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滞日日記「熱血とは言いながらも、夢に辿りついたんだとホッとした父ちゃん」 Posted on 2022/11/22 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、なんだか、不意に慌ただしくなった。
今、いっぺんにフランス各方面からメッセージが飛び込んできている状態なのである。
まず、プロモーターのベルトランは鬼の首をとった将軍様になっている。
今まで、連絡しても「ちょっと待て」しか言わなかったくせに、オランピア劇場の公式サイトのトップページに「TSUJI」の名が出たのを自分の手柄みたいに、笑、いや、凄いことだけど、今日出るのをぼくが知らなくて、カウントダウンも始まっているし、こんな感じになるんだって思ってもいなかったので、ぼくはまず、びっくらこいた。あへ。
というのも、三日ほど前に、ワッツアップのやり取りでぼくらは大揉めしたのだ。
彼の説明がよくわからないから、ぼくが何度も何度も訊き返し、やっと言っている意味がわかったので日本人らしく、「すまない、ぼくの仏語が酷いからやっと理解出来たよ」とベルトランの説明も悪いんだけど、百歩譲って、謝ってやったら、「あのさ、ライブ終わったら、ちゃんと語学学校に通った方がいいぜ」って送ってきた。こ、こいつ・・・。かっちーーーん。久々のかっちんであった。ぐやじー。

滞日日記「熱血とは言いながらも、夢に辿りついたんだとホッとした父ちゃん」



で、今日は朝から、チケット発売に必要なプロフィールのチェックや、ポスター、アーティスト写真のチェックなどが続いたのだ。そこに、ジャルパックさんが割り込んできた。来た!!! ジャルパック~。
パリのジャルパックさんとぼくのパリ事務所スタッフMMさんが「フランス以外からくる方々をケアするためのアシスト」を計画していた。日本滞在中のぼくの知らないところで、・・・。でも、ジャルパックって、懐かしいし、安心だよね。
つまり、日本の人がぼくのライブのチケットを買う場合、オランピアの予約サイトから購入しないとならないのだけど、仏語が分かる人はいいが、仏語が苦手な人のために、ジャルパックさんが代行をしたらどうか、という事務所側の提案に、ジャルパックさんがのってくれた、とそこまではとってもよかった。
購入代行と、困った時のケアなどをする、というのだが、そこから話が弾んだらしく、せっかくパリに来るのだから、何か他にもコースを増やしたらどうか、となったみたいで、「なんなら辻さんも顔を出して貰えないか」と言われて、えええ!!! 顔出す? 握手会? 父ちゃん、いいの? 63歳のアイドル・・・。 
勘違いの父ちゃん、そこに、パリの料理長さんから、
「今日のオランピアはこんな感じです」
と写真が届いた。へー、そっか、ここでやるんだね、パリのど真ん中じゃん。
ついに!

滞日日記「熱血とは言いながらも、夢に辿りついたんだとホッとした父ちゃん」



映画が完成し、アルバムも完成し、歯の手術も終わり、母さんが入院中で、この怒涛のような日本滞在の締めくくりに、いきなりチケット発売となったわけだ。
実は、オランピア側がチケットを発売するまでは何が起こるかわからないから、とベルトランに言われていた。
やれるとは信じていたけれど、半信半疑がずっと続いていたのだ。
まさか、いきなり公式発表になり、あんなポスターが出来あがって、明後日からチケット発売って、ひゃああ、こっちは宣伝体制すら出来てないところでの、公式サイト内でのカウントダウンまで始まって、あおられる、あおられる。
フランスって国はなかなか話が決まらないのに、決まると一気に動くから、マジ、焦る。
チケットの写真も届いた。5種類のチケットがあるみたいで、ゴールド席、(一部が)ゴールドVIP席、カテゴリー1,2,3、と続く。日本だとSS,S,A,Bということなのかな。
その説明も昨日受けたけれど、VIP席がどんなものか、・・・怖くて聞けない。
席数は約2000席で、まさに、オーチャードホールくらいの規模感かと思う。
でも、熱血はほんものだった。ぼくはぼくを褒めないとならない。マジで、父ちゃん、オランピアに立つのである。自分、63歳である。フレンチ音楽の殿堂で、エディット・ピアフも立ったあの舞台で、父ちゃんはパリ・バンドをバックに「ZOO」を熱唱するのだ。ううむ、有言実行とは、言ってはみたけれど、現実にできちゃうって、自分が一番、びっくりしちゃっているのだった。
いや、熱血に不可能はない、ということか・・・。

滞日日記「熱血とは言いながらも、夢に辿りついたんだとホッとした父ちゃん」



で、アルバムもたぶん、今までで最高のアルバムが出来た。
今日、ついに完成をしたのだ。
最初は「熱血」というタイトルにしたかったが、グーグルさんで検索かけたら「ホットブラッド」と出て、大笑い。これはおもろいけど、通じないなぁ、あはは。
で、熱血に通じる、日本人のおやじ感のあるタイトルを思いついた。「ジャパニーズ・ソウルマン」である。マジで、これにした。
アーティスト名、TSUJI
アルバムタイトル、ジャパニーズ・ソウルマン
いいね~。
ともかく、明後日、23日、フランス時間の12時、日本時間の20時からオランピア劇場のサイトでチケットの販売がスタートする。
すでに、フランス人ロック好きな人たちへの宣伝もスタート。年明けには宣伝マンがくわわり、本格的に盛り上げていく予定なのである。
ということで、皆さん、ご一緒に。
はい、「合言葉は、熱血~」

滞日日記「熱血とは言いながらも、夢に辿りついたんだとホッとした父ちゃん」



つづく。

息子の友人フェリックスのお父さん、パトリックから、「見たよ、オランピアのサイト」と連絡が来てびっくり。彼はロック好きだから、チケット買って必ず行くよって。嬉しいですね。やっぱり、オランピアだからこそ、観にいくよ、と思ってくれる人もいるみたい。満席にしてみたいなぁ。歴史的会場に負けないように、頑張りたいです。

地球カレッジ

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