ぼくは押しやられ、また別の人たちの輪の中に引きずり込まれ、を繰り返す。
こういうのがフランスの夜会スタイルである。
フランス人は好奇心が旺盛で、話し好き、議論好きなのだ。
でも、実はたいしたこと喋ってるわけじゃない。耳を傾けると、どうでもいい議論だったりする。
何を真面目に議論しているのかな、と思うと、明日の天気の話だったりする。それを一時間くらいずっと喋っている。明日になればわかることなのに・・・。
たぶん、二枚はチケットを販売することが出来たのじゃないか、と思う。
「カリンヌ、ありがとう。ぼくは仕事があるから、ここら辺でおいとまするね」
シャンパーニュを7杯くらい飲んだところで(飲み逃げ?)した父ちゃんであった。

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」



人疲れするタイプなので、(各種感染症も怖いし)長居は出来ない。だいたい、一時間ほどすると、胸の中心にあるカラータイマーがピコピコしはじめる。あはは。飲んだし、美味しいものをつまんだので、帰ることに。
楽しい土曜日の夜であった。
出不精な父ちゃんにとって、クリスマス前のいい思い出になった。
アドリアンが店の外まで見送ってくれた。
「じゃあね、ひとなりさん、夜道気を付けて帰ってね」
「ありがとう、アドリアン。また飲もうね」
アドリアンは、必ず、日本語で「さん付け」してくれるのだ。肩を叩きあって別れた。
ぼくにとって、アドリアン夫妻は大事な友だちなのである。いい夜であった。

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

※ こちらがカリンヌ。弁護士さん。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
25人のゲストを招き、店を貸し切り、ワインやシャンパーニュを次々にふるまったカリンヌ、いったいいくら使ったのだろう、と下世話なことを考えちゃいますね。でも、楽しい人生を生きているんだなぁ、と思います。23日にはバンド仲間たちと下町のピザ屋で父ちゃん主宰の忘年会をやる予定なんですが、お金かかりません。あはは。いろいろなフランスがあって面白いですね、ぼくはどこにでも潜り込んで楽しくやっています。ご安心くださいませ。えへへ。
ということで、22日、近づいてきましたよ。そんな父ちゃんが主催するパリのわが街を歩く、オンライン・散歩・ツアー。あ、今夜行った、ニコラのワインバーの前も通ります。カリンヌやアドリアンがうろちょろしているかもしれません。ゴールはマーシャルの八百屋になりますよ。野菜をたんまりと買います。一緒に野菜を選びましょう。サンタの格好をして待っててね、と先ほどSMSを送りました。あはは。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませー。

地球カレッジ

滞仏日記「ちょっとリッチな仏人の忘年会に招かれ、いろんなフランスを経験するの巻」

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。


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それから、パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

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