JINSEI STORIES

滞仏日記「犬を育てる責任感によって、犬に会う前にすでに打ちのめされた父ちゃん」 Posted on 2022/01/07   

某月某日、ロボット掃除機の最新版「ルンバ」を買ってしまった。
というのは子犬が我が家に来てからだと何かと間に合わないのと、今、頼んでいるお手伝いさんの中島君は週一なので、わんちゃんが来たら、それどころじゃなくなるのは間違いなく、知人が、犬にも対応するという最新型のルンバを買えば、と教えてくれたのである。は?

暇だったので、隣町の電気屋さんまで行ったら、たまたま、犬を飼っているという店員さんにあたってしまい、このルンバがいい、と紹介されたのだ。
こういうご縁にも素直に従ってしまう、父ちゃんなのであーる。
ちょっと高かったけど、我が町でご老人の皆さんに引っ張りだこの中島君は週一以上は無理ということで、可能なのは土曜日だけだから、土曜日はぼくも用事があることが多く、今はだいたい月二回という頻度で掃除をやってもらっている。
しかし、わんちゃんが来たら、その頻度では間に合わない・・・。

滞仏日記「犬を育てる責任感によって、犬に会う前にすでに打ちのめされた父ちゃん」



それで、ギターを買おうと思って貯金していたお金でルンバを買った。(まだ日本では発売されてない、最新機種らしい)
お金を払う前に、こっそりネットでルンバのことを調べたら、ちょっと前の記事に、≪犬の糞をルンバが家中まき散らす≫
というのがあった。想像をしてみた。なるほど、それはありえるな、と・・・。
その問題点を店員さんに指摘すると、
「ははーん。それがムッシュ、この最新版は、犬の糞を回避する機能が付いているんですよ」
と得意げに言うのであーる。
「しかも、今までよく問題になっていた、電源コードを巻き込まないようにする機能もついているんです。しかも、もちろん、犬の抜け毛も吸い取ってくれます」
「なるほど。いろいろと問題があったけど、最新版は大丈夫なんですね」
「はい、私を信じてください」
「・・・・」
まだ、犬を飼うことになるかどうかは分からなかったけれど、年配のマダム店員さんの説得力を信用してしまい、どっちにしても、必要だから、購入することにした。←、したんだ・・・・。なんで?

ところがである・・・。

滞仏日記「犬を育てる責任感によって、犬に会う前にすでに打ちのめされた父ちゃん」



家に戻って、るんるんする気持ちを必死でおさえながら、お風呂に入り、携帯で、自分のツイートの返信などを読んでいたら、9割くらいの皆さんは
「ご縁があるといいですね」
「ミニチュアダックスフンド、可愛いですよね」
という意見だったが、1割の方が
「辻さん、よーく考えてください。犬を育てるのは想像しているより、うんと大変だし、その犬が可愛いうちはいいですけど、老犬になったら、病院にもいかないとならないし、ミニチュアダックスフンド、階段を登らせると、胴が内がですから、ヘルニアになることが多いんです」
などと忠告されている・・・。
うち、パリの家も田舎の家もエレベーターがないのだ。←やばいす。
そうなると、ぼくがワンちゃんを抱えて上り下りをしないとならない。
今はまだ元気なぼくだが、いつ登れなくなるか、わからない・・・。
「辻さん、朝と夕方と毎日、30分は散歩をしないとなりませんが、出来ますか?」
という意見もあり、そもそも、ぼくは引きこもり人間な上に、不眠症だから、ここのところ起きるのは昼前、一日二回の散歩は難しいかな、と思ったら、ぐぐぐぐぐ、ぐんと暗くなってしまった。
「辻さん、犬だって、毎日、歯磨きもさせないとならなし、子供と一緒で病気にもなるし、しかも、ミニチュアダックスフンドは元々猟犬だから、吠えますよ」
かもめが田舎のアパルトマンの天井、歩くだけで、仕事が集中できない日のことを思い出し、これはもう、無理かもしれんね、とどん底に落ち込み、お風呂から上がると、壁にそっと置かれていた「ルンバ」の箱が目に留まってしまった、素っ裸の父ちゃんなのであった。は?
「ああ、買っちゃったじゃん。ダメじゃん、ひとなりったら・・・」

