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退屈日記「ぼくの周りのパリジェンヌたちが求める男たちに共通するものとは?」 Posted on 2021/11/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、世界中の女子が憧れる自由奔放なイメージのパリジェンヌ、男性たちを従え、男たちを振り回しているようなイメージもあるけれど、しかしぼくが知る限り、こと、ぼくの周りにいるパリジェンヌたちの実際はちょっと違っている。
普段はキャリアがあり弾けているのだけど、その実、強い男にはメロメロな人が、少なくとも、ぼくの周りには多い・・・。
実は、意外にも、(もちろん、そうじゃない人もいるけれど)男に尽くすタイプ派が主流なのである。
女性月刊誌のカッコいいイメージのパリジェンヌなんて、残念ながら会ったことがない。
ぼくのママ友たちはだいたいみんな男に尽くすタイプのパリジェンヌばかりである。

退屈日記「ぼくの周りのパリジェンヌたちが求める男たちに共通するものとは?」



パリ中心部で生まれ育った生粋のパリジェンヌ、アレクサンドラはいつも夫、ミカエルの自慢ばかりしている。
「私のジョージクルーニーがね、今日、こんなことを言ったのよ」と会う度に夫自慢をするので、ご主人に会うのを愉しみにしていたら、ぜんぜん、どこがジョージクルーニーなんだよ、というイケてない男が現れ、ぼくを仰天させた。
人の粗探しばかり、ミーハーで、くだらない冗談ばかりを言っている。
愛は盲目というけれど、万国共通かもしれない。
しかもミカエルはぼくに言わせるとどうしようもなくダメ夫。
俺についてこいという割には、仕事もろくにしないで浮気ばかり、その上、プライドが高すぎて、何事も、続かない。
一番たちが悪いのは、フランスにやってきたのに、フランス人の悪口ばかり言っている。
もちろん、優しいのだけど、家業をついでホテルの社長をやっているアレクサンドラの庇護のもと、なんとなく言い方は悪いが、ヒモ状態なのだ。
なのに立場なんかわきまえず威張りくさっているのだから、たちが悪い。
仕事をバリバリとこなすアレクサンドラだが、ミカエルの前では驚くくらいに従順な女になってしまう。
このタイプのエネルギッシュなパリジェンヌが実はぼくの周囲にはものすごく多い。知性と教養があり、家柄もいい、キャリアもある。
でも、旦那に尽くす。
意外なのだけど、そこには理由がある。

退屈日記「ぼくの周りのパリジェンヌたちが求める男たちに共通するものとは?」



そういえば、ぼくの周りのパリジェンヌたちには南米系の夫も多い。
クリステルの夫はペルー人だが、彼も「俺についてこい」タイプ。
ペルーレストランを経営しているが、実際にレストランの経営をしているのはクリステルだ。
なぜか妻が仕事をして家を支えているカップルが多い。
クリステルはシテ島の裕福な家に生まれた生粋のパリジェンヌで、ペルー人夫に尽くしている。
きっと理由はこうだ。
フランスでは、男が女性をサポートするのが当たり前だったりする。
ドアをあけるのは男性、ワインを注ぐのも男性と決まっている。
育ちのいいパリジャンたちは優しく大人しくあまり自分を出さない。
なんでか、パリジェンヌはそこが不満なのである。
その反動で、野性的な南米の男や、ミカエルのような俺についてこい男が受ける。(あ、ミカエルはギリシャ人だった)。
メキシコ人やチリ人、ブラジル人とパワフルで脂ぎっていて、どこかエキゾチックな男たちが人気なのだ。

日本の男の場合、どうしても自分の身分とか容姿とか金銭事情とか気にしてしまう。「高嶺の花」などと呼んで、憧れた女性に声さえかけられない男子もいる。
フランスにいる異邦人のオスたちは違う。容姿や身分やお金がなかろうと、「俺についてこい」と叫んで、ブイブイ言わせているし、実はそういう向こう見ずな男性にパリジェンヌは好奇心をくすぐられているのも、一部で、事実だろう。
どこか頼りない感じのパリジャンに飽きているのは確かだ。
パリジャンとパリジェンヌのカップルより、パリジェンヌとアフリカ系、アラブ系、南米系のカップルが増えている。
逆にパリジャンはアジア系の女性と付き合っている人が多い。
男と女の関係というのは一言で言い尽くせないので、あくまでもぼくの周囲の話しだけれど…。
それにしてもイメージと違って尽くすパリジェンヌたち、それはそれで、実に微笑ましい。
「うちのジョージクルーニーがね」
と自慢するアレクサンドラは誰が何と言おうと幸せなのだから、ぼくは頷いている。 
パリジェンヌが求めるマッチョな男像、残念ながらぼくには微塵もないので、そこがぼくがフランスで一切もてない理由なのかもしれない。
あはは、・・・

つづく。

退屈日記「ぼくの周りのパリジェンヌたちが求める男たちに共通するものとは?」

追記

この写真は友人のリコ。彼は優しく力持ち、人の悪口や噂話はしない。だから、ここに出てくるダメ男とは一線を画しているが、とにかく、もてる。
若い女性たちが彼をほっとかない。本当です。20代、30代の女性たちに追いかけまわされているのだけど、その秘訣を彼の友人のユセフが教えてくれた。リコは、人の話しをきく、人が困っているとひたすら寄り添う。そして、いつも優しい笑顔だからだ、と・・・。今は大富豪の家の娘さんと付き合っている。こういうタイプにも、パリジェンヌは弱いのである。ぼくも学ばないと。えへへ。



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