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滞日日記「ついに、三四郎エプロンが出来上がってきた!!! かわいいじゃないの~」 Posted on 2022/07/28 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、三四郎エプロンが出来上がってきた。
実に素晴らしい出来栄えに父ちゃんは大満足なのであーる。
特別な素材を使い、デザインは和田デザイン室さんが担当され、色もぼくの大好きなモスグリーン風、三四郎のかわいいイラスト入り、ふふふ、いかがであろう?
サイズはL,M,Sと三種類あるので、老若男女問わず、誰でも、着ることが出来るぞよ。
お値段、いくらがいいかなぁ、いくらでもいいけど、奥様、おいくらでございましょう!?
その前に、まずは、自信作をご覧頂きたい!!!

滞日日記「ついに、三四郎エプロンが出来上がってきた!!! かわいいじゃないの~」

滞日日記「ついに、三四郎エプロンが出来上がってきた!!! かわいいじゃないの~」



というのは冗談で、
これは、帝京大学名誉教授の和田先生の奥様、麻理さんが娘さんと一緒に制作された非売品なのであーる。
麻理さんは、毎日、この「滞仏日記」を読んでくださっているのだそうで、和田先生ともども、ぼくの日常にやたらと詳しい。
「辻さん、マスク90枚、日本に、持って来られてるんですよね。FFP2」
「あ、はい」
「三四郎君は、ジュリアちゃんが面倒みているんですよね。毎日、森にお散歩!」
「え、あ、はい(たじたじ)」
「息子さん、アパート詐欺にあったんですってね」
「ええ、あ、そうです」
この日は、帝京大学の冲永理事長が呼び掛けた「父ちゃんお帰りなさい夕食会」で、とっても広い広間に5人、距離をとっての安全な食事会なのであった。
すると、いきなり、麻理さんが、ぼくの日常に迫る勢いで、次々、日々の話題をふってきたので、超びっくり・・・。
「毎日、読んでいます」
と和田ご夫妻が言うので、理事長だけ、話について来られず、微妙な孤立感・・・。
やばい・・・。
ぼくが「コロナが落ち着いたら、帝京大できちんと文学を教えたい」などと話題を理事長向けに進めようとするのだけど、そうすると、麻理さんが横から、
「そういえば、息子さん、大学合格おめでとうございます」
などと矢を放ってくる・・・。あはは。
「あ、ありがとうございます」
「補欠の大学は残念でしたですね」
「え、あ、はい~」
「アパルトマンもついに決まったのですね。広いお部屋、良かったぁ」
「ええええ、そんなことまで」
理事長の目が点になり・・・。むむむ、すいません、気まずいムード・・・。
和田ご夫妻はなんでも、横浜ビルボードのライブ・チケットまで購入されているとかで、
「先生、12日の夜の方に妻と行きますよ」
と名誉教授、自ら言われるので、めっちゃ、名誉なことであった。
「ありがとうございます。もうしわけありません。しかし、よくチケット手に入れることが出来ましたですね」
「そりゃあ、ビルボードの会員になって、ゲットしたんですよ~」
「おおおお、マジですか~」
なんでも、麻理さんは、ぼくがオールナイトニッポンの月曜深夜の担当をしていた時代、ニッポン放送で「玉置宏の笑顔でこんにちは」という番組の曲アナさんをやっておられたのだとか。
ご夫婦ともに、やたら声が通る二人で、ただものではない感、半端なかった。
理事長先生は、お連れしたお二人がとにかく、ぼくの素性に詳しいので、目がずっとまん丸のまんま・・・。微笑みながらも、この空気に、深まる孤立感。
でも、優しい人だから、ずっと微笑んで聞いてくださっていたのであーる。

滞日日記「ついに、三四郎エプロンが出来上がってきた!!! かわいいじゃないの~」



ということで、麻理さんが、エプロンを取り出したので、とたんに話題が三四郎方面へと、・・・。
ぼくもさすがに、このエプロンの出来栄えには驚きの声を張り上げずにはおられなかった。
思わず、おおお、と叫んだ父ちゃん。
和田ご夫妻はしてやったりの笑み・・・。
いつかは、作りたいと思っていたのだけど、こう、来たかぁ、あっぱれ。完璧な出来栄えであった。
しかも、すっぽりとかぶって、後ろのボタンでしめる高級タイプなのである。
三四郎にずっと会ってなかったので、思わず、ググっときてしまった父ちゃん。やばい、涙が・・・。理事長先生がぼくの斜め前で、怪訝な顔付きで、三四郎の絵をじっと見ている。
「あ、最近、老後を見据えて、わんちゃんを飼ったんです。息子も大学に入り、ぼくは田舎に引きこもる予定なのです」
「は~」
和田ご夫妻が三四郎の話へとさらなる駒を進めてくるので、ぼくは必死で教育論の方へと話を戻したいのだけど、これが、なかなか難しかったのであーる。
最後は、もう、どうにでもなれ、と思って、三四郎との出会いを理事長に語りつくした父ちゃん・・・。あはは。
それでも最後の最後に、いつか、文学部のゼミを、という話になった。
「ああ、ゼミ、持ちたいです。少数精鋭の文学部の学生たちと向き合いたいです。ぜひ、ぼくからもよろしくお願いします」
という話で一件落着、なんとかかんとか、面目躍如なり。
美味しいお食事(鰻でした!)を食べて、皆さんとお別れしたあと、父ちゃんは宿で、さっそく、エプロンをまとい、記念撮影。
これがめっちゃ似合う、馬子にも衣裳ならぬ、爺さんにも衣裳な状態で、笑いしか出てこないのであった。

滞日日記「ついに、三四郎エプロンが出来上がってきた!!! かわいいじゃないの~」



今日もさっそく、このエプロンをまとい、昼ごはんを作って食べた父ちゃん、いやあ、三四郎が胸の中心にいてくれるので、寂しくないのだぁ。
これは実にありがたいエプロンであった。
和田さんご夫妻、娘さん、ありがとうございました。
大切に使わせてもらいますね。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
それにしても、いろいろなところにブログの読者さんがいらっしゃって、ぼくよりも、ぼくのことを知っているところが驚きで、うかつなことは書けないなぁ、と思ったのでした。この辺の匙加減がお料理くらい難しい、日記エッセイなのであります。
さて、今日、28日は、夕方18時半より、都内某所からオンライン・講演会を行います。最新技術を駆使した、最高のオンライン設備でお届けしますので、そちらもお楽しみに。父ちゃんは、エプロンをかぶって登壇したいところですけど、ラフな姿でやらせて頂きますので、お付き合いください。(三四郎は都合により、欠席です)
一生に一度は小説を書いてみたいあなたに、父ちゃんがどうやって作家になったのか、その原点を語りますよ。原点からの熱血です。
詳しくは、地球カレッジのバナーをクリックくださいね。

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