JINSEI STORIES
滞仏日記「ボンジュール、春ごはん、無事に放送が終わり、皆さんに感謝を込めて」 Posted on 2022/06/18 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、まずは、日本時間昨夜のNHKBS「ボンジュール! 辻仁成のパリの春ごはん」が無事に放送されたというのを、ツイッターの返信欄で読み知った父ちゃん、(とりあえず)ホッとしたのであった。
これはディレクターの義和さんや制作にかかわった皆さんの努力のたまものなのであろう。
それに、この春ごはんの撮影中にはわからなかったことだけど、視聴者の皆さんは息子が大学に合格していることをすでに知っている上で、ご覧になられたわけで、そういう不思議な見方が出来るというのも、この番組の面白いところかもしれない。
実は、現在進行中の夏編の撮影中に、不意に息子から合格の知らせが届くのだが、その瞬間、ぼくはたまたま三四郎をドッグトレーナーのジュリアの家まで預けに行っていた途中で、普段であれば自撮りなのにその時はカメラマンが同行していて、ぼくのタダならぬ興奮ぶりに、わずか数十秒だが、カメラが回った。
ぼくと息子のやりとりが撮影されており、それを使うかどうかは別だけれど、そんなこんなも、奇跡と言えば、奇跡が続いて、この番組は出来上がっているのであーる。
よくもまあ、ロックダウンから大学合格まで辻家の裏側がすっぽりとカメラにおさめられてきたことか・・・、と驚くばかりじゃないか。
※ フランスは猛暑、パリは37度、田舎も36度越えをしている。なので、手作りアイスコーヒーがうまい!!!
しかし、ぼくなんかよりも、うんと苦しかったのは息子なのである。
ぼくは親だから、子供を育てるのは当たり前なのだけど、こういう親のもとに生まれて、歯を食いしばらなければならなかった、息子は大変だった。
そして、大学に合格するわけだけど、これも、奇跡というしかない。これまで批判とかもけっこう受けてきただけに、その瞬間、父ちゃんは天にも昇るような気分であった。
毎回、これが最後と思いながら、撮影をしているのだけど、皆さんからいい反応があると制作した者たちはみんな嬉しいのじゃないか、と思う。あの恐るべき制作会社社長のLさんまでもがね・・・。いひひ。
ところで、ぼくは日本を離れ長いせいもあるけれど、ぼくの知り合いの高齢化も進んだからか、不思議なことに「テレビ、見たよ」という連絡がほぼ無かったのにはびっくりであった。笑。ま、あたりまえか・・・。視聴率とかあるのだろうか・・・。
誰か一人くらいは、連絡があるかと思ったのだけど、ないので、逆に、不安になった父ちゃん、62歳であった。
一方で、友だちがどんどん少なくなっている。ぼくは浦島太郎のような存在なのだ。
日本で今、何が起きているのか、ヤフーニュースが海外で見られなくなって、誰が人気なのか、とか、どういうものが流行っているのか、まったく分からない。
「Vチューバーが凄く稼いでいる」というのを今朝、小耳に挟んだのだけど、それが何かも、もはやわからない・・・。
人生の三分の一はフランスで生きてしまった。
息子は日本人なのに、人生の100%をフランスで生きている。
この先、どうやってぼくらは生きていけばいいのか、よーく考えないとならないことかもしれない。三四郎のことも、一緒に・・・。
そういえば、内見をしたアパルトマン、まだ返事がない。不動産屋に連絡を入れたら、壁の水漏れ痕の修復にどのくらいかかるか検討中、という返事だったが、賃貸情報を覗いたら、「契約済」と書かれてあった。
お!!!
思わず、ガッツポーズの父ちゃんである。
しかし、水漏れの修理具合によっては、引っ越しのタイミングが大幅にずれ込む可能性もある。
ま、焦ることはないので、しっかりと直してもらってから入れれば、と思う。(またもや、水漏れで、気がかりもないことはないのだけど、それ以上に素晴らしい物件なので、気にはならない。と自分に言い聞かせている・・・)
先ほど、田舎のアパルトマンの工事責任者のジェロームがやってきて、先の台風によって起こった壁の修繕の見積もりをしてもらった。
マレでのライブの動画を送っていたので、顔を出すなり、
「ライブ、行きてー」と
叫んでいたジェロジェロ。嬉しいね~。
秋にはここの壁も塗りなおすことになる。
フランスでの生活はこういうことの連続なので、夢を壊すわけではないけど、フランス生活にあこがれている皆さん、どこで生きても大変は大変なのだよ、というお話。
たぶん、うまくいけば、ぼくは秋に引っ越すことになるだろう。
日本での仕事が終わったら、ぼくを待ち受けているのは引っ越し、である。
その前に、「父ちゃんのパリごはん」シリーズは終わりを迎えることになる。引っ越しの準備の映像とかで、最後はめっちゃ寂しく終わらせたい・・・。あはは。
つづく。
ということで、今日も皆さん、読んでくださり、ありがとう。
今、この間のマレ地区でのライブ映像(ビルボードチケットを入手できなかった皆さんのための動画第二段)をYouTubeに流し込んでいるので、あとで、適当にご覧ください。
マレ地区ライブの冒頭部分、26分間になります。正しい聞き方は、映像を見ないで、レコードがわりに、音だけ楽しむのがいいかもしれません。
ウイスキーとか舐めながら。。。
さて、お知らせです。
6月30日はマガジンハウス社から、いよいよ「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」が発売に。愉しみ~。
そして、
6月26日に、地球カレッジ、前期エッセイ教室の最終回、総まとめ編です。
エッセイを書くのが大好きな人、文章家を目指しているあなた、ブログをやっている皆さん、ぜひ、ご参加ください。課題もあります。
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