某月某日、田舎に三四郎と滞在中である。快晴で気持ちがいい朝である。
仕事をうんと抱えてきているので、ここで集中して作品をしあげる予定だ。
それとどうしても田舎で試したいことがあった。
辻家に出没するオーヴが、三四郎の身体や三四郎自体から出ている霊体かどうか、を検証したかったのだ。
息子にはオーブのことをまだ話してないので、彼が灯りを消し、ドアを閉めて、寝てくれるのを待たないとならなかった。
１２時半過ぎ、十斗の部屋の灯りが消えたので、ぼくは監視カメラをいつもの肘掛け椅子の方角へとむけた。（オーブは部屋全体に出没するのだけど、肘掛け椅子がある方が大きさが比較できるのでその地点でスクショしている。観察地点の固定化）
まず、土曜日にエリックによって徹底的な拭き掃除をやってもらったうえに、今朝パリを離れる前に三四郎の部屋（玄関）に掃除機をかけておいた。
さらに湿度計で室内の湿度を調べておいた。（湿度無し）
また空気の対流をなくすために、全ての部屋の窓（二重窓）を完全に閉め、ボレーもおろしてきた。
こうすることでオーブ埃説、オーブ湿度説を払拭するためである。（空気が流れてないので、オーブが自力で浮遊していることになる）
この条件で、オーブが飛ばなければ、三四郎の身体に付着していた埃が監視カメラで捉えられたということを示すことになり、その段階で、オーブ説は消える。ぼくは変な期待に胸をふくらませながら、監視カメラを起動させたのであった。
すると、二分後・・・。

不意に、オーブが出現し、（それは出ろと心の中で命じた次の瞬間）玉ゆら行動をとったのであった。
「あああ、いた。しっかりいるじゃん」
ぼくは、ぞぞぞ、としたのだ。（心のどこかに三四郎の体毛説が残っていた）
かなり強い存在感のオーブだった。
存在感を誇示するような、まるで生き物のような意思を持って浮遊しているような動きである。
三四郎がいないからであろう、いわゆる埃とか虫のようなものの飛行が逆に認められなかった。
オーブしか、その部屋にはいない、ということである。ぞぞぞ。
その後、２分間隔くらいでオーブが出現をし、ぼくはスクショに成功をした。
速度はまちまちで早いものもあれば、ゆっくりのものもある。撮影に成功したのはすべてゆっくりと移動するオーブであった。
つまり、一つの結論が出た。
このオーブは三四郎が連れてきた霊体ではなく、この場所にもともといるものなのだ、ということ。
三四郎は今、ぼくの寝室の横の玄関で寝ているので、田舎の監視カメラに切り替えたが、オーブの出現は３０分以内では確認できなかった。
つまり、つまりである。オーブは三四郎由来ではない、ということ。パリの家の玄関に生息する霊体であるということが、分かったのだった。

この観察は明日以降も続ける予定である。
また、パリに戻ったら、監視カメラをサロンや食堂、或いは仕事部屋でも稼働させて、家全体で観測が出来るかを検証する必要があるな、と思った。
もしかすると、オーブはこの建物に住み着いている何者かということも考えられるからである。
父ちゃん研究員のあくなきオーブ研究は続く。
今日は大きな成果があったので、緊急報告であった。

つづく。

今日も読んでくださって、ありがとう。
これから三四郎と海に出かけ、走りこんできます。
それからずっと部屋にこもって、三田文学の原稿と向き合います。締め切りが今日なんですが、どうなることでしょう。
さて、ここでお知らせ！

辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ
Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
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