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滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」 Posted on 2022/11/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ようやくその日がやって来た。
今日は、dancyu編集長の植野広生さんと父ちゃんが結成したお笑い料理コンビ「だんちゅうでござる」が23人(正式な人数)のゲストにフルコースをふるまいながら、その合間合間に漫談をやる、という凄い企画の当日、なのであった。あはは。
14時に神保町のキッチンスタジオに顔を出すと、尾身さんチーム(協力)&dancyu編集部の若者(編集者)らが準備にとりかかっていた。やや遅れて、大編集長が登場~。
「18時からの料理会に、14時集合って早すぎない?」
「いいや、辻さん、今日はだんちゅうでござるのお披露目ですから」
「おお、そうでしたね、編集長、じゃあ、練習しないと」
ということで、ジャガイモの皮むきとか、ジロール茸の掃除とか、ワイングラスやお皿選びとか、諸準備はスタッフさんらに任せて、ぼくらは、だんちゅうでござるポーズの稽古に最初の一時間を費やすことに・・・。あへ。
ぼくと植野さんは並んで立ち、
「だんちゅうでござる~」
と言って、両手を振り回し、だんちゅうでござる~、ともう一度叫んでは、おさるさんポーズを決める、という、60歳を超えた二人がやるようなことじゃないことに没頭したのであった。
息があってきたところでぼくらは厨房に並んで立った。
こちらがその練習風景である。でも、こういうことに情熱を傾けられる60代って、凄いかもね。
あ、植野さん、今月、ついに還暦! おめでとうでござる。

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」



アシスタントをやってくれた尾身さん、しばにゃん、えみちゃんの三人はぼくのディナーライブなどを長年手伝ってくれている料理研究家チーム。もう、10年来の仲間である。
離婚直後、ぼくはテレビで北斗晶さんと料理対決をしたことがあった。
その時のアシスタントが尾身チームであり、彼女らは植野さんとも長いお付き合い・・・、ぼくと植野さんを引き合わせてくれたのも尾身さんであった。
ある日、ぼくの目の前にマグロを担いだ男が現れた。それがdancyu植野広生編集長であった。
そのマグロを尾身さんの実家で、解体し、ぼくらはいきなり料理対決をはじめたのだ。
食べることは生きることを実践してきた者同士、気が合うことがすぐにわかった。
そして、ついに、お笑い料理ユニット、「だんちゅうでござる」が結成されたのであーる。
しかしてその実態は「笑い」をスパイスに美味しいものを追求する世界最強のお笑い料理コンビなのだった!あへ。
笑いながら、美味しいものを食べる時、人は必ず幸せになるからね。

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」

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14時から18時までぼくらはおやじギャグを連発しながら、がんがん、料理と向かい合った。
ぼくがアミューズ、前菜、メイン(魚)、デザートの四品。植野さんが前菜、メイン(肉)の二品を受け持った。
鍋もでかい。フライパンも何もかもでかい。
ぼくは二つのフライパンを同時に使って、23人分のイカのトマト煮込みを作ったのであーる。
植野さんは北海道から届いたという珍しい豚肉で、美味しそうなローストポーク(?)を作っていた。うまそ~。
こちらが、今日のメニュー! どうじゃ。

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」

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20人以上に出すフルコース。間も開けず、タイミングよくどんどん出していくのは本当に馬力がいる。
尾身さんやサーヴをやったdancyu編集部の若者たちの協力に感謝したい。
なにせ、ぼくと植野さんは料理がある程度出来ると、さっとステージに戻って、アドリブでお笑いをやるのだから・・・。あはは。
ぼくは欧州の美味しいものやワインについて語り、植野さんは来年のdancyu祭りの豊富などを楽しそうにカタルーニャしていた。
で、メインイベント!
「ぱんぱかぱーん、ぱんぱんぱん、ぱんぱかぱーん」
「なんでやねん」
「せーの」
『だんちゅうでござるー』
「はい、もう、こんな季節になってしまいましたなー、変質長」
「誰が変質長やねん」
「ジビエの季節だし、これからはうまい牡蠣が食べごろでんなぁ、ブルターニュの牡蠣~」
「今日、辻さん、白イカでしょ? 牡蠣ないやん」
「ありゃあ、それはイカん!」
「失礼しましたー。せーの」
『だんちゅうでござる~』
って、還暦過ぎたおやじがやることか、なのだが、これが笑いの渦で、しかも、美味しいの塊で、皆さん「めちゃ美味い」と大騒ぎしながらの、爆笑料理会、盛り上がらないわけがないのであった。めでたし。
苦しいこと辛いことが多い時代だからこそ、せめて美味しいで乗り切りたい。
途中から、ぼくと植野さんがゲストの皆さんにワインを注ぎに回ったり、料理を運んだりしはじめることに・・・。
作った本人が料理を運んで、どうですか、とか聞いちゃうところが「だんちゅうでござる」会の凄いところかもしれない。
ともかく、終わったのが20時過ぎだったので、6時間以上の大仕事となった。
いや、これも、もう、ある種の熱血でしょう。
真剣に遊びながら人生を楽しむ。日々を豊かにする最大のポイントかもしれない。
ぼくは自家発電で明るめに生きるのだ。
皆さん、合言葉は熱血~!

滞日日記「ついにお笑い料理ユニット、だんちゅうでござる、がデビュー!」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
作ってる方は、味見はすれど、何も食べてないわけで、今、これを書きながら、腹減った、となりました。おー、そうだ、今日は何も食べてないじゃないか。実は、ちょっと、料理会の後半、弟から電話があり、会が終わり次第、父ちゃんは一目散に宿へと戻らなければならなくなったのです。このことは明日またご報告しますね。とまれ、腹が減ったので、これからコンビニへ行き、夜食というか、今日はじめてのご飯を買わなくっちゃ~。あはは。
こんなもんですよね、人生なんて。

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