JINSEI STORIES
滞仏日記「日常を取り戻しつつパリの朝、三四郎とカフェで過ごせる幸福」 Posted on 2022/08/24 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、日常が戻って来た。
パリに戻って来て4日目。昨日は、朝、昼、夕方、夜と三四郎を4回散歩に連れていった。
ジュリアのところでの合宿の成果が出ており、外でピッピとポッポ(おしっことうんち)がちゃんと出来るようになっていた。
朝の散歩ではポッポを三回もしてくれて、おおじょんべんも一度、
・・・父ちゃん、嬉しい。
カフェのテラス席に並んで座り、落ち葉が積もる並木道を行き交う人々を眺めながら、父ちゃんはカフェオレを飲んだ。
ああ、やっぱり、パリのコーヒーは世界一であーる。
三四郎はいい子にしているので、おやつを与えた。
他の犬たちとの共同生活から解放されて、なんとなく落ち着きを取り戻しつつある。父ちゃんに寄り添い、幸せそうだ。
カフェオレ、最高なのじゃ。パリだァ・・・。
11時にブリュノに紹介してもらった引っ越し業者さんが見積もりにやって来た。息子の引っ越しを依頼する業者さんである。
4階から2階に引っ越すのだけど、引っ越し代金が700ユーロとちょっとイメージしていたよりも高め。
でも、ブリュノの紹介だし、時間もないので、ここでお願いすることになりそうだ。
ぼくの方の引っ越しは量が多いので、さて、どうしたものか、と悩んでいる。
まだ銀行保証のチェックが遅れているので、正式な契約はこれから、という感じだし、大丈夫なのかなァ。
昼の散歩はいつもの公園を走らせ、ぼくは行きつけのカフェでウフマヨを食べた。
マヨネーズの中にトリュフが入っている。これとパンとワイン。
まさに日常であーる。
ぼくの足元に三四郎がいて、伏せをして、遠くを見ている。
長閑な昼下がりであった。
昼寝のあと、机にむかい、ちょっとだけ仕事に没頭・・・。
三四郎が退屈して何かを噛みはじめたので、ボール投げなどをして、遊んであげた。
それから、買い物兼散歩に連れ出した。
スーパーで顔見知りの店員たちと「やあ、久しぶり」とあいさつをかわす。
三四郎、中には入れない。
迎えの八百屋にマーシャルがいたので、(こちらは三四郎を抱えていれば入ることが可能)、茄子と葱を買った。
夜、日本から持ち帰った「すみれ」ラーメンを食べる予定なので、それにあう肉茄子味噌炒めを作ろう。まさに日常であーる。
食材を冷蔵庫にしまい、コーヒーをいれて、キッチンで立ち飲みした。ああ、幸せ。
19時半に三四郎に夜ご飯を与え、それから夜の散歩に連れ出した。
教会の周辺を歩いていると、ピエールとばったり出くわした。
夏はニースで過ごしたようで、小麦色の肌になっていた。
秋にアルバムのレコーディングをするので、配信、手伝ってくれ、とお願いした。
いいよ、と二つ返事。
ニースの避暑地に金持ちのロシア人がいっぱいいたよ、と肩を竦めた。制裁はまるで聞いてない、感じだね、とぼくも肩を竦めてみせた。
むしろ、欧州のガス代金は跳ね上がりつつあるし、変な世界だよな、と渋い顔。それにしても、誰一人、マスクをしていない。
コロナはどこに消えたのだろう。まことに、不思議な世界である。
家に帰り、肉みそ茄子炒めを作って、すみれのサイドディッシュとした。めっちゃ、美味かった。
三四郎を寝かせ付け、ぼくはちょっとだけ仕事をしてから、消灯した。
つづく。
今日も読んでくれてありがとう。
秋にレコーディングをやる予定でして、プロデューサーのロブソン(ブラジルにいる)とメールでやり取りしています。前作、「コトノハナ」以降ではフルサイズのアルバムになりますね。あ、「コトノハナ」も、ロブソンのプロデュースでした。今回はヴァイオリンのマリオも制作に参加。パーカッションのジョルジュ、ピアノエリック、ベースのケンタウロス、と辻バンド総出演で頑張ります。10月くらいに、ECHOESとソロ時代の曲で構成されたセルフカヴァーアルバムを作る予定で、現在は選曲中、お楽しみにね。それから、横浜ビルボードのセカンドの映像をこれから編集し、YouTubeにアップする予定でいます。なかなかいいライブ配信になるんちゃうかなァ、こちらも、お楽しみやねー。9月中に配信出来ればいいですが・・・。来年、5月にフランスで勝負に出るビッグ・コンサートをやる予定なので、音楽周りがにわかに忙しい、パリの日常となっております。NHKの秋冬ごはんの制作も9月からスタートします。今回は秋冬の美味しいを網羅。最大のイベントとしてはクリスマス時期に、マーシャルとランディスの市場に乗り込むことでしょうか。豪華なクリスマス食材を買いに行く予定なので、お楽しみにねー。レコーディング風景もちょっとだけ、お届けします。えへへ。
※、締切日迫る。9月2日です!!!