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退屈日記「ダックスフンドがパリを大行進するという凄いイベントに三四郎が」 Posted on 2022/11/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、先生~、と弟子の長谷っちからメッセージが入っていた。
眠気眼をこすりながら、携帯を覗いて、一気に目が覚めた。
「実はさんちゃんですが、今度、パリのダックスフンド・フェスティバルに出ることになりました。公園で知り合ったダックスフンド協会の副理事の方に(この子にはぜひ出て貰いたい)とお誘いを受けまして、時期も迫っておるので、長谷川の判断で勝手に入会させて頂いたという次第でありあす。というのはベアトリス副理事がとっても良い人でして、さんちゃん、とっても懐いておりますし、大行進をやるんですよ、大行進。パリの端から端へ。先生、すごいことじゃないですか~。申し込みは先生のお名前をつかわせてもらいました」
ええええ、と驚いた父ちゃん。
「どういう協会?」
「いつ大行進? どんな大行進?」
とメールしたのだけど、8時間の時差があり、パリは深夜なのであった。
そうか、向こうは深夜だ。明日にならないと何が起きたのか、よくわからない。三四郎の写真は数枚届いていたが、どれも、楽しそうである。
新しい地区でも、仲間が着実に増えているようだ・・・。
大行進って、ダックスフンドばっかりでパリをパレードするということだろうか? それが本当なら、すごい。NHKのパリごはんが飛びつきそうな話だな、と思った。あはは。あれ、いや、待てよ。

退屈日記「ダックスフンドがパリを大行進するという凄いイベントに三四郎が」



「時期も迫っておるので、長谷川の判断で勝手に入会してしまったのです」
ということは、もう、まもなく、そのフェスがあるということで、ぼくの帰仏に間に合わないから勝手に申込をしたということで、長谷川が自分で三四郎を連れて練り歩くつもり、ということの事後報告なのだろうか???
「えええ、ずるーい、行きたい~」
三四郎と一緒にパリを横断したい~のである。
ぼく無しでそのイベントをやるのは悪夢だ。ますます、ストレスになってしまう。
でも、三四郎は友だち(遠い親戚)がいっぱい集まるので、喜ぶだろうから、どちらにしても参加させてやりたい父ちゃんなのであった。
「ダックスフンドのパリ大行進」という響きだけでもウキウキしませんか?
確かに、パリにはいろいろな種類のミニチュアダックスフンドがいる。
髪の毛の短いダックス、髭の長いダックス、白い色のダックス、三四郎のようにロン毛のダックス、などなど。
しかも、サイズ感もバラバラで、普通のダックス、ミニチュアダックスフンド、それからカニヘン?とよばれる超ミニチュアのダックスまで大中小、様々なのである。
あ、もっと小さいのもこのあいだ、いた。ネズミかと思ったらダックスフンドであった。
そういうのが、セーヌ川河畔とか、シャンゼリゼ大通りを大行進する、うわあああ、それ、やばすぎるやろ、行きたい~。
「長谷っち、そのフェスはいつなの? ぼくが帰ってからにできないよね?」
と無茶なメッセージを送り付けた、抑えの利かない父ちゃんなのであった。
「先生、出来るわけないでしょ」
と足蹴にされるのはわかっているが、東京で悔しいので、メッセージを送って置いたら、な、なんと、ぼくが送ったメッセージに、イイねマーク? が付いた。うおお、起きてる。
でも、半分寝てるけど、ぼくが騒いでいるので、小さな「いいね」スタンプだけつけたのだろう。ますます、意味がわからなくなって、悶々としてしまった。
ともかく、ダックスフンド・パリ・大行進の続報を待とう。
やれやれ、参加したいよー。

退屈日記「ダックスフンドがパリを大行進するという凄いイベントに三四郎が」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
昨日、シマちゃんに、ダックスフンドの耳栓を貰ったのです。胴の途中で別れていて、それを耳の中にいれるのだけど、グッドデザイン賞、なんだそうで、可愛かったです。仕方がないから、三四郎を耳の中にいれて今日は仕事に集中したく思うのでありました。

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