JINSEI STORIES
退屈日記「首輪とハーネスどっちがいいのか論争、ジュリアに聞いた」 Posted on 2022/06/07 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ちょっと前に、ドッグトレーナーに「ハーネスより首輪が三四郎はよく歩くようになるはずですよ」と言われ、ハーネスから首輪に戻したら、確かによく歩く、ことが分かったと日記に書いたところ、賛成反対さまざまな意見があった。
もともと、ボーベさんの犬の訓練学校で言われたことだったが、なぜ、そうなのか、きちんと確認していなかったし、言葉をうのみににしていたので、今回、三四郎をジュリア(ドッグトレーナー)さんの家に三日間預けた後、お迎えの時にきちんと聞いてみたのである。
すると、ジュリアは、
「三四郎には首輪の方がいいとおもいますよ」
と改めて、提案をしてくれたのであった。
「三四郎はまだ小さいので、胸とか肩とかの筋肉や骨格が成長過程にあります。なので、ハーネスでおさえてしまわない方がいいでしょう。いずれ、安定したら、ハーネスに切り替えればいいということです。首輪は首に影響が出るという意見もありますが、運動や動きをスムーズにするので、飼い主が上手に首輪を扱えればミニチュアダックスフンドの赤ちゃんには首輪の方がいいと思います」
とのことだった。
うちには、ハーネスも首輪も両方あるので、日によって使い分けているのだけど、やはり首輪の方がスタスタと歩いてくれる。これは犬にもよるのだろうけど、三四郎の場合は圧倒的に首輪じゃないとスタスタいかない。これはジュリアの言う通り、胴長短足のミニチュアダックスフンドの場合だけかもしれないので、他のわんちゃんには当てはまらないのであろう。でも、本当に、よく歩いてくれるようになった。
ジュリアのところでは、三日間、毎日、森を歩き回ったということで、戻って来た時、筋肉が引き締まり、ちょっと精悍になっていた三四郎であった。それと同時に、三日間の合宿のあいだ、ほかの犬との共同生活は慣れないこともあったのかな、と思った。もしかしたら、精神的にちょっと気疲れしたのだろうか。その時、どの犬と一緒かによって、それは人間と一緒であろう、三四郎への影響もかわってくるのである。
昨夜、仕事がひと段落ついたので、ぼくは22時くらいから長時間、三四郎と散歩に出た。ジュリアの犬訓練会に参加するようになって、本当によく歩くようになってくれた。他の犬たちとの共同生活を通して社会性も出来つつあり、道ですれ違う犬たちともいい交流が出来るようになった。ジュリアに懐いているので、うちに戻ったら、しら~っとされるかな、と思っていたが、家は家で安心するみたいで、自分のひじ掛け長椅子の上で寝そべって安心しきって昼寝をしている。生まれて七か月、ぼくの家で生きるようになって4か月が経った。順調に成犬への道を歩んでいると思う。人間と同じように、この子がどういう気性、性格、犬格を持っているのかも分かって来た。頑固だけど、寂しがり屋で甘えん坊、人懐っこく、弁えた、悪戯好きだけれど、ちょっと知性を感じる子犬であることも分かって来た。こんなに子供なのか、と思う瞬間もあるけれど、こんなに洞察しているのか、と思える時もある。人間と一緒なのだ。ただ、子犬から貰えるこの安らぎは喧しい人間界にあって、貴重なものだと思う。人間の親友である犬との生活、ぼくにとっては大きな意味がある。
つづく。
今日も日記、読んでくださり、ありがとう。
実は、三四郎はまだ寝ています。けっこう、彼は早寝遅起きなのです。その点、助かっています。彼が寝ている間に、大事な用事はすませている父ちゃんなのでした。たくさん、遊んであげられるように、ね。あはは。
ということで、お知らせです。
ビルボード・コンサートのチケット販売が、6月13日に迫ってきました。
また、父ちゃんのオンライン・文章教室は6月26日の日曜日です。
文章を書くのがお好きな皆さん、今回で前期エッセイ教室は最終回になりますので、お見逃しなく。これまでのダイジェストのような内容にくわえ、どうやって書いていくといいエッセイが書けるかについても、講義をしたいと思います。
詳しくは、下の地球カレッジのバナーをクリックください。