某月某日、フランス全土でクリスマスの飾りつけが整ってきた。
ぼくが住む村から車で２０分ほどの避暑地の広場には、綺麗なイルミネーションが取り付けられ、煌びやかな光りによる祝福が始まっている。
今は閑散期なので人がいないが、クリスマス前後から家族連れがパリなどからやって来て、賑やかになる。
こういう地方の町には、引退をした人たちが暮らしている。
クリスマスに家族が集まるのがカトリック国フランスの習わしなので、２週間後の１２月２４，２５日は子供たちを連れて若い親御さんらが大挙やって来る。
この風景も一変しているはずだ。
しかし、今はこの通り、タクシーを降りると、町の中心部、人っ子一人いない。
ただ、美しい飾りつけが広場を取り囲んでいた。

昨夜は友人のブリュノ、アリスに誘われ、チャールズの店で夕食をとった。
ブリュノもアリスもすでに引退をし、悠々自適の第二の人生を生きている。
多分、ぼくより一回り年上じゃないか、と思うが年齢をきいたことはない。二人はそれぞれの元の相手とのあいだにお子さんがいる。
彼らはカップルだけど、夫婦ではない。限りなく夫婦に近い関係なのだ。フランスには「パックス」という制度がある。
どういうものか、簡単に説明してみよう。
性別に関係なく婚姻関係を結べるので、最初の頃はゲイのカップルがこの制度を多く利用していた。
「結婚」とだいたい、同じ保障や権利が与えられる。
どちらかが先に死んでも、財産分与が結婚者と同じなのだ。
また、一般的な「結婚」は市役所にあらかじめ申請をし、承認者に見届けてもらわないとならない。 離婚時は弁護士を雇い裁判をしなければならないが、「パックス」の場合は、書類にサインするだけなので、手続きが簡単である。
結婚ほど厳密ではなく、時間も費用もかからないので、今は、若者を中心に、このパックス婚をする人が急増している。
もしくは、ブリュノとアリスのように離婚経験者で、双方に子供がいて、でも、一緒に暮らしだしたので、権利だけは夫婦に近いものを持っていたい、財産を分与しあいたい、と考える割と高齢のカップルが、このパックスを選んでいる。
もっといろいろと違いがあるはずだが、ぼくは不勉強なのでよくわからない。
ただ、ぼくの周りのカップルたち、夫婦だと名乗る彼らの多くが実はこのパックスだったことが最近わかってきた。
DSのライターさんたちの中にも実はフランス人男性とパックス婚している、していた人が２，３人いらっしゃる。※　今度、パリ最新などで詳しく記事にしますね。

「ぼくらは、結婚には疲れているので、パックスを選んだんだよ。すでに一緒に暮らしだしていたし、年だから、どっちかに何かがあった時に、国の保障を最大限有効に教授しあいたいじゃないか。パックス婚のおかげで、安心に繋がっていられる」
ブリュノが説明をしてくれた。
「子供たちも受け入れやすいのよ。彼らにとって、私とブリュノは強い絆のカップルだと思うと認めやすいのよ」
「なるほど」
「うちの娘はもちろん、ブリュノと会うけれど、義理のお父さんという感じにはならない。ブリュノも私の娘に対しては必要以上の責任を負わないの。割とそこはクールな関係。娘にとって父親は当然、別れた前の夫だから・・・。娘はブリュノのことを私の恋人だと思っている。でも、私たちは私たちのことを夫婦だと思っている。夫婦と名乗るかどうかは、本人次第であり、もう、そういうことにこだわらないのが、新しいフランスのスタイルなんだと思うの」
フランスの男たちは結婚をしたがらないので、有名だったが、コロナ禍になり、このパックスを利用して事実婚をする人が増えてきた。
「来週からメキシコに行くのよ。年明けまで」
「あらら、素晴らしい。クリスマスは家族で過ごさないの？」
「ぼくらは夫婦で過ごすんだよ。クリスマスは夫婦のために」

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
チャールズの料理はどれも天才的に美味しかったです。パリよりも食材が新鮮だし、長年、パリの高級レストランで修業をしてきたわけだから、味はパリよりも上・・・。腕のある料理人もパリを離れるようになりました。その土地の特産品と結びついて、新しいうまさが、登場しているのです。
さて、２２日、パリ中心部からぼくが長年暮らしてきた商店街や通りをめぐり、最終的にマーシャルの八百屋までいくオンライン・ツアーを開催いたします。パリのクリスマスの雰囲気を、一緒に愉しみませんか。参加されたい皆さん、詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックください。

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン（１１曲）」を聞き齧りしたい皆さん、こちらの再生ボタンをどうぞ～。※アルバムの予約も同時にはじまっています。「ZOO」はいきなりラテンのリズムで踊れます、聞いてみて・・・あはは。

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