某月某日、ちょっと三四郎のことでバタバタしていたので気づかなかったことがある。
去年、つかみ合い、言い合いまでした息子君ではあったが、気づけば最近、とっても穏やかな青年に成長しているではないか。
（朝は、低血圧だからむっつりだが、笑）
それはいつ頃からだろう、と振り返ってみたら、やはり18歳、成人を迎えてから、彼はもろもろ自覚が出来たのか、今まで以上に大人になっていったように思える。
小さい頃のように、再び話しかけてくることが増えてきた。
優しい顔つきになっている。恋人はいないみたいだけど、友だちには男女とも恵まれていて、安定した青春期を過ごしているように見え、父親としてはホっとしている。
昔は、かっちーん、と思うことが多かったけれど、笑、思えば最近、かっちーん、がない。あはは。
それはちょっと寂しいけれど、成長というものはそういうものであろう。
その分、三四郎に「かっちーん」している。
でも、犬はずるい、怒るとうなだれ、視線をそらし、反省のポーズをとるのだけど、・・・、その一時間後にはまた同じ個所を齧って破壊しているのだから、あはは。

最近、息子と二人旅をしたころの写真を良く眺める。
本当に世界中、旅をしたので、いい思い出がたくさんある。
彼はいやいや同行していたとは思うけど、最近、「あんな遠いところによく行ったね」とか「あの国のあれがまた食べたいな」と言うことが多くなった。
息子の記憶の中に、無理やり連れまわされた子供の頃の記憶がちゃんと残っているのだな、と思うとちょっと嬉しいのであーる。
二人で暮らすようになった頃、最初に父子旅をしたのはストラスブールだった。
あの頃の息子は寂しさからかもしれないが、とにかく饒舌だった。
今は無口だが、子供の頃はよーく喋る子だった。あの頃が懐かしい。
ころころと太っていた息子も今はすらっと背が高く、痩せていて、いい男になった。
冗談で、BTSの誰かさんみたいだね、と言うと、苦笑いを浮かべている。
彼は自分の中にある日本を最大限活用しているように思う。
大学に提出するモチベーションレターにも、自分が日本人であり、将来は日仏をつなぐ仕事をしたいと明記したようだ。
日本人なのに、フランスで生まれ、両方の文化を自分なりに融合させ、新しい創造性を生み出したい、と最近は力説している。
彼の仲良し4人組もみんな日本が好きなので、そういう意味では日本人であることは彼の誇りでもあり、強みでもある。
日本語を捨てさせないように、家の中では100％日本語で通してきたことも、彼にはプラスだったと思う。

昨夜は、麻婆豆腐を作って、一緒に食べた。
息子との距離というのか、テーブルを挟んでこうやって二人で食事をするのも、来年で10年になると思うと、凄いことだ。
でも、彼はこの9月から一人暮らしをしてもらう予定なので、（あくまでも予定で、何処の大学に行くかで、もしかすると暫く引っ越せない可能性もある）、そのことはすでに通達済みだから、ぼくとしては、最後の父子時間を大切にしたいと心掛けている。
息子は、父ちゃんの麻婆豆腐が好きで、なんでもよく食べてはくれるけど、大きくなった息子の身体が立派なのは、やっぱり、栄養のあるものをこうやって毎日、作り続けてきたことの結果だと思う。
「将来、楽しみやね」
「あはは」
なんとなく、笑顔がこぼれる辻家の食卓。
いろいろとあったけど、いよいよ、あと一週間で最初の大学受験となる。
どこかに滑り込んでもらえたら、ぼく的には嬉しい。
入学よりも、こちらは卒業する方が圧倒的に難しいので、大学は人生の始まりに過ぎない。ま、彼なりにうまく生きていくのじゃないかな、とは信じている。
彼の友人のウイリアムは、日本人と結婚するのが夢だそうで、大学の途中から日本に渡るのだという。
「ウイリアムは、日本に幻想を持ちすぎている。漫画の読み過ぎなんだ」
「なるほど」
「パパ、異国で生きるのはそう簡単なことじゃない。現実に打ちのめされるウイリアムがぼくには見える。しかし、そこからはじめて、外国で生きるということがスタートするんだよ」
へーと思った。
まさに、ぼくはその繰り返しであった。

つづく。

ということで、今日も日記を読んでくださって、ありがとう。
まずは、NHK「冬ごはん」の再放送が決まりました。
NHKBSプレミアム　「ボンジュール！辻仁成の冬のパリごはん」
【再放送日時】　2022/４/１９ （火） １４:４４～１５:４３


それから、父ちゃんのライブなのですが、・・・まだ、結論は出ておりませんが、日程はここしか、ぼくが出来ないので、これでフィックスという感じになりそうです。
8月8日がどうやら、関西のどこか、らしいという情報。
8月12日が関東のどこか・・・。
さあ、サンクリの中原さんからの連絡を待ちつつ、皆さま、かっるーく、日程確保、お願いいたします・・・。