JINSEI STORIES
滞仏日記「なんと北極の中心を通過して、ぼくを乗せた飛行機はパリに着いた」 Posted on 2022/08/22 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリに着いて、三四郎と再会を果たした。
夕方の散歩に出たはいいけど、この夏の疲れが押し寄せ、ふらふらしてしまい、行きつけのカフェに飛び込んでまずは栄養補給(泡とワイン)、笑。は?
ワインのせいで、ますます、ふらふらになってしまい、自宅に戻って三四郎を抱きかかえたまま長椅子で爆睡してしまった。あはは。
飛行機の中では一睡もしないで、映画の編集作業などをやっていたので、時差もなく、フランス時間の22時には眠くなって、…見事に寝落ちした父ちゃんなのであった。
サンシーはとってもいい子で、ぼくの腕に飛び込んできて、べったり~、(もう離さない、という感じである。NHKの方に頂いた噛み癖直すおもちゃを、お土産だよ、と与えた)。
一回り痩せている気がする。
ジュリアのところで数匹の犬たちとの共同生活、(おのおのの親が餌をジュリアに渡しているのだが)、想像するに、三四郎はそれを別の犬たちに横取りされていたのではないか、・・・。
というのは、三四郎の餌はちょっと高級食なのである。牛と羊が混ざっている。
この子は、図々しいところもなく、ちょっとナイーブな子なので、大型わんちゃんたちが、三四郎のを食べていても不思議ではない。
そういうことを想像すると、最初からマントさんに預けておくべきだったかな、激しく反省をした。
まあ、ちょっと落ち着いてから、今後のために、分析をしたい。
ともかく、筋肉がついて、スマートになった三四郎、体重はそこまで落ちていないので、このスマートさを維持させながら、来週、いつもの獣医さんとも相談をして、体調管理をやり直すことにする・・・。(獣医さんもバカンス中)
ところで、今回のフライトは、このウクライナーロシア戦争の影響があり、飛行コースが今までとは違うところがとっても面白かった。
行きは中東経由だったが、帰りは北極を通過した。
窓際の席だったので、ずっと眼下に広がる広大な氷河などを見て、興奮し続けた父ちゃん。
衛生回線を使ってWi-Fiは繋がっていたのだけど、途中から途絶えたので、調べたら、なんと、北極を通過中であった。
ぼくを乗せたJAL45便はアラスカ方面に北上し、そのまま北極のど真ん中へと移動。グリーンランドやアイスランドを通って、欧州に入るコースであった。
通常12時間程度ですむ飛行時間が少し長くなる。13時間30分かかった。
それでも、予定時刻よりは1時間早く到着したのだ、パイロットさん、ありがとうございます。
モニター画面に飛行進路が出ていて、見知らぬ都市の名前や、山とか川の名前を、いちいちネットで調べながらの空の旅となった。
真っ白な雪に覆われた世界が出現した。パトラ氷河と出ていたので、ネット検索をしたら、アイスランドの氷河だった。
欧州でも最大級の一つで、見下ろすと、雲間に白い世界が広がっている。凄い。
そこから2時間弱で、ぼくを載せた飛行機はフランスに着陸するのだけど、ランディングが美しかった。なんとも、雄大な空の旅であった。
※ そして、飛行機がシャルルドゴール国際空港に到着する映像をどうぞ!
昨日まで映画撮影をしていた、と思っていたら、もうパリの自宅の机でこの日記を書いているという、この不思議。
世界というのは広いのか狭いのかわからなくなる。
ぼくはあまり、移動を苦痛に感じない、性格なのかも・・・。
一番最初に飛行機を降り、勝手知ったる空港を一番で通過し、快晴の外に出た。在仏20年なので、えへへ。
タクシーに飛び乗り、自宅の住所を伝えた。
そこはもう、博多の中洲、ではなかった。パリ市である。
自分の街で降りた。バカンス中だし、日曜日だし、人が少ない。
日本はコロナ感染が大変なことになっていたが、驚くべきことに、フランスはコロナが終息しているかの、空気感。マスクを付けて歩いている人など一人も、実に、一人もいないのであーる。
むしろ、付けている人がいたら、陽性者と思われるかもしれない。
日本に行ってるあいだに、パリが変貌していた。
パリの感染者数、500人程度であった。(薬局もあいてないし、ね)
さてと、今日、この月曜日から、ぼくは忙しくなる。
引っ越し、新しい生活へ向けて、三四郎と、舵を切らないとならない。えいえいおー。
つづく。
今日も読んでくれてありがとう。
真っ先にぼくが向かったのは、我が家のキッチン、あまりにも懐かしくて、顔がほころんでしまいました。今日は、何かキッチンで作るんだ。そう思うと、疲れが癒されていきます。やっぱり、自宅、いいですね。三四郎と散歩をし、ごはんを作って食べて、ぼくは日常を取り戻しますよ。
滞日日記から滞仏日記に変更していること、お気づきでしたか? えへへ。
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