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滞日日記「東京で探した、父ちゃんがいつもパリで買うワイン&おつまみ」 Posted on 2022/11/03 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、外食が続き、ここ最近、煮詰まっている。やっぱ、チーズとかワインとかちょっといつものやつが味わいたくなった。
そうなると、いつも行くコンビニなどでは材料が調達できないので、快晴だし心地よい日和だったこともあり、タクシーをつかまえ、「明治屋」と「成城石井」まで足を延ばした。
日本についてずっと焼酎とビールだった。
わざわざ日本にいるのにフランスワインなんか飲めない、と前の日記で書いたのだけど、それは間違いであった。すいません。←素直。
フランスでは滅多に飲めない焼酎に興奮していたのだけど、滞在も半月を超えたところで、無性に美味しいワインが飲みたくなったのであーる。
前に一度、とあるワイン屋で試したブルゴーニュワインの「アリゴテ」がリーズナブルで美味しかったことを思い出し、まずそこに立ち寄った。
「すいません。あのですね、ここで前に買ったワインが美味しくて、まだ、あります?」
「これですか?」
「おおお、それじゃああ」
ということで何本あるか聞いて、全部、買い占めた。といっても4本である。
3日で一本として、12日間で飲み切ることが出来る。1日、3杯ということだ。
実は、アリゴテは個人的に超苦手なワイン。パリでは絶対避けるワインの一つで、つまり、酸味が強く、フルーティだから、ぼくには向かない。
ぼくは樽香がある程度感じられてセック(ドライ)なワインが好みなのである。←面倒くさい野郎であーる。
ところがこの生産者、ベルチエさんのアリゴテは酸味無し、ドライ、多少フルーティではあるが、樽香もほどよく、とにかくめっちゃバランスがいい。
しかも、この手のワイン、日本だと数千円はするのだけど、3500円(数千円か)というお値段、もちろん、高価だけど、グラス7,8杯は一本からとれるので、一杯あたりにすると、ちょっと待って、計算機、ええと、437円なのである。
「437円じゃああああ、どうじゃ」
これを高いと思うか安いと思うかは分かれるところだろうが、間違いない味で、父ちゃんのおすすめで、笑、うひゃひゃ、そう思うと、安いと思う。
ホテルで同じものを飲むと、1500円とか2000円くらいとられるかもしれないですねぇ・・・。
偽物じゃない。しかも、有機系ワインなのである。安心。

滞日日記「東京で探した、父ちゃんがいつもパリで買うワイン&おつまみ」

※ この生産者のアリゴテ、マジ、美味い。ご覧ください。買い占めたので、売り切れ、になったのだった。すいません。

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※ 父ちゃんの好きなブリーチーズ。とろとろにして、食べるとやばいっす。明治屋さんにもあったし、これは探すとけっこう、見つけられます。



ワインをゲットしたので、成城石井に行き、チーズを探した。
ここはフランスチーズがかなり充実しているし、とくに癖のないブリーが、いつも、食べごろである。
このブリーは食べるタイミングがとっても大事なチーズ。食べるずいぶん前に冷蔵庫から取り出しておかないといけない。
トロっとしたところをクラッカーやバゲットにのせて、ワインと交互にやる、くううう~。これが、たまりましぇーん。
「ウマ~~い」
まよわず、ブリーを一つゲットした。うきうき。
となると、バゲットなのだけどこれだけは日本で満足できるものを見つけるのは難易度が高い。
ぼくがおすすめするのはブラッスリー・VIRONさんのバゲット。ようはフランスと日本のバゲットは製法が同じでも、水と小麦が違うので、同じ味にはならないのである。
そこを老舗VIRONは上手に模索して、全く同じではないけれど、いい焼き上がりを実現されている。皮パリ中もちもちなのだ。
これとブリーとベルチエさんのフランスワインは、実に文句がない。

滞日日記「東京で探した、父ちゃんがいつもパリで買うワイン&おつまみ」

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おっと、生ハムを忘れていた。生ハムコーナーも充実している。スペインので切り落としがあった。いいね。そして、バターだ。
おお、やっぱりあった、エシレ。おおおお、高い! 
フランスの10倍もするのじゃ手が出ない。ぼくがいつも愛用しているセルドゥメールの発酵バターもあったが8倍程度したので、諦めた。
でも、だいたいのうまいものが揃っている。そこは足繁く通って、特売などを狙いましょう。数倍フランスより高いのはやはり仕方ない、このご時世だし、その分、焼酎が安いし、和食材が安いのだから、ぼくからすると羨ましい。
たまには、海外旅行をしたと思えば、高いエシレも納得。なんたって、国際線、今は燃料チャージがめっちゃ高いから、空輸ものも高くなっても仕方ないのである。
おフランスなアペロとかもしたいので、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、今日は贅沢をすることにした。えへへ。
仕事が終わったので、窓辺の机にこれらを並べて、ぼくはアペロとあいなった。
自分に向けて、
「乾杯!お疲れ様でしたー」
と言って、ちょっとパリを気取った父ちゃんなのでした。

滞日日記「東京で探した、父ちゃんがいつもパリで買うワイン&おつまみ」

※ フランスマダムに大人気、ジェルブレも売ってた!



つづく。

今日も読んでくださってありがとうございました。
あ、それからフランスマダムが大好きなビスケット、ジェルブレもいっぱい売っていたので、感動したのでした。さすが~。
美味しくて、バランスのいいワインを見つけるのは本当に多変ですね。都内各所に最近は美味しいカーヴ(ワイン屋さん)が出来ているので、そこで試飲をさせてもらい、買うのが一番確かだと思います。ぼくはカーヴの主人と仲良くして、実際、味わってから買うようにしています。苦手だった「アリゴテ」がこんなに美味しく飲むことができた東京のワイン屋のレベル、高!
さて、お知らせです。
父ちゃんの料理レシピ・エッセイ本「父ちゃんの料理教室」が8刷決定しました。なんか、じわじわっと息長く読まれるの嬉しいです。大和書房刊。
そして、明日はいよいよ、パリごはん、再放送。ぼくは必ず生でみます。初めての経験ですが、テレビに噛り付いてみますので、一緒にカウントダウンしましょう!!!
11月3日、文化の日の夕方の放送になります。
●再放送「ボンジュール!辻仁成のパリごはん〜 2022 夏〜」
【BSP】 11月3日(木) 午後4時35分~〜5時34分

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