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滞仏日記「マクロン大統領が再選を果たしたフランスと欧州はこれからどこへ行く」 Posted on 2022/04/25 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、ドイツのメルケル首相が去り、英国はEUを抜け、ロシアがウクライナへ侵攻をした今、「第三次世界大戦」という恐怖絵を踏まないよう、NATOとロシアは微妙な綱引きを続けている。
そのような欧州において、牽引役としてのフランスの役割は大きい。
そして、今日、フランスは大統領決選投票日を迎えた。
プーチン大統領とも親しい極右政党のマリー・ルペン候補と中道右派の現職、マクロン大統領の一騎打ちとなった。
投票を棄権した人が全国民の28%にものぼり、1969年以来の低投票率の中、20時の投票締め切りとほぼ同時に、58%の支持率(前回は66%)でマクロン大統領の当確が決まった。
極右政党のマリー・ルペン氏が42%を超える票を集めたのも驚きの一つだった。
元々、フランスは左派が強い国だが、マクロン氏も中道とはいえ右派なので、世界的右傾化はここフランスにも押し寄せている。
とはいえ、第一回投票では左派のメランション候補が若者を中心に20%を獲得しているので5年後のことは分からない。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻で揺れる今のNATOにとって、マクロン氏の再選はとりあえずの安心材料となった。
未来のことは分からないが、フランスの国民は辛うじて、欧州の連帯を選択し、現状の自由主義を死守した形になる。
欧州は一枚岩に見えるけれど、このように内部では、複雑な対立(分断)が広がっている。EUやNATOも今後どうなるのか、誰にも予測はできない。
フランス国民の中でくすぶるマクロン大統領への不満や嫌悪が増している状況の中、欧州全体を引率しなくてはならないので、彼にとって、かなりハードな5年になることだろう。
ジレジョーヌはいっそう攻撃的になるだろうし、年金問題やエネルギー問題、テロとの戦いも再び始まるかもしれないし、難しいかじ取りを迫られることは間違いない。
マクロン大統領が次の5年間で、どのような欧州をイメージしていくのか、或いはフランスをどうイメージしていくのか、これによって戦争の行方も変わって来るだろう。
さしあたって、再選が決まったので、緩めていたコロナ規制などが再び厳しくなるかもしれない。
日仏は1万キロの距離を超えて、もう少し、連帯を強めてもいいような気がするのだけれど、政治的にはやや遠い国という印象がつきまとう。(文化的には長い歴史があるにもかかわらず・・・)
ロシアのような独裁国家がこれから世界の平和を次々に脅かしていくことが予想される今、ロシアがしかけた戦争が一定の成果を出したりすると、追随する国が出てきて、日本は地政学的にいっそう不利、不安定、物騒になっていく。
歴史t系にも政治的駆け引きに長けたフランスとの連帯はこのような不安定な世界において、ぼくは大事なことだと思うのだけれど・・・。
ともかく、フランスと日本の新しい政治的連帯を希望する。
つづく。