JINSEI STORIES
退屈日記「三四郎を今日から三日間ジュリアの家に預けるの巻」 Posted on 2022/06/02 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、息子の大学受験の結果が出る日の朝になった。
廊下で息子とすれ違ったので、
「いよいよ、今日だな。緊張するなァ」
と言葉を投げつけると、不機嫌な顔で、
「べつに」
と言われた。とげとげしい・・・・。仕方がない。
「どうやって、各大学から合否の結果が届けられるの? 今日はきっと朝から、一日、気がかりだね」
「いや、19時に、全国の大学生にむけて一斉に報告が入る。送られてきたサイトを覗き、自分で探さないとならない」
「一斉に? 19時? サイトダウンするんじゃないの?」
息子が行こうとするので、
「パパ、その時、家にいないわ」
と投げつけた。
「OK」
「今日から三日間、三四郎をドッグトレーナーの家に預けるので、郊外のジュリアの家まで行ってくる。結果、分かったら教えてくれ」
「OK」
今、分かってることは、この夏、ぼくは一月以上、日本に行かないとならない。
しかも、今、別の大事な仕事も舞い込みそうで、日本滞在そのものが伸びる可能性もある。息子は3週間程度の日本滞在で、その後、パリに戻って、彼は彼の夏を満喫する予定になっている。
出来る限り三四郎の面倒はみると言っていたが、前回、Tシャツを噛み千切られた件があり・・・、「パパ、ぼくひとりでここでずっと三四郎の面倒は無理」と言われてしまった。
端から期待をしていなかったので、そうなると、7月頭から、ぼくのライブが終わる、8月中旬まで、ひと月半はジュリアに預けないとならないことになる。長いなァ。
長期間の合宿に慣れさせるために、ひとまず今日から三日間、ジュリアの家で寝泊りを経験させる。とりあえず、3日間だ。なので、今日、ぼくは19時前に家を出る・・・・。
ということで、息子の試験結果が出る時、ぼくは家にいない。
きっと、合格したら、真っ先に息子からSMSで連絡が来るだろう、そうじゃない場合は、・・・来ないだろう。
ううう、けっこう、大変な一日ではないか・・・。
大事な瞬間、うるさいおやじが家にいないことは息子にも、ちょうどいい。
息子から連絡がない場合、ジュリアに三四郎を預けたら、ぼくは家には戻らず、近くのカフェで、ピエールなんかを呼び出して、呑んでようかな、と思った。
芥川賞の受賞結果待ちの時は、事務所で編集者さんらと飲みながら待ったっけ。満月の夜だった。今日はどんな月がどっちに出ていることだろう・・・。
さて、いったい、どうなることやら。
父ちゃんのドキドキはとまらない。
つづく。
ということで、今日も、読んでくれてありがとう。
明日の日記はたぶん、おやすみになると思います。笑。冗談だけれど、料理教室とかになるかもしれませんねェ。それはそれで、お楽しみに・・・。てへへ。
さて、お知らせです。
マガジンハウスから出るエッセイ集「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」が予約を開始した模様です。マガジンハウスの担当者さんから、連絡がありました。
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さて、そして、高齢の、・・・
6月26日、前期最終回のエッセイ教室・まとめおさらい編が開催されますよ。
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