滞仏日記「犬を育てる責任感によって、犬に会う前にすでに打ちのめされた父ちゃん」



「辻さんは、日本との行き来が多いですけど、家を離れると子犬は心が不安定になるんですけど、仕事とか減らせますか?」
みたいな、現実的なご意見もあり、考えてなかった自分の甘さは、バットで後頭部を、バコン、と叩かれるような感じがした。ばっこーーーん。
ルンバの前でへたり込み、
「君は、犬の糞をどうやって回避するんだね?」
と問いかけてしまった、精神不安な父ちゃんなのであった。
というのは、心のどこかで10%くらい、育てる自信を喪失し始めているのであーる。10%です!
というか、飼いたいけど、犬が大好きだし、きっとうちに来たら大事にするのだろうけれど、皆さんの貴重な意見に、胸を張って、
「ぜんぜん、大丈夫ですよ。ご安心ください」
と言えない自分がいるのも事実で、そんな自分で本当に大丈夫なのか、と自問をしたら、思わず、素っ裸の状態で頭を抱えてしまった。
それで、慌てて、ダックスフンドのことをネットで調べてみたら、このようなことが書かれてあった。
「ミニチュアダックスフンドは初心者でも比較的飼いやすい犬です。中世から人間と寄り添って生きてきた犬で、世界中の歴史的文献にも登場します。狩猟犬なので、確かに吠えることは多い犬ですが、躾けのプロに頼めばこの問題は解消されます。とくに、ロングヘアのダックスフンドはどちらかというと穏やかな性格をしています。(ぼくが明日会う子は、ロングヘアー、長髪君だった)要は躾けなのです。最大寿命は20歳くらいです」
この方は、ブリーダーの方であった。
どちらにしても、明日はキャンセルするつもりはないし、人間であろうと、動物であろうと、会わないと分からない。
会ったら飼うことになりますよ、というフォロワーさんの意見もあったけれど、そこは、しっかりと判断をしてから、決めることにしたい。
「でも、辻さん、一番きついのは、その子との死別です。愛犬の死はきついですよ」
これは、想像が出来るし、想像したくないことだけど、そんな先のことを今から考えることもできない。
やれやれ。
ぼくはどうしたらいいのだろう・・・
ともかく、会ってみなきゃわからない。
電話で話したかぎり、ブリーダーさんは信頼できそうな厳しい人だったから、ぼくのような人間には譲ってくれない可能性もある。
どっちに転んでも縁でしかない。
多分、厳しい意見をおっしゃってくれた皆さんは、ぼくのことを心配してくださっている経験者の方々だろうから、そのアドバイスを肝に銘じ、・・・明日は、車を走らせることにする。
さ、今日こそは、早く寝ることにしよう。

つづく。

滞仏日記「犬を育てる責任感によって、犬に会う前にすでに打ちのめされた父ちゃん」

※ 今夜は、鯖塩焼きとマグロのタタキ定食を作りました。

そして、迷える父ちゃんからのお知らせです。

ムーケ・夕城(トリュフ栽培士)×辻仁成「ブラックダイヤモンド、黒トリュフの魅力」辻仁成がトリュフの聖地ドルドーニュにて、トリュフ狩りに初挑戦
2022年1月16日(日)20:00開演(19:30開場)日本時間・90分を予定のツアーとなります。
【48時間のアーカイブ付き】
※アーカイブ視聴URLは、終了後(翌日を予定)、お申込みの皆様へメールにてお送りします。

この講座に参加されたいみなさまはこちらから、どうぞ

チケットのご購入はこちらから

※ フランス南西部に位置するドルドーニュ地方の山奥に位置するトリュフ園からトリュフの魅力を御覧頂く予定の生配信を準備しておりますが、天候など様々な理由で一部変更になる可能性もあります。山奥にある、4ヘクタールのトリュフ園からですので、電波が乱れる可能性もございます。最大限の状況を模索しながら、当日、トリュフ犬と栽培士さんらと力を合わせ、挑む形になります。嵐にならない限りは決行いたします。

 



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