JINSEI STORIES
真夜中日記「パリが寒くて、父ちゃんレシピで作ったバターナッツ・スープで温まる!」 Posted on 2021/11/13 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、今日、田舎からパリに戻ってきたら、保険のびっくりするような請求書が届いていて、思わず目をつぶってしまった。
フランスは社会保障制度がしっかりしている分、支払う額が大きい。その代わり、癌にかかったら、病院に行くタクシー代も全部国が負担をしてくれる。
帯に長しタスキに短し、である。
お金をどう工面するかなぁ、と悩んでいたら、ピンポンと呼び鈴が鳴ったので出ると郵便配達さんだった。
「25ユーロの税関がかかりますが」
「え? 誰から?」
「ダンチューさんからです」
あ、新刊のスープ本だ、と思ったのだけど、自分が書いた本の見本を受け取るのに、25ユーロ(3000円)も払うのはバカらしくないだろうか?
と悩んでいると配達人さんが、どうしました? 受け取らないの? とイライラ・・・。
「それ、自分の本なのに、税金払わなきゃだめなの?」
「知りませんよ。国の法律なんだから」
前にも言ったけど、フランスの消費税は20%くらい、とにかく高い。
でも、そのおかげで、年金とか、様々な恩恵を被っているわけだから、ぼくは仕方ないかな、と思っている。
最近、郵便物にもがんがん関税が付くという話しを聞くけど、コロナで減っている国庫をこういうお金で補填したいのかもしれない。
「OK,払います」
ということで、自分の新刊「パリの食べるスープ」と、やっとご対面となった。
おおおお、
さっそく、ダンチューの植野編集長にラインで写真を送った。
「いい本ですね」
「ありがとうございます。ぼくの知人が本を購入しまして、感動して、毎週金曜日はスープの日にしたそうです」
「金曜日ですか」
「はい、毎週金曜は汁金デー」
「ほー」
「それから住吉書店さんで、好調です」
へー、ローカルな話しだが、嬉しい。
編集長から元住吉店の写真が送られてきた。
おおおおお、
ということで、ペラペラとパリ・スープの本を捲っていたら、バターナッツのスープのページが出た。
これが、超美味いのである。
最近、日本でも売っているバターナッツ。
ぼくはもともとあまりかぼちゃのスープが得意ではなかったが、フランスでバターナッツ・スープと出会って、大感動をしたのがきっかけで、これ系のポタージュにハマった。
冬のはじまりだし、パリは寒いので、父ちゃんのスープを作ろうと思い立った。
それで近所の八百屋にバターナッツを買いに行ったのだ。
ま、ポタージュなんだけど、ママの味というか、フランス人のママはぼくにはいないけど、博多のおっかさんもそういえばかぼちゃのポタージュが得意だったっけ。
ココットの中のバターナッツをバーブレンダーでピュレにする過程がこれまた楽しい、冬のひと時なのである。
昼ごはんがわりに、食べたが、温まるし、心が落ち着く。
これがスープの素晴らしいところなのである。
田舎で買ったパンがまだ硬くなっていなかったので、トースターで焼いて、スープの中に、クルトンみたいにどんどん、投下して、スープと絡めながら食べたのだけど、まいうーーー。
もちろん、残りは息子にとっておく。
学校から戻ってきた、腹ペコの息子はきっと大喜びするに違いない。
受験生の心と身体に優しいバターナッツのスープ、もしくは、世界中の美味しいスープを作って、家族で温まってもらいたい。父ちゃんからのささやかな願いである。
ところで、本の帯には「愛情料理研究家の辻仁成」と謳われている。作家でも、ミュージシャンでもない。
ま、固いことは言わない。ある時は小説家、またある時はミュージシャン、またある時は映画監督、またある時はシングルファザー、またある時は愛情料理研究家、しかしてその実態は辻仁成、なのであーる。えへへ。
ともかく、この寒い冬を優しく温めてくる世界のスープ、26皿!
ぜひ、キッチンの傍らに置いて、眺めてもらいたい。
父ちゃんレシピの温かいスープで、元気になってくださいませ。
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